【ターニャの映画愛でロードSHOW!!】1966年代イギリスでは、1日45分しか音楽を聞くことができなかった!? “ロックな海賊”たちが壊そうとした時代の壁とは?

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(c) 2009 Universal Studios and Medienproduktion Prometheus Filmgesellschaft GmbH & Co. KG. All Rights Reserved.

こんにちはーーー。『金曜ロードSHOW!』プロデューサーのターニャです☆

 

「おススメの映画は何ですか?」と仕事柄よく聞かれます。映画番組のプロデューサーをしているから、当然といえば当然ですよね。そんな時、いつも逆に質問をすることにしています。「どういう気分ですか?どんなジャンルやテーマのものを観たい気分でしょうか?」と。

 

今回お届けするのは、「音楽が主役の映画ジャンル」の名作、もっと細かに描写すれば「名曲の数々に彩られ、見終わると最高にハッピーで気持ち良くなれる映画」です。特にロックンロールやポップミュージックが好きな方は必見、「見ないと人生の損失」級におススメしたい一本。「ロックはあんまり……」という方でも、音楽好き、ラブコメディ好き、イギリス好き、歴史好き……もっと言えば、映画好き……要はほとんどすべての方に自信を持っておススメしたい作品、それがリチャード・カーティス監督作品『パイレーツ・ロック』です。

 

 

■ 誰しも一度は聞いたことがあるあの映画の脚本・監督、リチャード・カーティス

 

『ミスター・ビーン』、『フォー・ウェディング』、『ノッティングヒルの恋人』、『ブリジット・ジョーンズの日記』、『ラブ・アクチュアリー』、そして『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』……映画好きでなくても一度は聞いたことがある、という方は多いと思います。これらの作品に共通することはリチャード・カーティス、です。すべての作品の脚本と最後の二本は監督もした映画人です。名匠、と呼ぶにふさわしいタイトルばかりですよね……。

 

ロックやポップミュージック、という言葉で食指が動かない方にも、上記のタイトルを聞けば、観たくなるかもしれません。笑いと涙、ほっこりとした感動を誘う映画――そんな作品作りが本当に巧みな監督だと思います。……どうして映画のタイトルを列挙して文字数を割いてまで説明するかといいますと、そうすることで、観る何かのきっかけが生まれることを心から願っているからです。つまり、私ターニャが全力でおススメしたい映画なのです!

 

 

■ ブリティッシュ・ロックが世界を席巻した1960年代

 

舞台は1966年のイギリス。ビートルズやザ・ローリング・ストーンズ、プロコル・ハルム、ザ・キンクス、そしてザ・フー……キラ星のような英国ロックバンドが次々と世界的ヒットを飛ばしていた時代です。でも、信じられないことに、その頃ブリティッシュ・ロックの本場・イギリスでは、BBCラジオがロックやポップミュージックを流すのは、一日たった45分程度だけでした。民放のラジオ局が存在しておらず、人々は「本当に好きな音楽をもっと聴きたい!」と切望していたのです。

 

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そんな時代のニーズから「海賊(パイレーツ)ラジオ」が生まれました。法律が適用されない北海の沖合に船を停泊させ、そこから電波を飛ばしてロックやポップミュージックを24時間放送し続ける、違法なラジオ放送局です。人々は熱狂しました。全国民の半分以上にあたる2500万人が海賊ラジオの放送に耳を傾け、夢中になったのです。

 

……ここまでは歴史的な事実です。この時代に幼少期を過ごしたリチャード・カーティス監督は、自身の思い出と史実にインスパイアされた珠玉の物語を紡ぎだします。描かれるのは、そうした「海賊ラジオ」が誇る曲者揃いのDJたちとスタッフが織りなす海賊ラジオ船上での人間模様。友情、愛、親子関係、裏切りや対立、笑いと涙……『ラブ・アクチュアリー』でもみせたカーティス監督の群像劇演出が冴えわたります。

 

加えて今作では、名曲の数々が主役級の働きを見せて、誰もが心を揺さぶられる熱いドラマを最高のエンターテインメントにしているのです。タイトルや歌詞がストーリーに完璧に沿っているうえ、発表されたタイミングまで時代考証が完璧になされている構成によって、この映画はすべて史実に基づいたものかと思わされますが、登場するキャラクターにモデルとなった人物がある場合もあれど、すべてが事実に基づいているわけではありません。ただ、そのバランスがまさに絶妙! なのです。

 

 

■ 珠玉のストーリーテリングと最高の音楽のハッピーすぎるマリアージュ

 

映画の冒頭はザ・キンクスの “All day and all the night”で勢いよくスタートします。24時間放送で文字通り「昼夜を通して」2500万人が海賊ラジオに夢中になっていた時代背景が語られた後、ドラッグと喫煙で高校を退学となった青年カールが海賊ラジオ船に到着するところから物語は動き出します。シングルマザーとして彼を育てた母の旧友が海賊ラジオ局“ラジオ・ロック”の経営者なのです。

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乗り込んだカールを迎えたのはその経営者クエンティン。ハリー・ポッターシリーズの魔法大臣役などでも有名な名優ビル・ナイが演じており、クールさといかがわしさが絶妙にブレンドされた船上のリーダーは、独特の存在感を放ちます。さすがのビル・ナイ、最高すぎです。カーティス監督作品ではお馴染みですよね。さらに、カーティス作品に初登場となったケネス・ブラナーが取り締まる側の政府高官役を実に憎たらしく演じ、ぐいぐい観客を物語に引っ張り込んでいきます。

 

クエンティンが束ねる個性派ぞろいのDJ集団。アメリカ帰りの伝説的イギリス人DJ、ギャヴィンが船に乗り込んでくるシーンで流れるのは、ザ・ローリング・ストーンズの代表曲 “Jumpin’Jack Flash”です。気取りまくったクールキャラの登場にふさわしいカッコよさにしびれます。ロックと自由を愛し、人気ナンバー1のDJとして君臨するアメリカ人・「伯爵」に対し、「君が『伯爵』か……じゃ俺は『王』か?」と挑発するギャヴィンと伯爵は、ナンバー1の座をかけてしばしば対立します。文字通りの勝負、となったシーンで流れるのは、ブリティッシュ・ロックではないものの、当時世界を魅了したマカロニウエスタンの代表作「荒野の決闘」のテーマ。1965年の映画なので、時代考証的にも齟齬はないですし、絶妙の味付けがはまる印象的なシーンになっています。2人が仲直りしてDJたちが船上でサッカーをする「日曜日」には、ザ・キンクスの“Sunny afternoon”が流れるのでした。

 

父親がいないと思っていたカールは、船上でまさかの出会いを果たします。奇妙な気まずさが流れるその瞬間流れているのは、ダスティ・スプリングフィールドの名曲 “You don’t have to say you love me”。「愛しているって言わなくてもいいよ」というタイトルが、完璧にこのシーンにはまっていてジーンとさせられるのです。そしてその気まずい「間」を埋めるべく、父親であるDJが続けてかけるのは、あのジミヘンこと、ジミ・ヘンドリックスの “The wind cries Mary” ……珠玉のストーリーテリングと最高の音楽が織りなす、ハッピーすぎるマリアージュ、雰囲気をお分かりいただければ幸いです。

 

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実は私もすべての曲のタイトルやアーティストがわかるわけではありませんでしたが、「あ、聞いたことある」とか「この曲なんていうか知らないけど大好き」という曲のオンパレードなのです。物語の後半、海賊船の危機の最中にギャヴィンが「長い曲をかけよう。最後まで放送を――」といいながらスタートさせるのは、プロコム・ハルムの名曲中の名曲 “A whiter shade of pale”……。お見事すぎて、もう、言葉がないです……。

 

 

■「ロックンロール」とは、結局なんなのだろう

 

恥ずかしながら、私はこの作品を観て、初めて「ロックンロール」の意味を心から理解できたと感じました。海賊船が絶体絶命に追い詰められたクライマックスで「伯爵」がマイクを通じて呼びかける「演説」を引用します。

 

「……政府の奴らよ。これで終わりだと思うな。

 

どんなに歳月が流れても――政治家はよりよい世界など作らない。

 

だが世界中の若い男女はいつだって夢を抱いて――その夢を曲にするだろう。

 

今夜大事なものは死なない。死ぬのはバカ野郎どもだけ。

 

唯一悲しいのは――今後生まれるロックの名曲の数々を――かける光栄に浴せないことだ。だが信じてくれ。それでも名曲は書き継がれ――歌い継がれていく。

 

それらの曲が――世界に奇跡を起こすと。」

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そう、ロックンロールとは、元来、反体制であり、カウンターカルチャーなのだと。自由を求める若者たちの魂の叫びなのだと。頭では理解していたと思っていましたが、熱く語る伯爵の言葉に、「あ、こういうことなのか」とストンと腑に落ちたのです。だからこそ、ミック・ジャガーが2002年英国政府から「ナイト」に叙勲されたとき、盟友のキース・リチャーズが「勲章なんてローリングストーンズらしくない」と批判するなど、賛否が巻き起こったことも、本作を観た後にその理由が体に染み込むように理解できたと感じたのでした。

 

……もちろん、時代は流れて変化しており、ロックンロールやポップミュージックが現代の音楽業界や文化に占める割合や影響力はあらゆる意味で当時とは全く違います。それでも、ロックンロール、とりわけブリティッシュ・ロックがその発展期に人々にとってどのような意味を持ち、どういった歴史をたどったのかエンターテインメントとして雄弁に語る本作は、ロックの精神にあふれた傑作だと思うのです。

 

最後にカーティス監督自身の言葉で締めくくります。

 

「60年代は音楽が最高に素晴らしい時代だった。そして、全ての場面に音楽が流れる理由がある映画を作るのは本当にエキサイティングだった。この映画を観てくれた人たちが、あの船の乗組員たちの仲間に入れたら素敵だろうなって感じることができる、そんな映画になってくれればと思うよ」

……か、監督。本当に素敵だと感じました……。

 

みなさま。「映画天国」(関東ローカルです、ごめんなさいー)で、本作を放送しますので、ぜひ。

 

それでは皆様、心に残る忘れられない映画体験を☆

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■ 番組情報

 

映画天国(関東ローカル)

『パイレーツ・ロック』

1月22日(月)25時59分~(23日午前1時59分~)

 

金曜ロードSHOW!

『名探偵コナン ベイカー街の亡霊』

2月9日(金)21:00〜

 

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日本テレビ映画事業部プロデューサー

ターニャ

日本テレビ事業局映画事業部プロデューサー。報道局・社会部やカイロ支局勤務を経て、編成局編成部で『金曜ロードSHOW!』のプロデューサーを6年半務めた後、2018年12月から現職。2018年10月から『news zero』に不定...

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