なぜ今年から無料でB型肝炎ワクチンが打てるようになったのか?

ヘルス・ビューティー

今村甲彦

なぜ今年から無料でB型肝炎ワクチンが打てるようになったのか?

あまり話題にはなっていませんが、今年(2016年)の10月からB型肝炎ワクチンが原則無料で打てるように決まりました。対象は今年4月以降に生まれる0歳児。計3回の予防接種が予定されています。接種後の健康被害についても、予防接種法に基づき治療費などが支払われます。

 

 

ではなぜB型肝炎ワクチンが無料で定期接種できるように決まったのでしょう?

 

 

■新しいタイプのB型肝炎が増加してきている!

 

通常の日本にあるB型肝炎は、1986年からの母子感染防止法により一定の効果を得てきました。また、成人がB型肝炎初感染を起こしても一過性の感染で、慢性肝炎になることはほぼないと軽視されてきました。

 

しかし、近年都市部を中心として欧米型の新しい遺伝子型(ジェノタイプ)のB型肝炎ウイルスが散見されてきています。感染の原因の多くは性行為による体液を介した感染と考えられているのですが、問題は今まで成人の初感染では慢性化しないと考えられてきたB型肝炎ウイルスが、そうでないとわかってきたからです。ジェノタイプAの遺伝子型では約10%が慢性化すると考えられてきています。

 

今まで日本にあまり存在していなかったタイプのB型肝炎ウイルスが、グローバルな流れの中で流入してきており、若者を中心にB型肝炎感染者が増加してきているのです。

 

 

■唾液や汗などによる感染の可能性も否定できない

 

B型肝炎は、血液や血液を含んだ体液などからしか感染しないので、B型肝炎ウイルスを保有している人との性行為などの濃厚接触でなければ感染しないと言われてきました。

 

しかし、近年、父子感染や感染経路不明の乳幼児の感染が報告されてきているのです。平成16年にはある保育園で25人の感染経路不明のB型肝炎集団発生事例も報告されています()。

 

厚生労働省の研究班の調査結果は、「日常生活で感染する可能性は低いものの、唾液や汗などによる体液から感染する可能性が完全に否定できない」と報告しています。

 

 

■知らないうちにB型肝炎に感染する可能性も

 

今年の2月、していたことが発覚しました。急性B型肝炎で、通常死亡することは稀です。死亡する確率は1~2%ですから、確率的には150~300人が感染した可能性があります。

 

B型肝炎に感染しても風邪のような症状しかないことも多く、また自覚症状がほとんどない人も存在します。杞憂に終わるといいのですが、今回の「院内感染疑い」や「保育所における集団感染例」を考えると、実は「唾液や汗などにより感染しやすいB型肝炎ウイルスが意外と多く存在しているのかもしれない」と勘ぐってしまうのです。肝炎は採血しないとわかりません。

 

しかも、以前から言われていた、成人でのB型肝炎の初感染は慢性化しないという常識も、海外から新しいタイプのB型肝炎ウイルスが入ってきている現状では通用しなくなってきています。B型肝炎感染は看過できない問題になってきているのです。

 

 

■世界でのB型肝炎の既往は20億人、放置すると危険

 

B型肝炎ウイルスは、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝がんを引き起こす可能性があります。B型肝炎ウイルスに持続感染している人は世界中で4億2千万人以上、B型肝炎ウイルス感染の既往がある人は約20億人とも言われています。

 

B型肝炎ウイルスに感染しても、すべての人が慢性化しウイルスを持続感染した状態になるわけではありません。しかし、いったん慢性肝炎になってしまうと、将来肝がんや肝硬変へ移行するリスクがあります。特に3歳未満の乳児がB型肝炎ウイルスに感染すると、免疫の仕組みが未発達のため、慢性化する危険性はずっと高くなります。こういう点も踏まえて、今回0歳児のB型肝炎ワクチンが無料で摂取できるようになったと思われます。

 

 

■世界的には国民全体にB型肝炎ワクチンを打つのが常識

 

日本では今年からですが、世界的には国民全体にB型肝炎ワクチンを打つユニバーサルワクチネーションが常識です。WHO(世界保健機関)は、1992年、世界中の子どもたちに対して、生まれたらすぐにB型肝炎のワクチンを国の定期接種として接種するように指示しています。世界180か国以上でユニバーサルワクチネーションが取り入れられ、現在では90%以上の国と地域で導入されています。

 

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上の図は、ユニバーサルワクチネーション導入国(WHO、2012)です。幼児期にB型肝炎ワクチンを3回受ける接種率を色分けしています。青色は90%以上、水色は80~89%、ピンクは50~79%、赤は50%未満、色が塗られてないのは定期接種されていない国です。世界的に見れば、日本はやっと世界水準に近づいてきたレベルなのです。

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今村甲彦

医師。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。久留米大学病院高度救命救急センターを経て、現在は地域の中核病院で内科診療および内視鏡検査に励む。「患者さんの声に常に耳を傾...

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