【今週の大人センテンス】群馬県下仁田町の明るい自虐PRムービーがスゴい!

話題

 

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第1回 明るい自虐こそが魅力を感じてもらう近道である

 

「見渡せば岩と山と取り残されたような街並み♪」by群馬県下仁田町

 

【センテンスの生い立ち】

群馬県下仁田町が制作した移住定住促進PRムービーの主題歌の一節。2015年12月15日に3本セットで公開された。以来、自虐的な歌詞が評判を呼んで徐々に人気が広がっていたが、3月21日に「YAHOO!」のトップページで紹介されて一気に注目度がアップ!

 

【3つの大人ポイント】

・いいところばかりを強調せず、町のありのままの姿を映し出している

・少々の批判や異論はしょうがないと腹を括っている

・自虐を織り交ぜることで興味を引き、結果的に魅力を伝えている

 

いつの頃からか私たちは、テレビ番組とか動画とかネットのコラムといったいろんなコンテンツに対して、頼まれてもいないのに「これは苦情とか来るんじゃないの……」「ちょっとマズいんじゃないの……」と心配する癖がついてしまいました。

 

ひじょうに残念な癖だし、たとえ自分が苦情を寄せなくても、そういう発想がめぐりめぐって世の中を窮屈にしている節はあるかもしれません。今日もネット上では「関係ないくせに文句をつけたがる人たち」が、いろんなネタを探しては攻撃を繰り返しています。

 

そんなうっとうしい風潮に一石を投じるべく、群馬県下仁田町が果敢なPRムービーを制作しました。いや、下仁田町は一石を投じるつもりなんかこれっぽっちもなくて、移住定住を促進すべく町のよさを広く知ってもらおうという趣旨で作られた動画です。

 

群馬県下仁田町移住定住PRムービー

 

名物である下仁田ネギの畑や商店街、学校、駅など、いろんな風景の中で町の人たちが楽しそうに踊っています。バックに流れているのが「オー・下仁田」(作詞・作曲:mashabannana、Vocal:あつし)。親しみやすいメロディに乗せて「歩いても人もまばらで」「ネギとかコンニャクばっかり有名で」「見渡せば岩と山と取り残されたような街並み」「オー何もない町」など、自虐的な歌詞が伸びのある男性の声でさわやかに歌われます。

 

「文句つけたい症候群」の人たちは、この歌を聞いたらたちまち食指が動くでしょう。「町のイメージダウンになるのでは?」など、文句のつけ方はいろいろあります。症候群の人たちの中でもとくに卑怯なタイプは、「町の人の中には不愉快に感じる人もいるんじゃないでしょうか」といった超大きなお世話の文句のつけ方をしてくるかもしれません。

 

しかし、この歌と動画には、そんなつまらないイチャモンをあっさり跳ね返してしまうパワーと迫力があります。町のいいところを強調したよくあるタイプのPR動画に、うっかり迂闊なセンテンスが混じっていたら、たちまち炎上していたでしょう。その点、この動画は町のありのままの姿を知ってもらって、そういうところもまた大きな魅力なんだと胸を張って言いきっています。仮に町の人の一部から「これはちょっと……」という声が出たとしても、「大丈夫、これでいいんです!」と押し切る強い覚悟が感じられます。

 

大人かくあるべし。自分のことにせよ自分が好きな何かにせよ、よさをアピールしたいんだったら、自虐を織り交ぜて語るぐらいの工夫や余裕がないと誰も聞いてくれません。無駄に波風を立てる必要はありませんが、批判や異論を恐れすぎないことも大切です。

 

明るく適度な自虐は大人のたしなみ。アピール上手になれるだけでなく、いつでも自虐OKな姿勢でいたら、他人の目や過剰な自意識にビクビクする必要もなくなります。肩の力を抜いて毎日を楽な気持ちで過ごせるようになるし、周囲に「とっつきやすい人」という印象も与えられるでしょう。ただ、暗くて過剰な自虐は周囲も自分も辛くなるだけですが。

 

群馬県下仁田町の移住定住PRムービーは、上記の「人と町の風景」のほかにもとがあります。歌を口ずさめるぐらい何度も見て、自虐の効能や素晴らしさをたっぷり感じましょう。もちろん、下仁田町の素晴らしさもたっぷり感じて、ぜひ移住の候補地に!(←ネタにさせてもらったせめてものお礼です。姑息ですいません……という自虐)

 

【今週の大人の教訓 】

明るく適度な自虐は周囲にも自分にも幸せをもたらす

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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