F1、ル・マン、フォーミュラE…2017年、もっとも勢いのあったモータースポーツは?

車・交通

 

モータースポーツの現地取材を通じて感じた2017年シーズンを振り返ってみよう。 2017年の初現地取材は1月末のデイトナ24時間(IMSA)だったが、この時点ではまだ、ヨーロッパ中心のWEC(FIA世界耐久選手権)からアメリカのIMSA、それもDPi(デイトナ・プロトタイプ・インターナショナル)に盛り上がりがシフトすることについて、それほど強く意識してはいなかった。


デイトナ24時間訪問の目的は複数あって、ひとつはレクサスRC F GT3(GTDクラス)のデビュー戦を目に焼き付けること。リヤエンジンからミッドシップに大規模な設計変更を行ったポルシェ911 RSR(GTLMクラス)を確認すること(ル・マン24時間にも出場するので)。そしてもちろん、バラエティに富んだDPiを見ることだ。

 

デイトナ24時間のレース中、観客席に人影はあまりない。国によってレースの楽しみ方は千差万別だ


現地に行っただけの収穫はあったが、驚きは、スタートの瞬間もレース中もフィニッシュの瞬間も、観客席に人影がまばらだったこと。観客がいないワケではなく、コースの内側のキャンプエリアや参戦メーカーが出展するブースの周辺にはいつも大勢来場者がいた。ところ変わればレースの楽しみ方も変わる、を実感した次第。

 

 

■2017年F1でホンダが極めて低調だった理由

 

ホンダはF1パワーユニットの設計コンセプトを一新。これが低調の一因


3月になってF1が開幕した。2016年の段階で「来年は期待してください」旨を当事者から聞いていたので、ホンダの活躍に胸を高鳴らせてのオーストラリア・メルボルン訪問だった。実はうすうす、というかだいぶ、開幕前のテストの段階から「これは様子がおかしいぞ」と感じていたのだが、2017年シーズンが開幕してもやはり、マクラーレン・ホンダは極めて低調だった。


シーズンが終了する段階でくだんのエンジニアに低調だった理由を聞いたところ、2017年型のホンダ製F1パワーユニットは設計コンセプトを一新したことがわかった。競合との差を一気に詰めるためで、2016年までのユニットとは姿形が全然違う。だからといって2017年が低調でいいという理由にはならないが、理由はわかった。


2017年シーズン限りでホンダとマクラーレンは3年間におよぶパートナーシップを解消。マクラーレンはルノーと、ホンダはトロロッソとコンビを組んで2018年シーズンを迎えることになった。ホンダにとっては心機一転、仕切り直しの2018年シーズンになるに違いない。パワーユニットは2017年仕様の正常進化版になるはずで、さんざん苦しんだ信頼性の問題から解放されるはずだ(と、今度こそ期待したい)。

 

 

■「ウソでしょ?」の連発だったWEC

 

トヨタはまたしてもル・マン24時間での勝利を逃した。3連覇を果たしたポルシェは2017年限りでWECから撤退する


4月に入ってWECの2017年シーズンが開幕した。最上位カテゴリーのLMP1では、トヨタが第1戦、第2戦と連勝し、シリーズのハイライトである第3戦ル・マン24時間に向けて幸先のいいスタートを切った。2016年は「ラスト3分の悲劇」によって手中に収めかけた勝利を逃したが、「今度は大丈夫だろう」と期待させるに充分な前哨戦ではあった。


結果を知っているから言うわけではないが、ル・マンがそこまで甘くないことは、過去の例を振り返るまでもなく明らかだ。そして残念なことに、トヨタはまた初優勝を逃した。ポテンシャルはあったのに! 


技術規則の変更で、2017年のマシンは2016年に比べて4秒遅くなるはずだった。ところが、小林可夢偉が運転するトヨタ7号車は前年より約5秒速いラップタイムを記録した。3分14秒791は従来の記録を約2秒縮めるコースレコードだった。3分14秒台の数字をモニター画面で確認したときは、「ウソでしょ?」と思った。


別の意味で「ウソでしょ?」と思ったのは、レースが夜明けを迎えるはるか前の段階でトヨタの3台が戦線離脱したことだった(初めて3台出走したのに……)。ポルシェの2台もトラブルに遭遇したが、結果的に修復時間の短かった2号車がトップでゴールし、ポルシェがル・マン24時間の3連覇を達成した。


「え?、なんで?」と思ったのは、そのポルシェが7月に、2017年限りでル・マン24時間を含むWECからの撤退を発表したときだ。罪滅ぼしのつもりだろうか、ポルシェはLMP1から撤退するかわりに911 RSRで参戦するLM GTEの活動はつづけ、2018年のル・マンはこれまでの2台から4台に参戦台数を増やすと発表した。


継続か撤退か。態度を保留していたトヨタは12月19日、WECへの参戦継続を発表した。プレスリリースで豊田章男社長は、「ライバルが去ってしまったことは大変残念」としながらも、「トヨタが目指す“もっといいクルマ”は、モータースポーツという極限の環境において鍛えられ、つくられていきます。だからこそ、我々は、景気の良し悪しなどに左右されることなく、永続的にモータースポーツに取り組んでまいりたいと考えます」とコメントした。うれしい限りである。

 

 

■フォーミュラEに欧州勢が大挙して押し寄せそう

 

多数の欧州ブランドが参加を表明しているフォーミュラE。2018年はさらに注目度が高まりそうだ


WECの最上位カテゴリーから撤退するポルシェは、2019年から始まるシーズンから、フォーミュラE(FE)に参戦する。メルセデス・ベンツは2018年限りでDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権から撤退し、ポルシェと同じで2019年に始まるシーズン6からFEに参戦。BMWは2018/19年のシーズン5からFEに参戦する。


12月2日に香港で始まったシーズン4(2017/18年)には、ポルシェもメルセデスもBMWも本格的には参戦していないが、欧州の自動車ブランドが大挙して押し寄せてくるムードはプンプンと漂っていた。モータースポーツの勢いが移り変わるのはあっという間である。そんなことを実感させた2017年だった。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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