レトロモビル2018リポート──過去と現在はますます近い存在に!

車・交通

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世界中にヒストリックカー・ミーティングは数あれど、パリという享楽と消費の都で催されるがゆえに、世界的なトレンドに一定の影響力をもイベント。それがレトロモビルだ。

 

 

 

■大衆車も高値傾向

 

今年のレトロモビルでは、元々ヒストリックカーとして安定して人気があった車種以外でも、ジリ高や値固めの方向に向かっていた。

 

以前はや50〜60年代のが数十億円単位の競売価格を更新し、ポルシェ911、DSやジャガーEタイプといったスター級の価格相場が高騰していた。そうしたクルマがオークションで高値を伸ばすことがなくなった代わりに、これまでそれほど人気や注目を集めなかったモデルにまで、高値相場が及び始めている。

 

シトロエンの展示車両。コンセルヴァトワールから来たオリジナルの個体だ。右端は戦前のプロトタイプ。

具体的には1.6リッターのGTi以外のプジョー205、シトロエン2CVやシトロエン・ロザリーのような戦前車など。今回は2万5000ユーロまで(約320万円まで)のクルマを集めたコーナーが設置されたが、フランス車の中でも大衆車扱いされていたクルマも値を上げ始めた。もはや旧いクルマの相場上昇は傑作名車とされるスポーツカーのようなスター級に留まらず、大量生産モデルにまで及んでいるのだ。

 

203と205が背中合わせに。いずれもフランスの大衆車だった。

なかでもシトロエン2CVは今年、市販モデルの登場から70周年という記念イヤーにあたったのでにぎわった。姉妹モデルで1968年登場のシトロエン・メアリも、50周年を祝うというダブル・アニバーサリーだ。

 

ほかにも記念イヤーを祝った車種としては、2CVと同じく1948年に登場して今年70周年を迎えたプジョー203、そして1968年登場で50周年のプジョー504。またメーカーに目を移せば、とも創業70周年を祝った。

 

さらに歴史の長いメーカーに目を移してみると、創業120周年を迎えたは、戦前車からル・マンを制覇したアルピーヌA442 Bまでを大規模に展開した。

 

70年代後半にターボ・テクノロジーでル・マンを席巻したA442B、A443らアルピーヌ勢。

 

■過去と未来を重ね合わせる

 

いずれにせよ言えるのは、記念イヤーを迎えたモデルは、今年デビューしたニューモデルの遠い祖先でもあり、「伝統と革新」や「歴史遺産と進行形の未来」といったキーワードで繋がりやすい。ニューモデルのプロモーションも当然、同時に兼ねているのだ。例えばプジョー504の場合は508IIという遠い子孫が今年デビューする。アライアンスを組む日産のリーフだけでなく、欧州ではゾエがEVとしてスマッシュヒットし、EVメーカーとしてのプレゼンスを強めているは、内燃機関の長い歴史とノウハウを、ターボ技術によるル・マン制覇とそのデモクラタイズというシナリオで締め括っているようにも見える。

 

現行モデルのプロモーションとの兼ね合いで、過去のモデルがブランド強化や正統化イメージというマーケティング・オペレーションに占める重要度は、ますます増している。大衆車モデルのジリ高と相場のコンソリデーションも、そうした流れを汲んでのこと。過去と現在は2018年の今、これまでにないほど近くなっているのだ。

 

1983年式ルノー30TX。ルノーで初めてV6エンジンをフロントに積む市販車だった。

一方で、ヒストリックカーとして純粋に価値を高め続けているジャンルもある。元より生産台数の少ない、血統正しいスポーツカーは、もはや景気の好悪に無関係なほどの、シュア・ヴァリューな世界といえる。

 

レトロモビルの公式オークショネアであるアールキュリアルの会場で、今回の目玉は、がまだ「ピニン・ファリーナ」と呼ばれていた頃に製作した、1958年型というごく初期のフェラーリ250GTカブリオレSr.1だった。

 

 

このは700万〜900万ユーロ(約9億〜11億円)という落札予想レンジが付けられていた。数年前の30〜50億円が連発されていた時代に比べたらずいぶんと落ち着いたようだが、何とこのフェラーリは落札者を見つけることができなかった。それでもオークション全体は盛況で、3181万606ユーロ(約400億円)もの落札合計額を叩き出した。この出来高に貢献しているのは、もはや3000万円近くが当たり前になったジャガーEタイプのシリーズ1、2000万円超えが順当なナロー・などの手堅い車種だけではない。

 

900万円以上で競り落とされたE30のや、600万円近い値を付けた1993年型クリオ・ウィリアムズなど、いわゆるヤングタイマーたちだ。ヒストリックカーの相場はかくして、デモクラタイズによる底上げと下値の切り上げが顕著に始まっているのだ。

 

そして今、ヤングタイマー界のライジング・スターといえるモデルは、初代だろう。SUVがこれだけ流行した今、英国王室ご用達という優雅なヒストリーと正統性は、省みられて高く評価され始めている。過去と現在は、必ずセットで、密接に影響しあうものであることを、レトロモビルは示し続けてくれる。

 

(文・南陽一浩 編集・iconic)

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