最近のF1マシンはホイールベースがどんどん長くなっているらしい…なぜ?

車・交通

 

F1マシンのホイールベースがどの程度なのか想像したことがあるだろうか。と、問いかけるのだから正確な数値を知っておくべきだが、正確にはわからない(ので、謝っておきます)。


正確には分からないがおおよそはわかっていて、2017年型のF1は長いマシンで3700mm超である(とくにメルセデスAMGが長い)。短いマシンでも3500mmを超えている。どうです? 長くないですか?


前輪のホイールセンター(車軸の中心)と後輪のホイールセンターの間に全長3400mmの軽自動車を置いてもおつりがくる。調べてみたところ、トヨタ・ルーミー&タンク/ダイハツ・トールの一部グレードがちょうど全長3700mmであることがわかった(ホイールベースは2490mm)。タンクの全長とF1マシンのホイールベースが同じ長さ、と表現すれば、その長さがわかるだろうか。


そのF1のホイールベース、どんどん長くなる傾向だ。旋回性能を高めるにはホイールベースは短い方がいい。逆に、ホイールベースを長くすると直進安定性が高まる──というような話を聞いたことはないだろうか。サーキットには直線もあるがコーナーもある。究極の選択として、どちらを取るかといったらコーナーだ。コーナーを速く走ることによって、F1はスピードアップを図ってきた。それなのになぜ、ホイールベースは長くなる方向なのだろうか。


それには理由がある。今から10年ほど前のF1マシンのホイールベースは3200mm前後だった。今より500mmも短いが、それでも乗用車と比較すればずいぶん長い。例えば、メルセデス・ベンツS600ロングのホイールベースが3165mmで、10年前のF1と同等だ。全長は5255mmで、この数値も当時のF1に近い。


2010年はロングホイールベース化のひとつの転機となった。この年からレース中の給油が禁止され、燃料タンクを大きくする必要に迫られたからだ。2009年までの燃料タンク容量は140L前後だったが、2010年には230Lにする必要に迫られた。約305kmのレースを無給油で走り切るためである。乗用車用の燃料タンク(ルーミー&タンクは36L、メルセデス・ベンツS600ロングは80L)と比べると、とてつもなく大容量だ。


燃料タンクの大幅な容量増に対応するため、ホイールベースは長くする方向だった。ただし、しぶしぶ長くしたわけではなく、車両運動性能を向上させる観点からも、ホイールベースを長くしたい考えが支配的だった。

 

 

■超高速コーナリングには“長い方”が有利?

 

200km/h以上の高速コーナリング時には、ホイールベースは短いよりも長いほうが車体が安定する

F1は50km/hや60km/hで常にコーナリングしているわけではなく、200km/hや250km/hでコーナリングして競争している。そんな超高速でコーナリングしている際は、4G以上もの加速度が車体に掛かる。遠心力と言い換えてもいい。ものすごく大きな力で外に飛び出そうとする力が車体に働き、その強い力にあらがって路面に踏みとどまろうとするわけだ。外に飛ばされずに踏みとどまろうとする際、ホイールベースは短いより、長い方が安定するのだ。


揺れる電車の中では、足を大きく横に開いた方が体は安定する。それと似たような考え方だ。ホイールベースを長くしたのと引き換えに、市街地を走るモナコのような低速コースで不利になるのではという心配もあったが、実際のところ影響は軽微で、ロングホイールベース化のトレンドに待ったを掛けるほどではなかった。


2014年に規則が変わり、レース中の燃料使用量が100kg(2017年から105kg)になって燃料タンクが以前の大きさに戻ってからも、長いホイールベースは維持されたままだった。2016年の段階では、長いマシンは3500mm級まで成長した。


それが2017年には一気に200mm伸びたことになる。背景にあるのはやはり、レギュレーションの変更だ。最大1800mmだった車幅が最大2000mmになり、合わせて前後のタイヤもワイドになった。F1は前後のウイングよりもむしろフロアでダウンフォースを発生させているので、ワイド化によってフロアの面積が増えたことで、ダウンフォースの増加が予想された。タイヤのワイド化によってグリップも増える。


これらの結果、コーナリングスピードはさらに上がる。実際、各サーキットでは、前年に比べてラップタイムが2~3秒短縮された。これまでスピードを落とさなければクリアすることができなかったコーナーを全開でクリアできる箇所も現れた。旋回中の横Gは5Gを超えた。これまで以上に車体をしっかり支えなければならない。ならば、ホイールベースを長くしなければ、という論法だ。幅広になったトレッドに合わせてホイールベースを長くした側面もある。


F1では高速コーナーでの安定性を高めるため、ホイールベースを長くするのがトレンドだ。3700mmでそろそろ頭打ちか。それとも、まだ伸びるのだろうか。
 

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

世良耕太のプロフィール&記事一覧
ページトップ