トヨタはなぜ1000馬力のハイパーカーを作るのか?──プロジェクトリーダーが語るその理由

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トヨタが1月12日に発表したハイパーカー、GR スーパースポーツコンセプトがいま話題だ。トヨタはなぜ、このクルマを開発する必要があるのか? プロジェクトを指揮するGAZOO Racingカンパニーの友山茂樹プレジデントに話を訊いた。

 

トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツコンセプト |TOYOTA GAZOO Racing GR Supersport Concept
プロジェクトを指揮するGAZOO Racingカンパニーの友山茂樹プレジデント

■トヨタ車として史上最高価格のロードカー

 

東京オートサロンでトヨタが発表したGRスーパースポーツコンセプトは、日本初のハイパーカーだ。

 

ハイパーカーとは、F1に代表される世界最高峰のモータースポーツで用いられるテクノロジーをそのままロードカーに落とし込んで開発したスーパースポーツカーの一種で、やなどがこれに該当する。

 

トヨタ自身はまだGRスーパースポーツの価格を公表していないが、ヴァルキリーやプロジェクトワンが3〜4億円であることと、GRスーパースポーツのパワープラントはルマンレーサーのトヨタTS050直系のハイブリッドシステムでモノコックがカーボンコンポジット製であることを考えれば、どう安く見積もっても1億円は越えるだろう。

 

つまり、トヨタ車として史上最高価格のロードカーが誕生することになるのだ。

 

なぜ、トヨタはこれほど高性能で高価格のロードカーを市販するのか? このプロジェクトを指揮するGAZOO Racingカンパニー(カンパニーはトヨタ社内の一組織で従来の事業部に相当)の友山茂樹プレジデントに話を訊いた。

 

トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツコンセプト |TOYOTA GAZOO Racing GR Supersport Concept

■市販化の確率は100%

 

「もともとGAZOO Racingカンパニーは、豊田章男社長がみずからドライバーになり、社員メカニックとともにニュルブルクリンク24時間に挑戦した活動をきっかけにして誕生した組織です。当時、従来のモータースポーツ活動に疑問を抱いていた豊田社長は、モータースポーツ活動をクルマ作りに生かすとともに、トヨタ・ファンの拡大を目指してこのプロジェクトを始めました。つまり、モータースポーツ活動を通じて社員とクルマを鍛えることがプロジェクトの原点だったわけです」

 

「それから12年を経て、2017年3月にGAZOO Racingはカンパニー化されましたが、こうなると、レースで培ったノウハウをもとに開発した市販車を販売して収益を上げないと、モータースポーツ活動を継続できなくなってしまいます。現在は市販のトヨタ車をコンバージョンしたモデルをGRブランドとして販売していますが、このやり方では、いくらいいクルマを作ろうとしてもおのずと限界があります。そこでGAZOO Racingカンパニーがオリジナルのプラットフォームを作ることになった。そのフラッグシップとして登場したのが、今回のコンセプトカーなのです」

 

だとすれば、GAZOO RacingのオリジナルモデルはGRスーパースポーツ1台に留まらないということか?

 

「2016年にGAZOO Racingの発表を行った際、まずはコンバージョンモデルで始めますが、近い将来、レースのノウハウを用いて開発したプラットフォームを持つモデルが出てきますよとすでに申し上げています。それがどの段階で登場するかは申し上げられませんが、オリジナル・プラットフォームの市販車が登場すること自体はいつ実現してもおかしくない話です」

 

「また、今回発表したのはあくまでもコンセプトカーですが、私たちはレーシング・カンパニーなので、無駄なコンセプトカーは作りません。つまり、今回のコンセプトカーも100%の確率で市販化すると申し上げています」

 

トヨタ ガズーレーシング GRスーパースポーツコンセプト |TOYOTA GAZOO Racing GR Supersport Concept
パワートレーンは、2.4リッターV型6気筒直噴ツインターボチャージャーにトヨタハイブリッドシステム・レーシング(THS-R)という組み合わせ

■熱効率は60%!?

 

友山プレジデントによれば、GRスーパースポーツのパワープラントは、レーシングカーのTS050と“ほぼ同じパーツで構成”しているといい、チューニングや一部素材は異なっても、エンジン・ブロックは基本的にTS050のものと同一で、既存のトヨタ車に採用しているハイブリッドシステムとはまったく異なるレース用のシステム「THS-R」を搭載するという。

 

ちなみにTHS-Rは前後車軸にモーターを取り付け、4輪で回生/力行(りっこう)を行う構成。なお、一種の燃費競技ともなっている現在のWECを戦うTS050は、市販車の常識を大きく打ち破る熱効率50%を達成しているが、GRスーパースポーツではこれをさらに越えて60%を目指すというから驚きだ。

 

では、GRスーパースポーツの登場で、今後のトヨタのクルマ作りはどのように変わっていくのだろうか?

 

「これまでのトヨタ車は耐久性や信頼性の高さで評価していただいてきましたが、あまりエキサイティングではないともいわれてきました。実は、この辺はすでに変わりつつあるのですが、GAZOO Racingカンパニーのフラッグシップモデルを発売することで、こうした状況を大きく変えたいと願っています。そして、GRスーパースポーツの技術やイメージを受け継いだエントリーモデルも用意すれば、トヨタ・ブランド全体のイメージ向上にも貢献できるのではないかと考えています」

 

ちなみに、東京オートサロンで公開したテストカーはすでに3〜4カ月前から走行を開始しており、そこで採用しているホイールベースやトレッドなどは、ほとんどそのまま市販車にも採用される見込み。

 

実は、白いカウルをかぶったコンセプトカーのホイールベースやトレッドもこのテストカーと同一なので、ロードカーのプロポーションも基本的にはこれと同一と考えてよさそうだ。発売時期も価格もまだ明らかにされていないが、トヨタ初のハイパーカーがどんな仕上がりなのか、いまから大いに期待したい。

 

 

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