【今週の大人センテンス】「病気の陰に隠れない」と決意した小林麻央の強さ

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出典:小林麻央のオフィシャルブログ KOKORO.

 

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

 

第23回 彼女のブログから私たちは何を受け取るか

 

「ブログという手段で 陰に隠れているそんな自分とお別れしようと決めました。」by小林麻央

 

 

【センテンスの生い立ち】

2016年6月、歌舞伎俳優の市川海老蔵が会見を開いて、妻でフリーアナウンサーの小林麻央が、1年8ヵ月前から「乳がん」で闘病中であることを公表した。9月1日、彼女は新しいブログをスタート。「なりたい自分になる」とタイトルがつけられた最初のエントリーには、ブログを始めるきっかけになったお医者さんの言葉や、どういう気持ちで闘病生活を送ってきたか、そして、これからに向けての決意が率直な言葉で綴られている。

 

【3つの大人ポイント】

・病気を受け止めつつ、人生を前向きに生きようとしている

・同じ状況の人だけでなく、読む人すべてが考えさせられる

・家族が支え合っている様子が、ひしひしと伝わってくる

 

 

「比較的、深刻です」という市川海老蔵の言葉は、聞く人に大きな驚きを与えました。6月9日に行なわれた記者会見でのことです。この日、海老蔵は妻の小林麻央が「乳がん」であると公表しました。「かなりスピードの早いことでなかなか大変だとお医者さんからご意見をいただいている」とも。公表に踏み切ったのは、一部のスポーツ紙が小林について、「進行性がんを患い、治療を続けている」と報じたことがきっかけだと言われています。

 

それから約3ヵ月後の8月31日、市川海老蔵のブログ「」に「」というタイトルの投稿がアップされました。そこには「聞いた時、私としては晴天の霹靂、目から鱗でした」「明日 自分の言葉で伝えるべきことがあるようです」という意味深な言葉が。ネットなどのニュースにもなって注目が集まる中、9月1日12時12分に「」がスタートしました。

 

「小林麻央です。」で始まる最初の投稿のタイトルは「」。そこには、病気と闘う彼女の強い決意が綴られていました。一部を抜粋します。

 

素晴らしい先生との出会いに/心を動かされました。/その先生に言われたのです。/「癌の陰に隠れないで」/時間の経過とともに、/癌患者というアイデンティティーが/私の心や生活を大きく/支配してしまっていたことに/気がつきました。

 


元気になったら/元の自分や生活に戻れるのだから/それまでは、/誰にも知らせず、心配をかけず、/見つからず、、、と思ってきました。

 

乳がんであることが突然公になり、/環境はぐるぐる動き出しました。
そこで、/これまで以上に病気の陰に隠れようとして/心や生活をさらに/小さく狭いものにしてしまいました。/これは自分自身のせいです。

 

私は/力強く人生を歩んだ女性でありたいから/子供たちにとって強い母でありたいから/ブログという手段で/陰に隠れているそんな自分とお別れしようと決めました。

 

がんという重い病気に罹ったことがどれだけショックなのか、闘病生活がどれだけつらくて、どんな気持ちで日々を過ごしているのか、それは本人以外にはわかりません。「癌の陰に隠れない」と決意するまでには、たくさんの苦しみや葛藤があったことでしょう。にもかかわらず、「力強く人生を歩んだ女性でありたい」「子供たちにとって強い母でありたい」という思いに突き動かされて、彼女は行動を起こしました。

 

ブログがスタートした翌日には「」というタイトルで、抗がん剤で髪が抜けてしまった頭に金髪のかつらをかぶった自撮り写真をアップ。写真を送ったとき、家族は「おー、いいね! いい感じー!」とホメてくれたそうですが、本人は「!!き、き、きんぱつー!?」と驚いてほしかったとか。つらい状況でも明るく過ごそうとする姿勢や、家族が彼女をあたたかく支えようとしている様子が伝わってきます。

 

病気を受け止めつつ、病気と闘う強い気持ちを持って、人生を前向きに生きようとする彼女の姿は、ブログの読者に勇気や励ましを与えるでしょう。励まされるのは、同じように病気に苦しんでいる人たちだけではないはず。今は健康で毎日を過ごしている人も同じです。人間は誰しも、病気や老いからは逃れられません。病気だけでなく、思いがけない悲劇に見舞われたり自分ではどうしようもない状況に陥ったりすることもあります。

 

そんなときに、不運を呪ったり現状を嘆いたりしても何も始まりません。原因の究明や、誰か「悪いやつ」がいるなら落とし前を付けさせることも必要ですが、それらはあくまで「前に進むためのステップ」。彼女が強い決意で書いてくれているブログからは、どんなことがあっても、しっかり立ち上がって「なりたい自分」を目指して歩き出す美しさ、現状からスタートするしかないと覚悟を決める大切さを学ぶことができます。

 

前日に自らのブログで「まおのきもち」を伝えた夫の海老蔵だけでなく、姉で現在は仕事を休養している小林麻耶も、妹のブログがたくさんの人に読まれるようにアシストしています。9月1日の午後「」に久しぶりに投稿し、休養していることのお詫びなどを述べつつ、「PS.妹がブログ始めました。ぜひ、アクセスしていただけたら嬉しいです」と書きました。夫も姉もそれぞれのやり方で、病気と闘いながら前向きに生きようとしている家族を応援している様子が伝わってきます。

 

友達でも知り合いでもない私たちが、「病気と闘っている有名人」にどういう視線を向けるかは、けっこう難しい問題。応援する気持ちを抱くのは、たぶん許される範囲でしょう。しかし、「かわいそう」と同情して、同情している自分に気持ちよく酔ってしまうのはどうなのか。また、ちょっと油断すると、皮肉な見方や下衆な詮索をしてしまいがち。そういう“消費”のされ方をするのも有名人の宿命かもしれませんけど、それを楽しいと思うような人間が、はたして「なりたい自分」だったのかどうかは考えたいところです。

 

小林麻央さんは、つらくて苦しい毎日の中で、自分に伝えられることを伝えようとしてくれています。私たちとしては、そんな彼女の言葉からたくさんのことを学び、たくさんの勇気や感動を受け取って、今日や明日を充実させるきっかけにさせてもらいましょう。それが、結局のところは興味本位で見守っている傍観者である私たちが、彼女に対してできるせいいっぱいの恩返しであり、大人としての誠実で謙虚な態度に他なりません。

 

 

【今週の大人の教訓】

「一般人であることの陰に隠れる」という落とし穴に気を付けたい

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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