【中年名車図鑑】“面白4WD”として登場したアウトドア志向の新ジャンル

車・交通

大貫直次郎

1970年代に入って本格ブームの様相を呈し始めた日本人のアウトドアレジャーは、移動手段の核となるクルマの特性にも波及し、一部のユーザーからは荷物の積載性や不整地の走破力などが重視されるようになる。その対応策として、トヨタ自動車は新しい多目的車を鋭意企画した――。今回は多目的4WDワゴンという新ジャンルを確立した1982年デビューの初代スプリンター・カリブで一席。

 

 

【Vol.67 トヨタ 初代スプリンター・カリブ】


厳しい排出ガス規制やオイルショックの混乱を乗り切った日本の自動車メーカーは、来るべき80年代に向けて新型車の開発を急ピッチで推し進めるようになる。なかでもトヨタ自動車は積極的で、既存車のフルモデルチェンジに加えて新ジャンルのクルマの開発を相次いで手がけ始めた。その代表格が1981年2月にデビューした大型スペシャルティカーのソアラと、ここでピックアップするスプリンター・カリブだ。


トヨタはまず、1981年10月開催の第24回東京モーターショーで多目的4WD車の「RV-5」を参考出品する。本格ブームの様相を呈し始めていたアウトドアレジャーに対処することを目的に開発したRV-5は、乗用車のプラットフォームをベースとしたハイトなワゴンボディに広いガラスエリア、そして不整地での走破性に優れる4WD機構を採用していた。キャッチフレーズは“ニュー・アクティブ・ビークル”。アウトドアに向かう足として活発に使えることを声高にアピールしていた。ブースを訪れた来場者の評判は非常によく、トヨタのスタッフはこの種のクルマを志向する潜在ユーザーの存在を確信する。そして、RV-5の市販化に向けたゴー・サインは、すぐさま発せられた。

 

 

■創意工夫の多目的4WDワゴンの企画

 

コストダウンのため“ターコル”のエンジンを使い、リア懸架にはスプリンター系のユニットを用いた


多目的4WDワゴンの開発に当たり、開発陣が最も苦心したのは従来コンポーネントの流用だった。この種のクルマは、あくまでアウトドアレジャーの脇役。車両価格を高くしてしまうと、ユーザーにそっぽを向かれる危険性がある。そのため既存のパーツを可能な限り使用して、コストを下げる必要があった。


搭載エンジンについては、2代目ターセル/コルサ系の“レーザー3A-Ⅱ”3A-U(Ⅱ)型1452cc直列4気筒OHCユニット(83ps/12.0kg・m)の流用を決断する。4WD化する際に、縦置きエンジンの方がメリットが大きいからだ。トランスミッションには5速MTを専用セッティングで組み合わせる。一方、4WDの機構自体は新開発品で、FFと4WDを走行中に切り替えることができた。さらに、副変速機を持たない代わりに非常時用のエクストラローギアを設定する。流用パーツはターセル/コルサ系だけではない。リア懸架には4代目カローラ/スプリンター系の4リンクを用い、これをベースにパナールロッドを加えた専用サスペンションを導入した。荷物を満載しても、安定した走行が得られるように配慮した結果だ。

 

 

■“トヨタから面白4WD誕生”のキャッチで市場デビュー

 

高いルーフと大型のクォーターガラスで室内は開放感にあふれていた


1982年8月、“トヨタから面白4WD誕生”という宣伝文句とともに、RV-5の市販版となる「スプリンター・カリブ」がデビューする。スプリンターの名を冠してはいたが、多くのコンポーネントがAL25型系ターセル/コルサの流用で、型式もスプリンターのE70型系ではなくAL25G型を付けていた。また、車名のカリブ(CARIB)はアメリカトナカイのCARIBOUに由来。山岳や大雪原を疾駆するアメリカトナカイの力強く躍動感あふれるイメージを象徴する。車種展開は実用性重視のAV-Ⅰとレジャー志向のAV-Ⅱという2グレードで構成した。


市場に放たれたカリブのスタイリングは異彩を放っていた。高い屋根に大型のクォーターガラス、170mmと高くとった最低地上高、ナンバープレート部をオフセットしたテールゲート、縦長にアレンジしたリアコンビネーションランプなど、既存のワゴンとは一線を画すデザインが注目を集める。ボディサイズは全長4175~4310×全幅1615×全高1500mm/ホイールベース2430mmに設定。AV-Ⅱには超幅広モールやホワイトスチールホイール、ツートンのボディカラーなどを採用した。室内に目を移すと、FWDと4WDの専用切り替えレバー、左上に赤字でEL(エクストラロー)と刻んだシフトノブ、車体の傾斜を示すクライノメーター等がクルマの性格を主張する。フルフラットにできる前席、高さ方向に余裕のあるラゲッジルームもユーザーから好評を博した。

 

 

フルフラットにできる前席と後席をつなげると広大な空間が広がる。ラゲッジ容量も十分だ


走行面も多目的ワゴンにふさわしい出来栄えだった。動力性能は必要十分というレベルに終始したが、トラクション性能はすこぶる高く、河原の砂利道なども難なく走破する。改良したリアサスのおかげで、荷物を満載しても走行安定性に不満を感じることはなかった。さらに余裕のある室内高が、乗員の開放感のアップにつながっていた。


1983年10月になると、イージードライブを望むユーザーに向けて3速ATモデルを設定。同時に、AV-ⅡとⅠの中間に位置するRVスペシャルをラインアップする。1984年8月にはマイナーチェンジを行い、内外装の一部変更やエンジンの出力アップ(85ps)、AV-Ⅱ・MT車の3A-SU型エンジン(90ps)への換装などを実施。1986年5月には再度のマイナーチェンジを敢行し、AV-Ⅱツーリングスペシャルに電子制御サスペンションシステムのTEMSを搭載した。


当時はハイテク満載のスポーツモデルに注目が集まる傾向があり、スプリンター・カリブのコンセプトは決して主流にはならなかった。しかし、アウトドア志向のファンからは絶大な支持を集め、やがて追随車を生むほどの定番モデルに発展する。結果的に国産4WDハイトワゴン、後のクロスオーバーSUVの隆盛は、このスプリンター・カリブが先駆けの1台となったのだ。

 

 

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大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バ...

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