「“のど”でも味を感じている」というのは本当? 「味覚」と「味蕾」の意外な事実

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今村甲彦

「“のど”でも味を感じている」というのは本当? 「味覚」と「味蕾」の意外な事実

「ビールは“のどごし”がうまい」とよく言われます。それは、“のど”でも味を感じているからかもしれません。じつは、舌だけでなく、 のどにも食べ物や飲み物の味を感じる「味蕾」という器官が存在しているのです。

 

味覚受容体細胞の分布は動物の種によって異なり、ヒトの場合は主に舌で、他には軟口蓋(口の奥の上面)、喉頭蓋、および食道上部内面、すなわち口と喉に広く分布する。

 

※Wikipedia「味覚」より

 

ただし、のどにある味蕾の数は成人になるにつれて減少していくため、意識して味わうことは難しいかもしれません。

 

また味蕾の分布というのは動物により異なり、驚くことにナマズについては体表面全体に味蕾が存在しているのです。

 

今回は味蕾の分布や味蕾の存在する意味、味覚の不思議について考えていきましょう。

 

■ナマズは体表全体に味蕾がある!?
ナマズはヒゲを中心とした体表面に味蕾が存在します。長崎国際大学教授の岩堀修明教授はこう説明しています。

 

魚類の中でもとりわけ上手に味蕾を活用しているのがコイやナマズである。これらの魚類は視覚のきかない濁った水の中に棲息しているため、味蕾を眼の代わりにして使っているのだ。彼らの味蕾は口腔内だけではなく、体表にも広く分布している。たとえばナマズは約20万個の味蕾をもっているが、このうち90%は体表にあり、とくにヒゲに味蕾が密集している。

 

※『図解・感覚器の進化~原始動物からヒトへ 水中から陸上へ~』(岩堀修明著・講談社)より

 

通常の魚は200個しか味蕾がないのに対して、ナマズには味蕾が20万個もあるそうです。視覚がきかない濁った水では、水流にのって流れてくるエサの“味”を追って狩りをするほうが効率的なのでしょう。

 

■「ハエが手をする足をする」理由
昆虫には感覚細胞が集まっている「感覚子」が存在していますが、その中でも味を感じる「味感覚子」は意外な場所に存在しています。

 

ハエ、チョウ、ガは第一肢に、ハチやアリは触覚に、ミツバチやゴキブリは口器に「味感覚子」が存在しているのです。「ハエが手をする足をする」理由は、味を感じるこの部分についたゴミを落として、いつでも味がわかるようにしておくためといわれています。

 

 

■味蕾は「毒見」のために発達した!?
肉食動物は、生きているものを捕獲してそのまま食べるので、「毒」かどうかを判別する必要がありません。ですので、肉食動物の味蕾はあまり発達していません。

 

これに対して、植物には「毒」となるものが多く存在するため、草食動物は味蕾が非常に発達しています。味蕾は「毒見」のために発達してきたともいえるでしょう。草食動物の味蕾が口に集中しているのは、「毒」を感知するとすぐに吐き出すことができるからだと考えられます。

 

人間は肉も植物も両方食べる雑食ですから、味蕾の数は肉食動物と草食動物の中間ぐらいです。

 

■大人になるとビールが飲める理由
赤ちゃんは母乳の成分である「甘味」「うま味」「塩味」は好みますが、母乳にはない「酸味」や「苦味」は本能的に「毒」と認識します。幼い頃に酸味や苦味を嫌うのはそのためです。大人になると、学習効果によりそれが「毒」ではないと認識でき、コーヒーやビールなどの苦味もおいしいと感じることができるのです。

 

また、味蕾の数は年齢とともに減少していきます。子どもに好き嫌いが多いのは、味蕾の数が多く、敏感だからです。大人になると苦手なものを克服できるようになるのは、「味覚における学習効果」と「味蕾の数の減少」が関係しているとされています。お年寄りになると濃い味を好むようになるのは、味蕾の数が子どものころと比べて大きく減少していることが原因と言われています。

 

■味覚を鍛えよう!
タバコやインスタント食品、ファストフードなどは細かい味の違いを認識する能力を低下させます。また亜鉛などミネラル不足でも味覚が低下することがあります。濃い味付けなどに慣れた現代人は、「うま味」を感じることが苦手な人が増えてきているようです。

 

しかし、じつは味蕾の数が減少しても、味覚を鍛えることが可能なのです。ソムリエなどの味覚は生まれつきのものではなく、鍛えることである程度向上することが科学的に判明しています。年をとっても一流の味覚をもつ料理人も数多く存在します。

 

味覚を鍛えるために必要なのは、バランスの良い食事を心がけ、濃い味付けを避けること。基本的なことになりますが、日ごろの食事に気をつけることが大切なのです。

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今村甲彦

医師。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。久留米大学病院高度救命救急センターを経て、現在は地域の中核病院で内科診療および内視鏡検査に励む。「患者さんの声に常に耳を傾...

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