市販薬やマッサージも対象に? 元国税局職員が教える「サラリーマン逃税術」

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ダ・ヴィンチニュース

(大村大次郎/悟空出版)

所得税や住民税など、私たちは国民の義務として税金を納めている。社会保険料も含めると、その金額はなかなかのものだ。景気は上向きといいつつ実質賃金がなかなか伸びず、年々重みを増す税金に苦しむ人が増えている。老後の頼りになるはずの年金は破たんしそうだし、AIの登場で職は失いそうだし、格差が広がり続けるし、先進国とは思えないほど国民全体に重たい現実がのしかかっている。

 

『税金を払わずに生きてゆく逃税術』(大村大次郎/悟空出版)は、元国税局職員で多数の書籍を執筆する大村大次郎さんが、税金をなるべく払わずに生きていく方法を伝授する1冊だ。本書は「税金を払わないライフハック」を紹介するというより、私たちの知らない「税の実態」を克明に記すというスタンスに近い。なかにはブラックすれすれの、まさしく「逃税」のようなテクニックも取り上げており、正直なところ読者にご紹介すべきかどうか悩んだ。

 

ところが本書の最後に、この本を出版するにあたって大村さんがどうしても伝えたかったことが記されていた。なぜ本書を出版したのか。どうして「逃税」をすすめるのか。それを読むと、国民全員が税金について、もしくは国の今後について、いよいよ考える時期が来ているのではないかと感じる。

 

その前にまずは、サラリーマンでも実践できる「節税術」をいくつかご紹介しよう。

 

 

■医療費が年間10万円を超えたら節税対象

 

本書で紹介されている、私たちに最も関係ある節税術が「医療費控除」だ。医療費控除とは、一定以上の医療費がかかった場合、その分を課税所得から減額する制度。その計算方法は以下の通り。

 


その年に支払った医療費(保険金等で戻った金額を除く)-10万円(注)=医療費控除(最高200万円)

(注)10万円または所得金額の5%……いずれか少ない金額となる
 

少々厄介な計算なので、計算方法や申告方法は会社の担当者やお近くの税務署で尋ねてほしい。とにかく端的に言えば「年間10万円以上の医療費を支払っていれば、税金の一部が還付される」ということだ。

 

この医療費控除のキモは、病院で支払ったお金だけでなく、歯医者の診療費、病院までの交通費、薬局で買った市販薬、禁煙治療、ED治療も対象になること。さらには、栄養ドリンク、あん摩、マッサージも対象になることがある。

 

たとえば市販薬の場合、ケガや病気、そのほか体の具合が悪くて購入したものならば、医師の処方がなくても医療費控除の対象となる。一方、「風邪を引いたときのため」というように、予防や万が一の備えとして購入したものは対象にならない。簡単に言えば「治療に関するものかどうか」がポイントだ。

 

また、ビタミン剤や栄養ドリンクも一定の条件を満たせば対象になる。

 

・何らかの体の不具合症状を改善するためのもの

・医薬品であること

 

この2点を満たせば、医療費控除の対象となる。同様にあん摩、マッサージ、鍼灸などの代金も下記の2点を満たせばOKだ。

 

・何らかの体の不具合症状を改善するためのもの

・公的な資格などを持つ整体師、鍼灸師などの施術であること

 

これだけ幅が広ければ、年間10万円を大きく超える人も出てくるはず。その場合、税金が還付される可能性が高まる。一部の人だけではない。国民全員が医療費控除で税金の還付を受けられるかもしれないのだ。ちなみにこれは合法であり、国も認める立派な「節税」だ。ぜひ今年から実践してほしい。

 

 

■なぜギリギリの内容の本書を執筆した?

 

この他にも「タックスヘイブンが可能な地域にペーパーカンパニーを作り、さらに秘密の口座を作ってそこに金融資産を隠す」「タワーマンションを買うことで相続税対策を打つ金持ちたち」「会社内独立することで会社員から事業者になり、サラリーマンと自営業者の“いいとこ取り”を実践する」など、節税方法や逃税の実態を紹介している本書。なかにはグレーすぎて書くことすらためらう内容もあり、書籍としてかなりギリギリのラインを攻めている。

 

しかしなぜ大村さんはこのような本を執筆したのだろう。「なんて本だ!」「税金をバカにしているのか!」と怒りだす読者もいるはずだ。その答えが本書の最後にあった。

 

冒頭で述べたように、日本の未来は暗いムードで覆われている。それでも私たちは必死に働いて国を支え、税金を納めている。そもそも税金とは国民全体を平等に支えるための制度であり、過労死のニュースが流れるほど命がけで働いているのに、なぜ私たちの生活は年々苦しくなるのだろう。ほとんどの日本人は、夫婦で共働きをしても子どもを1人か2人育てるのがやっとだ。「シングルマザー」となれば夜の商売で生活を支えることも。そんな先進国は世界でほとんど存在しない。

 

日本がこのような生きづらい国になったのは、社会システムが壊れているからであり、政治が機能していないからだ。まずは少子高齢化問題。女性が一生のうちに出産する人数「合計特殊出産率」が2.08を下回ると「人口減」になるといわれている。その数値を下回ったのは1974年のこと。44年も前から一度たりとも数値が回復していないにもかかわらず、政府は安倍政権になるまで大きな対策を打たなかった。結果、日本の未来を大きく揺るがす大問題として立ちはだかっている。少子高齢化は「晩婚化」や「価値観の多様化」などの要因で引き起こされたのではない。政治と社会システムの崩壊が主な原因だ。

 

次に、昨今激増する非正規雇用。その数は働く人の3人に1人とされ、500万人以上にも上る。非正規雇用の最大の問題は低賃金であり、これは「経済的な問題から結婚できない」につながる。この激増の要因は、経済界からの要請を受けて政府が労働法などを改悪したために生じたものだ。1995年、経団連は「新時代の日本的経営」として「不景気を乗り切るために雇用の流動化」を提唱した。早い話が「いつでも首を切れて賃金も安い非正規社員を増やせるようなルールにして、人件費を抑制させてくれ」ということだ。国民に支えられている政府は、これを突っぱねるどころか後押しした。結果、政治が非正規雇用の問題を引き起こしたのだ。「世界的な不景気」や「時代の流れ」ではない。

 

一向に解決の気配を見せない待機児童問題も、大学の授業料が高騰したことで引き起こされた奨学金問題も、根本をたどれば政治につながる。「それを解決する財源なんてないだろ!」という意見も聞こえてきそうだが、国の財源を枯渇させたのも皮肉なことに政治だ。財政赤字の最大の要因は、1990年代から2000年代にかけて濫発した公共事業だ。その額、なんと630兆円。この公共事業がそのまま財政赤字となって国民を苦しめている。この630兆円がどれだけ国民のためになっただろう。「バブル崩壊後の国民を救うため」という名目で行われたようだが、実際は有力政治家の選挙基盤のために費消したにすぎない。一方、問題となっている社会保障費は年間10兆円。国の歳出の1割程度だ。

 

たしかに「それを解決する財源」はないかもしれない。それを解決するために税金をもっと払う必要があるのかもしれない。しかし、だからといって今までと同じように国に税金を納めてどんないいことがあるだろう。政治がどれだけ有効活用してくれるだろう。大村さんは本書でその問題提起をしているのだ。そのツールとして「逃税」を掲げているのだ。

 

国会は今、「森友問題」で大騒ぎをしている。しかしそんなヒマはない。早急に解決すべき問題が山積みだ。まさかそれらの解決方法が見当たらないから、わざわざ森友問題を取り上げて現実逃避をしている、なんてことはない……と信じたい。

 

納税は国民の義務だ。しかしこんな国に馬鹿正直に納税するのもどうだろう。こんな国だから、こんな時代だからこそ、逃税もまた国民の義務のように感じてしまう。

 

文=いのうえゆきひろ

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