札幌市電ループ化が巻き起こした予想以上の利用者増と経済効果

車・交通

 

高度経済成長時代は道路の邪魔者扱いされ、次々と廃止されていった路面電車が、最近逆に少しずつ距離を伸ばしている。その内容を見ると、3つに分けられる。

 

ひとつは廃止が議論されていたローカル線を路面電車化したもの。富山市を走る富山ライトレールが有名だ。2つめはJRのターミナル駅の手前で止まっていた線路を駅まで伸ばしたもの。今年は同じ北陸地方の福井駅で実現している。

 

そしてもうひとつ、ループ化がある。今までC字型だった路線をつないで、JR山手線のように環状運転を実現したものだ。こちらも富山市で2009年に実施されているけれど、昨年12月には札幌市電でも、これまで終点だった西4丁目とすすきの停留場の間約400mが結ばれた。

 

その効果は予想以上。開業後1か月間の1日平均乗客数は、平日が前年同期比10%増、年末年始の休みを含めた土日祝日が同16%増という数字を記録したのだ。具体的な人数では約2700人増とのことで、札幌市が想定した600人増という事前の予想を大きく上回っている。

 

いまある環状線で、最初からループだった路線はほとんどない。山手線も例外ではなく、1925年に秋葉原~神田間が開通することで環状運転を始めた。それまでは、上野に住んでいる人が新橋に行くときは、大回りする山手線ではなく、他の乗り物を使ったはずだ。でもループ化が実現した後は、新橋だろうが新宿だろうが、沿線のどこへ行くにも山手線を使えば済む。ループ化はここまで利便性を高めてくれるのだ。

 

札幌市電は全線、札幌市の中心、中央区に属している。既存の区間の沿線は住宅が多いけれど、区役所や病院、学校などもある。沿線の住民はこれまで、行き先によって乗り物を使い分けたはず。それがループ化によって、多くの用事を市電だけでまかなえるようになった。市電の利用が習慣となる住民が増えた。それが利用者増につながったのではないだろうか。

 

しかも新たに開通した区間は、北海道でいちばんの繁華街。すすきのは説明不要だろうし、西4丁目の交差点には三越やパルコがある。新設された停留場の名前は、飲食店などが軒を連ねるアーケードとして有名な狸小路だ。ここまで沿線に恵まれた開業は珍しい。これまでタクシーに頼っていた宴からの帰り道に、リーズナブルな市電を利用する人が増えたのではないだろうか。

 

新たに開通した区間は、我が国初のサイドリザベーション方式を採用していることでも注目を集めている。通常は道路の中央にある軌道を両脇に敷いたもので、新設された狸小路停留場も歩道の脇にあり、電車を降りてそのままアーケードに行けるので便利だ。

 

筆者も2月、ループ化が実現して間もない札幌市電を利用した。お気に入りのラーメン屋が西線6条停留場から徒歩圏内にあるからだ。すすきのや狸小路からこのラーメン屋に行くのに、いままではタクシーに頼ることもあったけれど、今年は市電でリーズナブルに一杯を楽しむことができた。

 

2月の札幌はもちろん雪に覆われていた。100万人クラスの大都市では世界一の積雪を記録しているのだから当然だ。もちろん主要な道は除雪が行き届いているけれど、雪が路肩にたまるので道が狭くなり、渋滞が酷くなって、バスやタクシーは遅れがちになる。

 

そのなかで市電は、札幌名物のササラ電車がこまめに除雪してくれるおかげもあり、雪の影響を受けない地下鉄に近い信頼性を備えるに至っている。その点でも利便性を高めたループ化は歓迎できる。

 

ちなみに札幌市、人口に占める女性比率が高い都市としても知られている。市全体では男性94に対して女性100となっており、市電が走る中央区に至ってはなんと84:100という大差がついている。北の都で活躍する女性たちにも、市電のループ化は価値ある改革に映っている……はずである。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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