いつまで続く? 森田健作が生み出したアクアラインの通行料金800円と土日の大渋滞

車・交通

 

東京アクアラインの愛称で知られる東京湾横断道路・東京湾横断道路連絡道が開通して、今年で20年になる。自動車業界では、報道関係者向けの撮影会や試乗会を千葉県側の出入り口がある木更津市で行うことが多いので、筆者も2〜3か月に一度ぐらいの頻度で利用している。

 

ところでこのアクアラインの通行料金、普通自動車でETCを使用した場合は片道800円だが、現金やクレジットカードで支払うとこれが3090円に跳ね上がるのをご存知だろうか。

 

実は3090円が本来の料金で、800円は割引料金である。アクアラインが開通した直後はもっと高く4000円もした。ここまで高価なのは、建設費用を含めた設定となっているためだ。神奈川県川崎市側から向かうと途中まで海底トンネル、海ほたるパーキングエリアは人工島、そこからは海上橋と、建設費用が嵩んでいることは容易に想像できる。

 

しかしそこをクルマで走れば、約10分で通り抜ける。10分と言えば、通常の高速道路では隣のインターチェンジぐらい。料金は数百円だ。それが3000円というのは、特急料金として考えても高い。

 

多くの人がそう考えたのだろう。千葉県はアクアラインの建設を見越して、かずさアカデミアパークという研究開発拠点を開設し、誘致に努めたが、賛同する企業や団体はさほど現れず、第3セクターの運営企業は倒産してしまう。このかずさアカデミアパークこそ、新型車の撮影会や試乗会でひんぱんに使われている施設であり、当時筆者がアクアラインを通るのはほとんどここに行くためだった。

 

 

■森田健作の実行力が人の流れを変えた

 

そんな状況を払拭しようと立ち上がったのが、若き日に青春ドラマの主役として一世を風靡した俳優の森田健作氏だ。彼はアクアラインの料金値下げを公約に掲げて2009年の千葉県知事選挙に立候補して当選。すると公約どおり、社会実験という形で値下げを行なった。財源は国と県が折半した。それが現在、乗用車がETCを使った際に支払う800円だ。距離や時間から考えると妥当な数字だが、それまでの4分の1近かっただけに多くの人が驚き、森田知事の実行力の高さを称賛した。

 

これによって前述のかずさアカデミアパークには、少しずつ研究施設が増えていく。しかし良い面だけではなかった。千葉県側の住民が買い物のために神奈川県や東京都に出掛けることが多くなった結果、地元の商業施設の売り上げがガクッと落ちてしまった。いわゆるストロー効果である。特にJR木更津駅前の寂れ方は顕著で、アクアラインの開通でクルマでの移動に拍車が掛かったためもあり、シャッター通りに近い状況になってしまった。JR内房線も特急列車の減便や運転区間短縮などの影響を受けた。

 

しかしここでもうひとつの転機がやってくる。2012年、千葉県側のインターチェンジからクルマで5分ほどの場所に、三井アウトレットパーク木更津がオープンしたのだ。これによって逆の流れが生まれた。東京都や神奈川県の住民が千葉県に買い物に来るようになったのだ。アウトレットパークは連日賑わっており、2014年には敷地を拡大することで、首都圏最大規模のアウトレットモールに成長した。周辺にもホームセンターなどが増えており、ショッピングの一大拠点になっている。

 

アクアラインと連絡する高速道路の整備も進んだ。800円効果を多くの地域に体感してもらうためだ。その結果東京都内に住んでいた人が、自然が豊かで広い家を求め千葉に移住するパターンが増えている。筆者のまわりでも複数例あるほどだ。1時間ぐらいで東京に行けるのだから穴場かもしれない。その甲斐あって?最近は土日を中心に渋滞に悩まされるほどになった。しかしいつまで800円が続くかは分からない。2014年時点で10年間継続という報道があるけれど、県知事が変われば振り出しに戻る可能性もある。いきなりそうならないために、エアラインやホテルのように需要に応じて料金を変える、具体的には渋滞が多発する時間帯は値上げとしても良いのではないかと思う。一斉値上げよりずっと賛同が得られそうな気がするのだが。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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