【北欧からのぞくニッポン】東京五輪のボランティア“タダ働き”、スウェーデンじゃ絶対に許されないワケ

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2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、大会組織委員会がボランティアを募集しはじめました。これがネットで「やりがい搾取だ」と批判されています。というのも、ユニフォーム、活動中の飲食、ボランティア保険を除く、たとえば宿泊費や交通費は“負担しない”と明言していたからです。

 

4年に1度の祭典がタダ働きに支えられている、となれば、世界中に恥をさらすことになりかねません。私の住むスウェーデンも冬季五輪の誘致活動に力を入れていますが、スウェーデンはここまでボランティア頼りの運営計画を立てるでしょうか。シミュレーションしてみました。

 

 

■タダ働きは嫌いだけどボランティアは好き

 

絶対にタダ働きしないスウェーデン人。定時退社は当たり前で、仕事とプライベートをしっかり分けます。それなら、ボランティアとの相性も最悪なのでは……と思いきや、答えは「ノー」。国内のボランティアサイトによると、実に国民の二人に一人が何らかのボランティア活動に携わった経験があるそうです。

 

「自分の意志で労働力と時間を無償提供すること」。これが、スウェーデンにおけるボランティア活動の定義です。多くの場合、NPOや赤十字などの非営利団体を通じて行われます。基本的に無償ですが、給与が支払われる国外(発展途上国など)での活動もその一つとみなされます。

 

最もポピュラーなのはスポーツ系で、自分の子どもが通うスポーツクラブや地域のクラブでのボランティア活動。次いで多いのが、難民や移民への奉仕活動を含む社会活動。毎年相当な数流れ込む難民・移民の衣食住を、多くの人が善意でサポートしています。スウェーデンらしいボランティアといえば、交通事故でケガを負ったヘラジカなど野生動物の保護、ボートの高い所有率を背景とした海難・水難事故の被害者救助などでしょうか。

 

 

■スウェーデン人はなぜボランティアするのか

 

個人意識の高いスウェーデン人は、ボランティア活動についても「自分の意志で参加できるか、その活動でどう社会に影響を与えられるか」を重視します。また、運営委員会の人選も参加者たちが決めます。こうしたところから、スウェーデン人独特の強い民主主義的な価値観を感じ取れます。

 

以上を踏まえて冒頭の課題に戻れば、東京五輪大会組織委員会の半強制的な募集方法は、たとえスウェーデンでも大きな反発が予想されます。もちろん、応募者も少ないでしょう。おまけに、「中高生まで組織的に借り出す」など「絶対に許されない」でしょう。なんというか、焦りがにじみ出ていますね。

 

  • 参加する意味を明確にし、
  • 強制せず協力を促す

 

これこそ、スウェーデン式と言えるでしょう。

 

 

■日本人は労働力を「軽視」している

 

あくまで推測ですが、もしスウェーデンでボランティアが必要となった場合は、まず国内に20万ほどあるとされる多種多様な団体・協会に活動内容と目的が周知されるでしょう。そこから、運営側は参加協力可能な人数を割り出し、ボランティアが集まらなかった場合の予算もつけ、計画を進めるでしょう。

 

五輪なら大量のボランティアが集まるだろう、学生も半強制的に参加させようという発想に、良い意味でも悪い意味でも日本人の“ナイーブさ”、労働力の軽視を感じずにはいられません。「やりがい搾取」という言葉とともにボランティアする側の労働・時間意識がクローズアップされたことは、きっと日本の“働き方改革”に良いインパクトをもたらすでしょう。

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サリネンれい子

観光・情報ライター。スウェーデンに住んでいるからこそわかる、スウェーデンの旬な情報をお伝えします。デザインやアートから教育、福祉まで幅広いジャンルの情報を伝えるべく、日々精進する毎日。

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