【中年名車図鑑|2代目 ダイハツ・ミラ】80年代の軽自動車市場にさまざまな刺激を与えた“羨望”の一台

車・交通

大貫直次郎

商用車の“軽ボンバン”が隆盛を誇っていた1980年代中盤の 軽自動車市場。ここにダイハツ工業は第2世代となるL70型系のミラを送り込む。1.3BOXと称する高効率のパッケージングを採用した新型は、ベーシックモデルのほかに高性能バージョンの「TR-XX」や多用途車の「ウォークスルーバン」を設定した。今回は豊富なラインアップで歴代屈指の人気を獲得した2代目(1985~1990年)の“羨望=MIRA”で一席。

 

 

【Vol.46 2代目 ダイハツ・ミラ】


国内販売で32カ月連続して前年同月実績を上回るなど、大成功作に昇華したL55型系の初代ミラ。イタリア語で“羨望”を意味する車名を冠した軽ボンネットバンは、1985年8月になると第2世代のL70型系に移行した。

 

 

■1.3BOXの新パッケージを採用した第2世代

 

2代目ミラの最大の特長は、1.3BOXと称する高効率のパッケージングにあった。プラットフォームは新設計で、ホイールベースは従来比で100mm延長(2250mm)。パワーユニットが収まるフロントセクションを可能な限りコンパクトにまとめ、同時にボディ高を高めに設定してクラストップレベルの広さを誇るキャビンスペースを創出する。懸架機構には前マクファーソンストラット/後セミトレーリングアームの4輪独立懸架を採用(FFモデル。4WDモデルは5リンク)。ボディタイプは当初が3ドアハッチバックのみの設定で、1986年1月に5ドアハッチバックを追加した。


搭載エンジンは吸排気効率の向上や圧縮比のアップ、機械損失の低減などを図った新開発のEB型547cc直列3気筒OHCユニットで、自然吸気(34ps)と空冷式インタークーラー付きターボ(52ps)の2機種を設定する。組み合わせるトランスミッションにはフロアタイプの4速MT/5速MTのほか、フロアおよびコラムタイプの2速ATを用意。駆動機構はFFと4WDの選択が可能だった。

 

クラス初の4面フルフラットシートやダブルハッチバックドアを装備。広くて快適な室内空間が話題に


エクステリアについては、1.3BOXスペーシィシェイプデザインと称する新スタイルを採用したことが訴求点。具体的には、フラッシュサーフェス化した直線基調のボディやスラントした短めのノーズ、ルーフ後端を伸ばしてほぼ直立させたリアセクション、四隅に配したタイヤ、広めにとったグラスエリアなどによって実用的かつスタイリッシュなフォルムを実現した。一方で内包するインテリアは、リビング感覚を謳う広くて快適な室内空間に、低めに設定して有効な前方視界と開放感を演出したインパネを配して、明るく運転のしやすい居住スペースを構築する。また、クラス初の装備として4面フルフラットシートやダブルハッチバックドア(ガラスハッチのみとゲート全体での開閉が可能)、助手席クッショントレイ付きシート、クォーターボックス、ラゲッジボード、テンションレデューサー付ELRシートベルト、グラフィックモニターなどを設定していた。

 

 

■イメージリーダーは最強版のターボTR-XX

 

スポーツバージョンの「TR-XX」。フルエアロの外観にスポーティなインテリアを組み合わせる

1985年10月になると、スポーツバージョンの「TR-XX」が追加される。搭載エンジンは空冷式インタークーラー付きターボ(グロス52ps。後にネットで50psとなる)で、外装は専用バンパーやサイドステップ、リアハッチスポイラーといったフルエアロパーツで武装。内装には専用の3本スポークステアリングやガングリップタイプのシフトレバー、大型の速度&回転メーターとグラフィックタイプのターボインジケーター、固めのクッションを持つバケットシートなどを装備した。


2代目ミラのイメージリーダーに位置づけられたTR-XXは、後にデビューする鈴木自動車工業のアルト・ワークスや三菱自動車工業のミニカ・ターボおよびダンガンZZ、富士重工業のスバル・レックス・コンビVXスーパーチャージャーなどとともに“軽自動車第2次パワー競争”(第1次は1960年代終盤から1970年代初頭)を展開していく。TR-XXに関しては、1987年8月にインタークーラーの水冷化やAT車の追加などを実施。同年10月には燃料供給装置をEFI化したEB25型エンジン(58ps)搭載車を設定する。また、同エンジンを積むフルタイム4WD仕様も追加した。さらに1988年10月になると、最高出力を64psとしたEB26型エンジン搭載車が登場。内外装もよりスタイリッシュに刷新された。

 

アルト・ワークスやミニカ・ターボ、スバル・レックス・コンビVXスーパーチャージャーなどとともに“軽自動車第2次パワー競争”を展開していく


毎年のように進化を図っていった2代目ミラのターボモデル。一方で、燃料供給装置にキャブレターを組み込んだターボ付きEBエンジン搭載車も継続して設定される。スペック上ではEFIを採用する58ps仕様や64ps仕様に劣った50ps仕様。しかし、アクセルレスポンスのよさや吹き上がりの俊敏さなどは、50ps仕様が上回った。当時のECU技術では、このあたりにまだまだ壁があったのだ。絶対的なパワーよりもスポーツミニらしい軽快な特性を重視する走り好きは、あえて50ps仕様を選択する。こうした傾向をメーカー側も把握していたのだろう。地道な人気を誇るキャブターボは、2代目のモデル末期まで新車カタログに掲載された。

 

 

■隠れた名車「ウォークスルーバン」


L70型系の2代目ミラにはもう1台、隠れた名車が存在した。フロントセクション以降をパネルバンボディに変更した「ウォークスルーバン」だ。運転席から荷室へと歩いて移動できるウォークスルーバンがミラに最初に設定されたのは初代(L55型)のモデル末期の1984年5月で、2代目でも引き続きウォークスルーバンがラインアップされる。製造は優れた車体製造技術を持つ荒川車体工業(1988年よりアラコに変更)が担当。最大の室内容積と軽量化を両立させるために、乗降用ドアは左側のみの折戸式で、リアゲートには上下開き式と3枚折戸式を用意した。乗車定員は1名乗りが基本で、助手席はオプションで用意する。また、フロントガラスおよびAピラーは直立に近い位置にまで立て、サイドミラーには通常のフェンダータイプのほかに縦長タイプを設定。荷台部にはプレスラインやサイドガラスなどを組み込んだ。


軽自動車の規格内で成立させた稀有なウォークスルーバンは、そのユニークなルックスや使い勝手の良さから、デリバリーなどの商用としてだけではなく、バイク等のトランスポーターとして個人ユーザーからも高い人気を獲得する。また、ラウンディッシュなフロントガラスおよびAピラーに、上ヒンジ式ウィングドアを荷台部に配した移動販売車の「ミチート」も設定され、市場から好評を博した。


ミラ・ウォークスルーバンの人気に刺激を受け、鈴木自動車工業はアルトに、三菱自動車工業はミニカに、ウォークスルーバンを設定する。しかし、ボディ全体の造り込みや機能性の面でミラにはかなわず、販売台数は伸び悩んだ。結果として、1990年の軽自動車規格改定以降でウォークスルーバンをラインアップしたのはミラだけとなり、そのミラも次の規格改定である1998年に生産を中止した。ここで人気が衰えるかに見えたミラ・ウォークスルーバン。だが、コアなファンがその唯一無二のキャラクターを見逃さなかった。ユーズドカー市場では21世紀に入っても活発な取引が展開され、660ccエンジン搭載車のみならず2代目の550ccエンジン搭載車も長く生き残ったのである。
 

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

大貫直次郎のプロフィール&記事一覧
ページトップ