2016年、春節到来。中国人観光客の「爆買い」はどうなる?

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2016年、春節到来。中国人観光客の「爆買い」はどうなる?

2016年に入り、世界的に株価が下落し続けている。日本においても年始から6営業日連続で株価が下落するという、1949年に東京証券取引所が開設されて以来、初めての事態を招いた。その主な要因の一つが、中国経済の先行き不安だ。

 

ただ、日本国内の様子を見ると、中国人観光客の数が減っている印象はまったく感じられない。年始から、原宿竹下通り、新宿や有楽町などの量販店、どこに行っても中国人観光客の姿は多い。

 

いよいよ2016年最初の「爆買い」シーズンである春節を迎える。昨年までの春節と今年の春節にどのような違いがあるのか、現場からその傾向が見えてきた。

 

■2014年、2015年の「爆買い」を振り返る
2014年、爆買いの中心は白物家電であった。多くの中国人観光客が白物家電を大量購入し、量販店の大きな紙袋を抱えていたり、紐で縛られた箱を運んでいたりする姿をよく目にした。今でも人気商品の一つであるジャー炊飯器に関しては、中国人観光客の誰もが購入する爆発的ヒット商品だった。

 

2015年になると、白物家電に加えてドラッグストアでの買い物も増えてきた。ドラッグストアでは薬だけでなく、化粧品も爆買いされるようになった。マツモトキヨシなどドラッグストアに殺到する中国人観光客は、薬や化粧品とともに日用品や菓子類なども併せ買いしていくようになった。

 

また、保温性の高い水筒なども人気になった。お土産としても手頃な価格ということで、まとめ買いする中国人観光客の姿も多く見かけた。そのため「お一人さま2点限り」というように購入台数制限を設ける販売店も出てきた。

 

もちろん上記の商品だけに限らず、他の商品も売れている。セイコーなど高級時計はもちろんだが、ブランドのバッグや財布、高価格帯のヘッドフォンなどのオーディオ機器も売れている。実際に話を聞くと、「日本の販売店はイミテーションのブランド品を販売していない」という安心感から購入している部分もあるようだ。

 

 

■2016年の注目は「美容関連」
2016年、注目したいのは美容関連商品だろう。以前から人気はあったが、その人気はさらに高まっている。

 

家電量販店の美容関連コーナーに集まるのは、女性だけでなく、男性も多い。女性だと、パナソニックビューティなどの美容家電に加え、美容パック、サプリなども人気だ。男性であれば、電気シェーバーを購入する観光客が多くなった。そのほか、電動歯ブラシの人気の高まりも見逃せないところだ。このように美容関連商品の人気が高まっているため、家電量販店の中には、白物家電売場よりも美容関連売場の方が中国人観光客の数が多いという現象も起きつつある。

 

増加する中国人観光客に対応するため販売店の動きも激しさを増している。百貨店各社はコンシェルジュや免税カウンターの強化に取り組んでいる。また、フロアを改装することで、より見やすい工夫をするようにした。

 

家電量販店では中国人スタッフを増員し、中国語の商品説明のPOPをつけるようになった。また、フロアディレクトリに、中国語と英語を併記するほか、わかりやすいように人気メーカーのロゴマークを入れる量販店も現れている。そのほか、家電、美容関連、お土産品、ブランド品、日本製バドミントングッズなど観光客向けの商品をワンフロアに集める量販店も出てきた。こうすることで家電や美容関連商品を買いに来た中国人観光客が、短時間で、より多くの買い物が出来るようにしているのだ。

 

■ラオックスの躍進
中国人観光客向け販売店の代表格になったラオックスについても触れておきたい。2000年代より、ヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機など大型家電量販店の存在感が増す中で、ラオックス、オノデン、石丸電気など秋葉原の老舗家電店の存在感は薄れていった。その結果、2009年、ラオックスは中国企業である蘇寧電器に買収された。

 

それが逆に、ラオックスにとって飛躍のためのターニングポイントとなった。いち早く、ターゲットの中心を中国人観光客に定めたことで、急復活を遂げたのだ。今では銀座でも、秋葉原でも、中国人観光客を乗せた大型バスがラオックス前に停車するほど、中国人観光客の中でラオックスの存在感は際立っている。また銀座では、現在のショップのほかに、より銀座の中心である三越交差点(銀座四丁目交差点)のそばに大型のショップも増設した。

 

このような状況の中で、ラオックスは取扱商品の領域を拡大する方向へと舵を切った。家電、美容、時計、お土産品に加え、アパレルなど新たなカテゴリーの販売にも力を入れ始めようとしている。もはやラオックスは家電量販店ではなく、中国人向けの総合免税店というポジションへと変化した。その圧倒的な集客力を武器に、取扱商品点数を増やして、より大きなクロスセリングを狙っているのだ。

 

若者を中心にした日本人の消費が伸び悩み、特に高額商品が売れない傾向が続く中、百貨店各社とすれば高額商品を購入してくれる観光客、とりわけ中国人観光客の取り込みは重要な経営課題となっている。また量販店各社に関しては、ショールーミング化(店頭で商品を見てインターネットで購入するという購買スタイル)による実店舗販売高減をカバーする重要な手段としても、店舗で、短時間で、高額商品を購入してくれる中国人観光客の存在は重要なのである。

 

 

■中国人の消費も「モノ」から「コト」へ
2016年に入り、中国人観光客の購買スタイル自体にも変化が出てきている。「モノ」の爆買いだけでなく、「コト」への消費が増えつつあるのだ。

 

例えば、量販店やおもちゃ屋では、子ども連れの観光客の行動が変化している。トミカ、レゴ、ライダー、戦隊、人形、プラモデルなど形のあるおもちゃの購入だけでなく、一回100円で遊べるカードタイプのゲーム機のコーナーへ足を運ぶ中国人観光客も増えている。日本を離れれば、カードを集めたり、遊んだりする機会はほとんどないと思われるが、それでもカードゲームを楽しむことに時間とお金を惜しまないのだ。

 

また別のケースも紹介したい。表参道を歩いていると、中国人観光客から、日本人にも人気の穴場観光スポットについて聞かれることも多くなっている。以前は「A BATHING APE」のようなアパレルショップの場所を聞かれることが多かったが、最近は表参道の裏路地にある小さなコーヒー店やスイーツの店の場所を聞かれたりする。このように、徐々に「モノ」ではなく、「コト」を求めて街を歩く中国人観光客も増えているのだ。

 

年を追うごとに、中国人観光客の購入する「モノ」は多様化している。それだけでなく「コト」を求める中国人観光客も増加している。2016年の春節を迎え、百貨店、量販店、ドラッグストアを視察する限り、例年よりも「爆買い」のムード自体は薄いように感じるものの、「モノ」より「コト」を重視する中国人観光客の消費需要は、今後ますます拡大していくことを予感させる。企業とすれば、そこにも新たなビジネスチャンスも見出せるはずだ。

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マーケティングコンサルタント

新井 庸志

マーケティングコンサルタント。「ワールドビジネスサテライト」「スーパーJチャンネル」などのニュース、情報番組や「日本経済新聞」「日経ビジネス」「財界」「宣伝会議」など、新聞、雑誌での執筆多数。経営から...

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