ドラ1だったのに消えていったあの人は今? 地獄を味わった選手のセカンドキャリアを見るとわかること

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ダ・ヴィンチニュース

(元永知宏/河出書房新社)

投げて、打って、走って――。プロ野球選手のひとつひとつのプレーに、数え切れないほどのファンが一喜一憂する。スタンドで大歓声を送ったり、テレビやラジオの前で手に汗を握ったり。日本で最もメジャーなプロスポーツの野球は、表舞台がこうして華やかな分だけ、その裏には濃い影を落とすこともある。

 

「宝くじに当たったようなもの」とも揶揄されるように、プロ野球選手になれる人はほんの一握り。そこから活躍していく人もいれば先細るばかりの人もいる過酷な世界だ。各球団が“イチオシ”と決めて獲得したドラフト1位の選手たちも、成功は約束されたものではない。一番の期待を集めながら、ドロップアウトした選手のその後の人生とは…。

 

『敗者復活』(元永知宏/河出書房新社)は、サブタイトル「地獄をみたドラフト1位、第二の人生」のとおり、7人の波瀾に満ちた物語が綴られている。勘違いした、イップスを患った、ケガを克服できなかった、原因不明の不振に陥った…。何かしらプロで生き残る術を欠いたという人たちの経験は、どれも特別ながら他人事とは思えないほど身近に感じられることも少なくない。

 

ドラフト1位で1996年に読売ジャイアンツに入団した入来祐作は、2008年で現役を引退。2001年には最高勝率のタイトルを獲得し、北海道日本ハムファイターズ、アメリカのマイナーリーグ、横浜ベイスターズと複数球団で経験を積み重ねたピッチャーだが、「球団を去る時の自分の行いを振り返れば、決して褒められたものではなかった」という入来は、引退後に「野球の仕事をしたい」と言っても総スカン状態だったという。

 

働き場所を求めて古巣球団などにアピールし続けた結果、ようやくベイスターズの裏方に空きが出る。選手の練習のための投球をするバッティングピッチャーに空きが出たのだ。ドラ1のエリート投手がバッティングピッチャーになるのだ。「入来くん、本当にやるの?」と確認され、「絶対にキレないでね」「キレたらすぐにクビだよ」と念押しされて、職を得たという。

 

だが、その後イップスを患い、2011年からは何と二軍の用具係に。落差のある転身ぶりからテレビCMにもなったが、その献身性が広く知られ、2015年から福岡ソフトバンクホークスの3軍投手コーチに就任。こうして念願の指導者として、再スタートを切った。入来は、プロ野球で「活躍する人」、それを「支える人」の両サイドを経験したからこそ、チームの“かたち”を知り、一人ひとりの選手にとって不可欠な指導者へとキャリアアップを遂げている。

 

入来とは正反対とも言える道で再スタートを切ったのが、1985年にドラ1で近鉄バファローズに入団した桧山泰浩。6年間のプロ生活で一軍登板はゼロ。ガムシャラになり切れず、時に遊びほうけて、25歳で戦力外通告を受け、無職になったという。桧山は野球以外の世界に目を向けた。

 

桧山はその後、2年ほど知り合いの衣料品会社で働いて、社会勉強に勤しむと、自立の道を模索。いわゆる「食える資格」のなかでも、司法書士なら高卒でも取れると決断した。そこで司法書士事務所で働きながらゼロから受験勉強に勤しむと、2度目のチャレンジで合格。以来、20年以上、司法書士として今もキャリアを積み重ねている。

 

働きながらの受験勉強も苦ではなかったという。「野球に限らず、スポーツの厳しさからすれば、受験勉強の大変さはどうってことありません。(中略)やればやるだけ実力がつくんだから、受験勉強の苦労はありません」。勝敗やチーム事情など、様々な不確定要素によって運やポジションが左右される世界と比べれば、体力的にも精神的にもうんとラクなのかもしれない。

 

そんな桧山が問題視するのは、高校球児が勉強をしないこと。日本屈指の人気コンテンツでもある高校野球だが、甲子園に出場できるのは全国4000校のうち49校のみ。この大舞台での活躍はプロへの“切符”にも繫がるだけに、球児たちは貴重な学生時代を、昼夜問わず野球に没頭する。多くが野球以外の世界に行かなければならないにもかかわらずだ。そのため桧山は、球児たちが野球しか知らないことで、自分に自信を持てず、ますます野球に執着すると警鐘を鳴らす。

 

夢のような舞台でプレーする選手たちも、輝ける時間は限られている。だからこそ生まれる悲劇や現実の物語がある。同書で“復活”を遂げた人たちのストーリーは重みと可能性を示し、考えさせられることも多く、表舞台のストーリー以上に勇気づけられる。

 

文=松山ようこ

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