「叱られ方研修」がネットで賛否両論! 上司が叱ることをやめられない理由と、部下の自衛策

人間関係

 

部下の「」なるものがあるそうです。個人的には、叱るという指導方法はNGで管理力研修をしっかりやったほうがいいと思うのですが……。ネット上では「上司が叱り方を知るべきでは?」という意見のほか「自衛の手段を知るのも大事」という意見も見られ話題になっています。残念な叱り方をする上司はなかなかいなくなりません。その背景と対処法について解説します。

 

 

■そもそも「叱る指導」は効果的なのか

 

望ましいことをした場合には報酬を与え、(結果として)悪いことをしてしまった場合には罰を与える。褒めと叱りで何かを学習させるというのは、昔からある指導方法の一つです。

 

結論からいうと、このような指導にもある程度の効果はあります。しかし叱る指導が人材育成としてどうかというのは別問題。上司が部下の指導に叱るという方法を用いるのは、むしろデメリットのほうが大きいと筆者は考えます。

 

エサと電気ショックを使って、マウスに道を学習させる有名な実験をご存知の方は多いと思います。正しい方向に行くとエサがもらえて、間違った方向に行くと電気ショックを与えられたマウスは、研究者たちの意図どおりに、どう振る舞えばいいのかを学習しました。

 

しかし、電気ショックを少し強めにして実験してみると……。マウスたちは道を覚えるどころか、うずくまったまま、正しい道を探すこと自体をやめてしまうこと、マウスたちの胃に潰瘍が認められたことが報告されています。叱りには効果がありますが、強すぎる叱責は逆効果です。

 

人間の世界でも、叱りと褒めで部下に無力感を学習させている上司はたくさんいると思います。「叱りの度合いが適切なら大丈夫」と思っているかも知れませんが、どの程度が適切なのかは受け手によるところが大きいので、調整は難しいでしょう。

 

 

■上司が叱ることをやめられない5つの理由

 

叱らなくても行動の改善を促す方法はたくさんあります。それなのになぜ上司は叱る指導をやめないのでしょうか。

 

理由1.自分もそうされてきたから

「自分もこうやって仕事を覚えてきたんだから」と叱る指導を安易に取り入れている人は多そうです。慣習どおりにやるのは楽です。叱る指導をすれば「自分も叱られながら仕事を覚えたのに」「なんで上司が部下に気遣いをしなければならないんだ」といった気持ちになることもありません。

 

理由2.教え方が下手だから

 「なんでできないんだ」とイラつく人ほど、教え方が下手なように思えてなりません。教え方が下手な人はたいてい想像力も貧困なので、相手の立場で考えるのは難しいことでしょう。いずれにしても自分の指導力不足を認めるよりも、相手の理解力不足と考えるほうが容易なことは間違いありません。

 

理由3.感情のコントロールができないから

様々な指導方法のなかから「叱る」という選択をしがちな人は、感情のコントロールが苦手なのかも知れません。叱る背景には怒りの気持ちだけでなく、残念、悲しいといった気持ちもあると思いますが、それをぶつけることは最善の解決法でしょうか。街中で子供を怒鳴りつけている親を見るにつけ「他の方法があるはずなのに」とせつなくなります。

 

理由4.役割を無意識に演じているから

監獄のセットを作り、看守役と囚人役を演じさせた有名な実験では、善良な人でも看守の役割を演じるうちに暴力的になってしまうことがわかりました。立場や役割などに期待されることを勝手に解釈し、無意識のうちに演じてしまう。これは私たちの日常でもよく見られる現象です。「上司なのだから多少厳しい指導をすることも大事」と思う人は要注意です。

 

理由5.叱っても正当化できるから

多少厳しく叱ってしまっても「本人のために言っている」と思えば罪悪感を抱かずに済みます。自分が悪役になって部下を育てていると装えば、周囲からの批判をかわすこともできるでしょう。

 

叱る指導は今後もしぶとく残りそうです。叱られ方を学ぶというのはナンセンスな気がしますが、自衛策として知っておく必要があるでしょう。

 

 

■自衛策としての叱られ方3選

 

消極的な方法ですが、現実として取り入れやすい方法を選んでみました。

 

1.予測しておく

ショックを事前に予想しておくことで、ストレスを軽減できるという研究があります。怒りやすい上司にあたってしまった場合「こういうときに怒鳴りそうだな」といった予測を立てておきましょう。叱られる新人時代を経て管理職になった先輩などを見て、将来へのよいイメージを持っておくのも有効です。

 

2.淡々と聞く

その場をやり過ごすために、落ち込んだ顔を見せることを推奨する人もいます。しかし相手が期待する反応をすることは、上司の「叱る」というコミュニケーションスタイルを強化してしまいます。今後の叱りに繋がること、職場の被害者を増やすリスクなども考慮すると、いわゆる叱られ上手を目指すのはよい方法とは言えません。

 

身体反応の心理面への影響も心配です。楽しそうに振舞っていると本当に楽しくなってしまうように、落ち込んだふりをすることで気持ちがふさぎこむことも心配です。叱られているときは、上司の期待する反応をするよりは、むしろ淡々と聞いたほうがよいでしょう。「ご指導ありがとうございました」「気がつくことができてよかったです」といった一言を付け加えれば、失礼になりません。

 

3.観察しておく

自分が叱られているときに客観的な視点を持つのは難しいかも知れません。その場合は、他の人を叱っている様子を見ておきましょう。「ないがしろにされた(気がする)」「ルールを守らない(ように見える)」など、上司の叱りスイッチがわかるようになると、予防しやすくなります。

 

 

■変わらない管理職の先にあるもの

 

筆者が企業研修の講師をするようになって10年以上が経ちました。担当するのは交渉やコミュニケーションの研修が主ですが、報連相研修、営業研修、管理職研修も行っています。管理職研修で痛感するのは、意識変革の難しさ。凝り固まったやり方を変えてもらうために、気づきを促す体験ゲームやワークを多数用意して臨んではいるものの、何割かの人たちは頑なにこれまでのやり方を通そうとします。

 

成果が出やすい新人研修などと違い、管理職研修では変わってもらうことに時間と労力がかかります。しかし不都合な現実を放置しておけば、私たちはいつかそのツケを支払うことになるでしょう。離職によって生じる採用コスト、教育コストはもちろんのこと、機会損失ははかり知れません。心ない上司のせいで、自分の力で仕事をまっとうできるか自信を持てなくなってしまう。そんな若者のポテンシャルを潰してしまうことが、少子高齢化社会にとってどれだけの損失になるのか。管理職のみなさんにはぜひ一度考えてほしいと思います。

 

叱るという指導は容易ですが、「簡潔にリクエストを伝える」「ルールの周知徹底をはかる」「褒める」といった方法でも、行動改善はできます。叱られる側の人には、人生で必ず必要になる「やり過ごす力」「立ち直る力」を育む機会として捉えていただければと思います。一日も早く、若い世代の人たちの活躍しやすい土壌ができることを願ってやみません。

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コミュニケーション研究家

藤田尚弓

All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...

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