「黒い食品信仰」に衝撃! 米も砂糖も「白いより黒いほうが健康にいい」のウソ・ホント

ヘルス・ビューティー

平井 千里

 

司会者交代でざわめいている公共放送の某番組。食事の面でも波紋を投げかけているようです。先日、このような記事が出ました。

 

 

食に関心が高い人の中には、このような話を聞いてショックを受けている人も少なくないでしょう。「黒いもの=健康説」は、かなり昔から言われているように思います。昨年、87歳で他界した我が伯父も40年くらい前、これを信じていたようで、「豆腐と白米は白いから、身体に悪いんだぞ!」と言い、豆腐入りのみそ汁の汁だけを飲んでいたのを子供心に記憶しています。その後、しばらくして近所でうどんを食べる姿が目撃されていますので、この説のことは、いつからか忘れてしまったようですが(笑)。


 

■「黒いもの=健康説」は誤報だった…?


ここで今回、再燃した「黒いもの=健康説」の是非についてですが、答えを先にお伝えしてしまいます。「黒いもの=健康説」は誤りであるとするテレビの情報は、正しい情報です。砂糖の色の違いは製法や原材料の違いで生じるもので、黒い砂糖を漂白すると白くなるわけではありません。

 

私なりに、なぜこの誤報が広まってしまったのかを考えてみると、日本人の主食である「米」が原因ではないかと思うのです。

 

明治初期、日清戦争より少し前の頃、農家の次男・三男は出稼ぎの代わりに軍隊に入隊する人も少なくなかったようです。その理由は「軍隊に入れば、白い御飯がお腹いっぱい食べられるから」。その当時、精米技術が発達し白米が出回っていましたが、一般に高価で平民の口にはなかなか入らなかったようです。

 

そんな中、軍隊に入れば白米がお腹いっぱい食べられる……、軍隊に入りたい人が増えるのも分かる気がします。時を同じくして、軍人の間で脚気が流行します。「陸軍」では森林太郎医師が「脚気は感染病である」と清掃を強化。「海軍」では高木兼寛医師が「脚気の原因は食事にある」と、パン食を開始します。その結果、陸軍では脚気が減らず、海軍では脚気が激減したのです。
 

 

■脚気の流行がもたらした“黒い食品”神話

 

ご存知の通り、脚気の原因は「ビタミンB1」の不足。精白米はビタミンB1を豊富に含む「胚芽」の部分がぬかとして取り除かれてしまいます。従来は「玄米」として胚芽の部分も食べていたため、ビタミンB1不足にならなかったのです。

 

一方、パンの原材料である小麦は皮が身の内部にまで入り組んでいるため、外側の皮をむいただけでは繊維が残ります。そこで、粉にしてふるいにかけ、硬い繊維質をとり除いた後、生地を作って焼き上げるのですが、そのとき胚芽部分が小麦粉に残ることから、パン食の海軍では脚気が劇的に減少したのです。 

 

今ほど栄養学の知識が一般に広く普及していない時代のこと。この話が「白い米より玄米だよ」と噂されるようになり、「白い米より黒い米」になり、いつしか「白い食品より黒い食品だよ」と伝言ゲームの間違いのように、気づいたときには「米」だけでなく「砂糖(上白糖、三温糖)」や「パン(白パン、黒パン)」、「豆腐は白いからダメ」など、さまざまな白い色を持つ食品に波及してしまったのではないかと思うのです。

 

 

■結局、白米と玄米はどっちがおすすめ?

 

ここで、白米と玄米の違いと、違いを踏まえてどのように食事に反映させればよいかを考えてみましょう。



白米は玄米と比べて、ビタミンB1と食物繊維が少ないですが、白米が必ずしも悪ではありません。一般的な生活を送っている大人だけを見れば、白米と玄米については、食物繊維やビタミンB1が補給できるので、玄米のほうがよかろうとは思います。


しかし、白米は玄米に比べてやわらかく噛みやすいことから、高齢者や体が弱っているときは白米のほうが適しています。ほかにも、スポーツ選手など、大量のエネルギーを摂らなければならない人にとっては、しっかり噛まなければ飲み込めない玄米は食べるのに苦労し、思ったほどの量を食べることができないこともあります。そのため、選手によっては白米を食べるほうが、成績がよくなるという人もいるそうです。

 

幼児も成長のためのエネルギーが必要ですので、身体の大きさの割には高エネルギーを必要とします。食べ方を勘案すると、白米のほうがよい子もいると思います。ただし、白米を食べる際には、麦などの雑穀を混ぜて炊いたり、やわらかく調理した野菜のおかずを玄米のときよりも1品多くするなどして、ビタミンB1と食物繊維の不足に備えることもお忘れなく。
 

食材の良し悪しは色で判断できません。情報が氾濫している現代ですが「正しい栄養情報」を正確に理解し、料理や食べる人に合わせた食材を適切に選べるようにしましょう。

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平井 千里

女子栄養大学大学院(博士課程)修了。名古屋女子大学 助手、一宮女子短期大学 専任講師を経て大学院へ進学。「メタボリックシンドロームと遺伝子多型」について研究。博士課程終了後、介護療養型病院を経て、現職で...

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