家庭用に「8Kテレビ」は必要? 超高画質と「面白さ」に関係はあるのか?

ライフスタイル

 

テレビにそれほどの画質が必要なのか……という話は、ハイビジョン登場の時に、散々言われていた。「40型のテレビでバラエティ番組を見たいか?」とか、「毛穴まで見える必要があるのか?」とか。

 

それは、地デジに切り替わる時にも言われて、しかし、大画面液晶テレビが安価になり、各家庭に普及し出すとそういうことは言われなくなった。人の眼は、簡単に順応するのだ。今や、地デジのハイビジョン放送を見て、「うわー、キレイ!」なんて思う人は少ないのではないだろうか。

 

 

■地デジ化の感動も既に薄れて…

 

画質的には、アナログ放送が約35万画素、DVDが35万画素、地デジは約156万画素なのだから、そうとう画質が良くなっているのだけど、しかし、記憶の中のアナログ放送と、現在の地デジの間に、5倍ほどの画質の向上があったという実感は、既に薄れている。

 

まあ、アナログ放送の場合、電波状態が悪いと映りが悪くなっていて、地デジでは「映りが悪い」という状態は無い、という点では、とてもテレビは見やすくなった。

 

ただ、人間の眼は、地デジのキレイさにあっという間に慣れるように、映りが悪い映像でも、勝手に眼が補完して、記憶の中に残るのは、それなりにキレイな映像だったりするから厄介だ。もちろん、細部は実際には見えていなかったりするので、後で高画質で見直すと、全然思ってたシーンと違っていたりして驚くのだけど、それでも「見た」という記憶は鮮やかだったりするから難しい。

 

 

■家庭用に8Kテレビは必要か?

 

そして、未だ4Kも普及する前に、家庭用の8Kテレビが登場するとか、業界は8Kの普及に対して疑問視する向きもとか、そういうニュースが流れてくる。まあ、当たり前である。ハイビジョンの画質でさえ、家庭用にはオーバースペックなのだから。

 

4Kの解像度は829万画素。ハイビジョンの更に4倍だ。そして、面白いことに、ハイビジョンの画質は40インチ以上の画面でないと真価が発揮できないと言われていたのに、今は40インチ以上は4Kでないと、と言われているのだ。いつの間にか人の眼は随分良くなったらしい。

 

確かに、ハイビジョンに慣れた私たちの眼は、もしかすると、かつてよりも高画質に対して敏感になっているかも知れない。しかし、よく、良いものを見ると戻れないと言って、1度ブルーレイを見たらDVDに戻れないとか言うけれど、つまらない映画をブルーレイで観るより、面白い映画をDVDで観た方が記憶は鮮やかだし、ブルーレイの方が良いとも思わない。もちろん、実際に買うのは面白い映画のブルーレイだったりするけど、そこはそれ。

 

 

■「面白さ」と画質のよさの関連性

 

35mmフィルム上映の映画は、本当にキレイだけれど、その高画質を捨てて、製作にも上映にもコストパフォーマンスに優れるデジタル上映に切り替えたのは、映画業界だ。テレビの画質を上げようとする一方で、映画は画質を下げている。まあ、下げているといっても、8Kとかで撮影していたりするので、テレビに流す時にダウングレードするという話では無いのだが。

 

それにしても、100インチ以上で見るような画質は家庭で必要なのか、という議論は、きちんとされるべきだろう。困るのは、8K放送が始まったとして、そこで見たいコンテンツが放映された時に、ほとんど不要な画質のために、場所とお金を消費できるかということだ。

 

見たいのは面白い映画だし、面白い番組だし、面白いコンテンツだ。その「面白さ」に画質の良さがどのくらい関係するかという部分を、まず考えて欲しい。ソニーの人が「家庭用コンテンツとしての8Kは、時期尚早だが、コンテンツ自体は8Kで作っておく必要がある」というような事を言っていて、とりあえず、それが現実的な線だと思う。元のデータは高画質で作っておくに越したことは無い。そこから、媒体に合わせてダウングレードしたものを配信すれば良いのだ。

 

 

■8Kテレビが私たちに見せたいもの

 

映画や写真のテクニックとして、背景をぼかすことで、主人公たちの表情を浮かび上がらせる方法がある。何もかもが映っていれば良いというものでもないのだ。一方で、毛穴のアップが見えることが物語上必要ならば、CGで作ってでも見せるのが映画だったりする。何を見せて、何を見せないか、何をどのように見せるか、という問題の中に、超高画質は、どの程度必要とされるのだろう。それこそ、女性の肌の滑らかさを本気で捉えたいなら、フィルムを使うという手だってあるのだ。

 

そう考えていくと、欲しいのは超高画質の画面では無いような気がする。今や、スマホやパソコンの画面上で、簡単に見たいコンテンツを見ることができる。ブルーレイディスクだってパソコンで見られるし、動画配信もHD画質、つまり地デジ程度の画質だから、画質的に何の不満も無い。

 

ならば、地上波も、パソコンやスマホで、もっと気軽に録画再生できた方が、見る機会は増えるような気がするのだ。リビングの大きなテレビの前に座って見るというスタイルは既に随分減っている。

 

もちろん、家族みんなで見るということもあるだろうけれど、それも、誰かのスマホから見せたいコンテンツをテレビに出力出来た方が、より用途は広がる。パソコンやスマホにHDMI入力端子が付くだけで、映像コンテンツやゲームについての可能性は一気に広がるはずなのに、そちらには手を打たずに、ひたすら高画質化に走るメーカーの思惑を知りたいところだ。

 

余談だが、部屋を暗くして、プロジェクターで投影して見る映像は、スクリーンサイズが同じ大型テレビと比べても、全然、没入館が違う。画質はテレビの方が良いにも関わらずだ。結局、テレビはテレビなのだ。気が散ること前提で、映画のように厳密ではないテレビ用の構図で、長い時間見続けても負担が少ないように作られたコンテンツ。ならば、8Kテレビは、私たちに何を見せたいのだろう。

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納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな...

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