北陸新幹線開業1周年、激変した金沢の複雑な思い

ビジネス

吉田 薫

 

2016年3月14日、北陸新幹線は開業1周年を迎えました。JR西日本によれば、年間利用者数は延べ925万8000人(上越妙高-糸魚川間)で開業前の在来線特急に比べて約3倍に達し、当初の予想(2.2倍)を遥かに上回る結果に。

 

金沢駅の1日当たりの乗車人数(自動改札機利用者のみ)も8600人と想定以上の伸びを見せました。もちろん、それに伴い観光客も急増。利便性が高まった首都圏からだけでなく、北陸ブームに乗って関西方面からも大勢の旅行者が訪れ、昨年石川県を訪れた観光客は前年比16%増の2515万人、金沢は同19%増の1006万人で過去最多を記録。

 

金沢市内の各観光スポットの訪問者数も軒並み増え、開業後1年間の入園者数が前年同期比1.56倍の308万5307人の兼六園を筆頭に、金沢21世紀美術館やひがし茶屋街、近江町市場といった人気スポットは平日でも多くの旅行者で賑わうようになりました。

 

他方、想定を超えた観光客の波が押し寄せたことで様々な問題が噴出。開業前は閑散としていた商店街に活気が戻った一方で、常に混んでいることにより市民生活への影響が出始めています。

 

 

■まちなかの賑わい創出の一方で、住民を悩ます深刻な混雑問題

 

金沢は地方都市です。東京や大阪などの大都市や世界中から旅行者が訪れる京都と違い、混雑に慣れていません。新幹線開業前は混雑すると言えばGWや大きなイベント時、年末など特別な場合に限られ、それ以外はのんびりとしたものでしたが、開業以来、人・人・人で溢れかえるように。

 

ひがし茶屋街では朝早くから夕暮れまで観光客が絶えず、周辺住民が出かける際に車の出入りに時間がかかったり、騒音にも悩まされるようになって静かな環境が一変し、近江町市場に至っては新幹線開業後、来場者数は平日で3割増の1万6000人、土日で5割増の2万5000人以上に急増した結果、地元客がゆっくり買い物できなくなり、地元客離れが起きています。

 

近江町市場を訪れる観光客は鮮魚や海鮮丼、寿司などの飲食店が目当て。地元客相手の日用食料品店や青果店にとっては新幹線開業は逆に大きな痛手となり、売り上げが開業前の半分に激減した店も。

 

地元客を呼び戻そうと昨夏当たりから地元客との意見交換会を開いたり、買い物券を発行したりしていますが、根本的な解決には程遠く、このままでは金沢市民の台所とは名ばかりになってしまうこと必至です。

 

 

■金沢のホテル代が高騰と新たなホテル建設問題も

 

さらに新幹線開業は観光客の増加と共に全国規模の学会やスポーツイベントが金沢で開催されるようになり、金沢のホテル価格が高騰。宿泊施設の中には通常の数倍という強気を通り越して最早異常とも言える価格で販売しているところもあり、このままでは金沢全体のイメージダウンに繋がりかねません。

 

新幹線開業効果で宿泊施設は格段に増えているのですが、それを上回る人が訪れているのが実情で、それならどんどん新しくホテルを建設すればいいかというと、ホテルスタッフ不足や、新幹線効果が落ち着いたら今度はホテルが余ってしまうという危惧があり、そう簡単にはいかないのが悩ましいところです。

 

 

■北陸ブームはいつまで続く? 今後の動向は…

 

2年目である2016年は北海道新幹線開業があり、地元では北陸ブームが下火になるのではとの危機感が強いものの、宿泊予約サイト「楽天トラベル」の春(3月1日~4月28日)の旅行先で福井が1位で7位に富山、8位に石川とトップ10に北陸3県が入り、今のところは好調を維持しています。しかし新幹線効果を持続させるためには、さらなる北陸全体の広域観光の推進がカギになるでしょう。

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吉田 薫

祖母の時代から生粋の金沢人。大学卒業後に上京し、様々な業種・職種を経験。2度のイギリス留学を経て故郷に舞い戻り、フリーランスのライターとして活動開始。“旅”と“食”に目がない超甘党...

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