え…そんな風にしてるの? ブラックボックス化していくオナニーの実態

ライフスタイル

三浦ゆえ

 

多くの人が日常的にしているのに表立って語られることがほとんどないのが、オナニーです。親しい友人でも自分のパートナーでも、いつどのようなオナニーをしているかは知りません。ある意味、セックス以上にひそやかな行為。それは「どんなふうにしても、人に迷惑をかけることはないもの」だとも思われているからかもしれません。

 

今冬、ネット上で「」が発表されました。男性用のオナニーグッズブランド・TENGAが新会社「TENGAヘルスケア」を設立し、インターネットによるアンケート調査を行ったのです。

 

 

■調査目的は男性の「膣内射精障害」を通した商品訴求

 

一読して「なんだ、女性についてはないんだ」とがっかりしました。TENGAにはirohaという女性をターゲットとしたブランドがあります。なのに男性のそれだけがフィーチャーされると、女性のオナニーの“日陰”感が強まるように感じます。

 

しかしそれは同調査の目的が、「オナニー=人に迷惑をかけない」が思いこみにすぎず、方法によっては自分もパートナーも困る事態になると警鐘を鳴らし、それは特に男性側に原因があることを明らかにするところにあるからでしょう。

 

「困った事態」とは、膣内射精障害です。オナニーでは射精できるけど、セックスで射精できない。泌尿器科医から、そんな男性の増加が指摘されています。それによって起きる弊害とは、まず妊娠させにくくなること。現代ではそれ以外に妊娠する方法もありますが、自然妊娠と比べると女性の負担が多く、コスト高です。そして、セックスで射精できないことがパートナーシップを築くうえでのつまずきとなることもあります。

 

原因は「床オナ」「脚ピン」など“不適切なオナニー”です。具体的には調査結果の解説を見ていただくとして、要は「女性の膣内とはかけ離れた刺激、強すぎる刺激を得ながらのオナニー」です。自分の腰と床とでペニスを押しつぶすことでしかイケないなら膣内では射精できませんし、セックスしながら脚をピンッと突っ張らせてイクのは至難のワザです。

 

 

■風を当てる、自分の口で…オナニースタイルに見る個性と趣き

 

筆者は2010年に発売された書籍『』(宋美玄著、ブックマン社)の制作に参加していますが、そのときに読んだ各種資料でも膣内射精障害は指摘されていました。オナニースタイルについての調査結果も複数見ましたが、どの結果にも少数派として「週刊誌や電話帳を破り、それで擦る」人たちがいました。「それでしかイケないのなら、膣内では無理だなぁ」と納得したものです。

 

今回の「オナニー国勢調査」では、そうした回答は見られませんでした。そもそも週刊誌を買う人が減ったからでしょうか。電話帳もついぞ見かけないものになりました。そう考えると不適切とはいえ、趣深いスタイルにも思えてきます。しかし今回の調査でも「風を当てる」「自分でフェラチオ」など趣ある回答が見られます。痛風は風が当たっても痛いといいますが、風が当たって勃起する人がいるとは。

 

「紙」の衰退といえば、同調査では紙メディアをオカズにする人が激減し、映像メディアを利用する人が約8割を占めることも明らかにしています。それ自体は何ら意外ではありませんが、その内容によってはやはり弊害が出るのではないでしょうか。

 

 

■AV視聴環境の進化につれブラックボックス化していくオナニー

 

かつて読んだ資料には、「実際のセックスとはかけ離れたオナニー」はスタイルに限った話ではなく、オカズについても同様だとする医師の見解もありました。つまりは極端な描写のある3次元映像だったり、強姦や痴漢など性犯罪にあたるものだったり、小児性暴力を思わせるものだったり。

 

性的に逸脱した映像を見ながらでないと「興奮しない」「イケない」のであれば、それは必ずや現実のセックスにマイナスの影響を及ぼすという指摘で、筆者も大いに賛同します。エロ本にも逸脱した内容はあったじゃないか!という意見もあるでしょうが、映像による説得力はその比ではありません。

 

そこで気になるのが本調査における「(マスターベーションについて)気軽に相談する相手はいる?」です。別に相談しなくても……と筆者も最初は思いました。

 

しかし、かつては「エロ本やAVを友人間で貸し借りする」文化がありました。ひどく逸脱した内容のものは、友だちの前で出せなかったはずです。それがどこまでストッパーになっていたかはわかりませんが、スマホでひとり鑑賞するよりは自身の逸脱具合を自覚できます。オナニーに関するコミュニケーションが、逸脱防止につながる可能性は高いでしょう。

 

どんなスタイルでしてもどんなオカズで抜いてもそれは個人の自由です。それでイケなくなるのも個人の勝手なら、子どもを作るも作らないも個人の選択です。けれどリスクに無自覚なまま身につけた習慣で、人生の選択肢が狭まるとしたら? オナニーはとてもプライベートな行為ですが、ブラックボックスに放り込んでしまわないほうがよさそうです。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

三浦ゆえ

フリー編集&ライター。富山県出身。複数の出版社に勤務し、2009年にフリーに転身。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行うほか、『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズをはじめ、『失職女子。~...

三浦ゆえのプロフィール&記事一覧
ページトップ