災害で瓦礫の下敷きになった人が、無事救助された後で死亡する理由

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今村甲彦

災害で瓦礫の下敷きになった人が、無事救助された後で死亡する理由

「災害で瓦礫の下敷きになった人が数日ぶりに発見されました。元気そうです。良かったですね」と報道されてもまだ安心できません。救出されても安心できない理由について解説します。

 

■下敷きになると「クラッシュ症候群」の可能性
「クラッシュ症候群」とは、身体の一部が圧迫された後にその部分を開放することで起こる様々な症候のことです。「挫滅症候群」とも呼ばれます。

 

最初の報告は、第二次世界大戦のロンドン大空襲で、倒壊家屋の下敷きになり救出後に下肢の著しい腫脹と急性腎不全を起こして死亡した症例とされています。その後も戦争や震災、鉱山事故、列車事故などで報告されています。

 

阪神・淡路大震災では、372例のクラッシュ症候群が発生し、50例が死亡したとされています。救出された後でも安心はできないのです。中国・四川省の大地震では、瓦礫の下にいた軽症と思われていた人たちが、しばらくして心不全や腎不全で亡くなることが多かったとされています。クラッシュ症候群の可能性を疑わないとマズいのです。

 

 

■クラッシュ症候群で起こる出来事とは
身体の筋肉の中に骨格筋があります。骨格筋とは骨格に付着して、体幹や体肢の姿勢や運動にあずかる筋肉のことです。骨格筋は体重の40%、その中に含まれるカリウムの総量は全身の約75%にも及びます。

 

重い物の下敷きになったりすると、身体の一部(主に手足)が圧迫されることで骨格筋が壊れます。圧迫された部分とそこから先の部分は血液が流れないため虚血状態となり、完全圧迫の場合は4~6時間で壊死します。

 

救出されることなどで圧迫されていた部分が解除されると、壊死した部分の骨格筋から、カリウムやミオグロビンという物質が急激に流れ出ることになります。さらに圧迫解除後には虚血再灌流障害が生じて、損傷を受けた筋細胞が浮腫を形成し壊死していきます。

 

ケガをした手足の部分は、運動麻痺や知覚麻痺とともに腫れがひどくなっていきます。また骨格筋から出てきたミオグロビンや脱水による循環不全、アシドーシスなど複数の要因が関与し腎不全をきたします。この腎不全では赤褐色のミオグロビン尿が特徴的です。壊死した骨格筋から流れでた高濃度のカリウムが心臓を直撃すると不整脈、心停止を起こすこともあります。見た目は重症でなくても、クラッシュ症候群があると致死率が高くなるのです。

 

■クラッシュ症候群の治療
クラッシュ症候群の重症度は損傷を受けた筋肉量に依存します。軽症であれば輸液療法や高カリウム血症に対しての対応となりますが、状況によっては血液透析など高度医療が必要になることがあります。

 

瓦礫の下敷きでなくても、長い時間筋肉が圧迫される状況下にあると起こる可能性があります。「2時間以上挟まれている」「パンパンに張れている」「茶褐色の尿が出る」など当てはまるもの1つでもあるとクラッシュ症候群の可能性があるので注意が必要です。

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今村甲彦

医師。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。久留米大学病院高度救命救急センターを経て、現在は地域の中核病院で内科診療および内視鏡検査に励む。「患者さんの声に常に耳を傾...

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