制服はなぜ高い? 「当たり前」をビジネスに変えるニュースの読み方

ビジネス

酒井威津善

 

先日、中学校入学時の費用が9万円というニュースが話題になりました。

 

 

中でも制服代は、高いところだと3万円近くもするため、児童手当が支給される標準的世帯でも新入学用品費として支給される2万3000円では到底足りないとのこと。

 

小学生がいる家庭の親御さんにとっては、あまり気持ちのいいニュースではありません。しかし、今、新しいビジネスを考えている人なら、「制服って高いんだな」とこのニュースをそのまま読み流してはいけません。ビジネス視点でもう一歩踏み込んで、この出来事に捉えてみましょう。

 

 

■「当たり前」の先にビジネスチャンスが眠る

 

制服代が3万円。スーツなら1万円台で買えるのに、ちょっと高いなと感じますよね。でも、制服だから仕方がないと終わりにすることなかれ。どこかの衣料メーカーが安く出すんじゃ? と思っていたら、やはりありました。

 

大手紳士服メーカーのです。

 

日本被服工業組合連合会の「標準型学生服認定基準」を満たした「標準型学生服」をジャケット1万2500円、パンツ6000円、合計1万8500円で発売したのです。3万円と比べると、40%近くも安い価格です。

 

 

制服代が高いのは、今さらと思っているフシはありませんか? 高いけど、そういうものだと。しかし、だからこそビジネスチャンスがあるのです。誰もが「そんなものだ、仕方がない」と考えているその先にこそ、大きな金鉱脈が眠っているのです。そうは言ってもここまで安いと儲からないんじゃ? と思われるかもしれません。残念ながら、洋服の青山の例は発売されたばかりで、まだ数字上の結果は出ていません。しかし、似たような事例を思い浮かべると、今後どんな結果になるか少しイメージできそうです。

 

例えば、格安メガネ。一昔前、メガネは高級品でした。1本7~8万円もする時代がありました。今ならスマホの本体価格並ですね。とても気軽に買える値段ではありません。当時のメガネはまさに「貴重品」。レンズも今のような割れにくい素材ではなく、ガラス製。それこそ落としたら、一発でダメになる取り扱い要注意の代物でした。値段が高く、壊れやすいだけではありません。1本のメガネを作ってもらうのにお店で頼んでから1週間以上かかりました。利用者にとっては、メガネは大切に扱うことが「当たり前」だったのです。

 

時代は変わり、メガネ市場には1本3000円台の格安メガネが登場しました。出来上がりにかかる時間も早ければ15分。コーヒーを1杯飲んでいる間にメガネが仕上がるようになったのです。価格は安いし、仕上がりも早い。格安メガネは瞬く間に市場に広がり、メガネは気軽に買えるものということが「当たり前」となりました。こうした例を見ても、洋服の青山による制服が成功する可能性は十分です。
※この記事作成時点(2016年3月15日)で洋服の青山オンラインストアの標準制服はすべてSOLD OUT。

 

 

■価格を下げればいいわけではない


みんなが「当たり前」だと思っているテーマに切り込む上で、気をつけたいことが2つあります。

 

1つは、提供する商品やサービスの品質です。安かろう、悪かろうでは消費者は絶対納得しません。いい加減なモノやサービスを提供すれば、近年の食品安全問題を思い出すまでもありません。すぐにSNSで拡散され、いとも簡単にビジネスが破綻するでしょう。

 

もう一つは、既存の商品と差がない、もしくは今まで以上の品質を低価格で提供する「仕組み」です。例えば、先ほどの格安メガネの場合、御三家の1社JINSは、ファストファッションのユニクロと同じSPA方式をとっています。SPA方式とは、自社の資産で製造から販売まで一括管理する手法のことです。この方式によって、外部への発注コストや卸などの中間コスト、輸送コストなどを削減し、さらに人件費のかかる視力測定やレンズ加工を自動化することで店舗コストも大幅に減らしています。結果、大手メガネチェーンがテレビCMへの広告や製造の外部発注に資本を投入することに対して、安い原価でメガネを製造し、人手や広告費をかけずに大量に売ることで勝負する仕組みを作り上げたのです。

 

先ほどご紹介した洋服の青山も、その仕組みは特徴的です。生産方法自体は、多くのファッションメーカーと同様に外部に生産を委託するスタイルですが、違うのは生産メーカーからの仕入方法です。シーズンの最初に注文したものを現金で全て買い取る「完全買い取り制」を採用しているのです。この方法によって、仕入れ価格を下げられるほか、返品や在庫などのコスト削減も同時に実現しています。また、スーツを大量生産する工場や販売チェーンを活かすことで、新たに売り出す制服も、既存の制服メーカーよりも大量に安く製造・販売できるのです。

 

単に値段を下げるだけでは、そのまま利益が減るだけで、ビジネスは続きません。成功させるためには、こうした仕組みが価格と必ずセットになっていることが欠かせないのです。チャンスがあるからといって無理やり実行すると、大きな損失を生み出しかねないのでご注意を。事実、安易な低価格戦略を繰り返して、取り返しがつかなくなった企業は、枚挙に暇がありません。

 

 

■気になる出来事があれば、「問い」を立ててみよう

 

「どうしてこの価格なんだろう?

 

高いけど他に選択肢がないし、昔からそうだし…、仕方がないな」

 

みんながそう思っている商品やサービスにこそ、大きな金鉱脈が眠っています。

 

ぜひ、そんな商品やサービスを見つけたら、

 

・なぜ、その価格なのか
・誰がやってもそうなるのか
・コストを下げる余地はないのか

 

といった「問い」を立て、自分なりの答えを洗い出してみましょう。問いはいくつあげても構いません。そして、どうすればそれが実現できるか、格安メガネや洋服の青山の仕組みのような解決策はないか、ぜひ考えを巡らせてみましょう。きっと、あなた自身も驚くようなビジネスチャンスに出会えるはずです。

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酒井威津善

さかい・いつよし。1968年大阪生まれ。フィナンシャル・ノート代表。財務コンサルタント、ビジネスモデルアナリスト。 大学卒業後、会計事務所での監査業務を経て、TIS株式会社(旧東洋情報システム 現ITホー...

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