“同士討ち”で全滅…ひと悶着あったF1チームの行く末とは

車・交通

 

またも同士討ちが発生した。4月29日のF1第4戦アゼルバイジャンGP(51周)で、レッドブルのダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペンが同士討ちし、双方リタイヤした。同じ道具(車両)を使っているのだから、近い位置で走ることになるのは必然である。チームメイト同士が前後して走るシーンはレッドブルに限らず、珍しくない。ドライバーの力量も近いということなのだろう、リカルドとフェルスタッペンはしばしば接近戦を演じる。


異なるチームのドライバー同士が接近戦を演じるなら、ひいきのドライバー、あるいはひいきのチームに肩入れすればいい。ところが、争っているのがチームメイト同士だと複雑だ。とくに所属チームにとっては。


リカルドとフェルスタッペンはスタート直後から一触即発のムードを漂わせていた。6周目、セーフティカー走行が解除された直後のターン2で、5番手を走るフェルスタッペンが前を行くリカルドを追い抜いた。アゼルバイジャンGPは市街地コースで行うためコースの外側にランオフエリアがなく、すぐに壁である。ほんの少しの間違いが起きれば大きなクラッシュにつながりやすく、オーバーテイクシーンはどれもスリリングだ。


タイヤ同士がちょっと当たったものの、6周目の追い抜き劇は事なきを得た。その7周後、今度はリカルドがフェルスタッペンの前に出ようとターン1で追い抜きを仕掛けた。ところがフェルスタッペンは素直に道を空けず、サイド・バイ・サイドになってコーナーに進入。白煙がパッと上がったのはお互いのタイヤとタイヤが接触したからだ。最終的にはフェルスタッペンの勝ちで、リカルドの追い抜きを許さなかった。

 

4月29日のF1第4戦アゼルバイジャンGPでフェルスタッペン(左)とリカルド(右)が同士討ち。2台ともリタイアした


27周目、リカルドはメインストレートで今度こそフェルスタッペンを追い抜き、前に出た。だが、ターン2で抜き返され元のポジションに戻る。リカルドは35周目にターン1で追い抜きを試み、今度は成功させてフェルスタッペンの前に出た。37周目にリカルドがピットストップを行ってタイヤを交換。38周目にはフェルスタッペンがタイヤ交換のピットストップを済ませてコースに戻った。すると、リカルドの前だった。


リカルドにすれば、「コース上でせっかく抜いたのに」という気分だったろう。その2周後のホームストレートで、リカルドはフェルスタッペンのスリップストリームに入った。誰の目にも「仕留めた」のは明らかだった。


リカルドは右側から追い抜こうとマシンをわずかに振ったが、フェルスタッペンは抵抗の意思を見せるかのように右側に進路を変えた。ならば今度は左だと、リカルドはステアリングを左に切った。「防御のための進路変更は1回まで」という不文律があり、実際2016年まで「進路変更を2回行うことは禁止」されていた。ところが2017年以降は、問題となった動きを個別に判断するルールになっている。


しつこく進路変更を行った結果としてリカルドに追突されリタイヤすることになったのだから、フェルスタッペンは自らの判断を悔やむ理由はある。一方、追突してレースを終えることになったリカルドにすれば、「おいおい、こっちはもう鼻先を突っ込むところだったんだから、出てくるなよぉ」という気持ちだったに違いない。あのタイミングで進路変更をされたら、なす術がない(ように見えた)。

 

 

■彼らはお互いに「リスペクト」していたのか?

 

レッドブルは伝統的にチームメイト同士を自由に戦わせてきた


アゼルバイジャンGPでの一件に関してはふたりのドライバーに「訓告」の処分が下った。「だめじゃないか。以後気をつけるように」といったニュアンスだ。どちらか一方のドライバーがリタイヤし、一方が生き残っていたら、違う判断が下ったかもしれない。喧嘩両成敗といったところだろう。確かにフェルスタッペンは2回進路変更を行ったが、「どちらも比較的マイナー」だと競技審査会は判断した。一方、左に避けたリカルドに対しては「判断が遅すぎた」と判断した。避けられた追突と判断したわけだ。


いずれにしても、チームとしては頭を抱えるしかない。なにしろ、4番手と5番手を走るドライバーを、あろうことか同士討ちで一気に失ったのだから。F1はドライバー同士の戦いと並行してチーム同士の戦いも行っている。シーズン終了時のランキングなどに応じてテレビ放映権料などを元にした分配金が二ケタの億単位(円)でチームの懐に入ってくる。ひとつ順位が変わると億単位で金額が変わることを考えると、何ごともなく走っていれば手に入ったはずの22ポイントを失ったのは痛手だ。


2011年以降はチームからドライバーに、チームメイト同士の順位の入れ替えや、チームメイトに対する追い抜きの禁止などを指示する「チームオーダー」が合法になった。だから、倫理的にはどうかは別にして、レッドブルはリカルドあるいはフェルスタッペンに対し、「仕掛けるな」とか「○○を前に行かせろ」と指示することはできる。だが、このチームは伝統的に、チームメイト同士を自由に戦わせてきた。


「レースはしてもいいが、お互いをリスペクトし、スペースを残すこと」が条件だ。果たしてリスペクトはあっただろうか。レッドブルの同士討ちといえば2010年のトルコGPで、2番手のセバスチャン・ベッテルがトップを走るマーク・ウェバーを追い抜こうとして接触したシーンを思い出す(ベッテルはリタイヤ。ウェバーは順位を落とし3位)。2016年のスペインGPでは、最前列からスタートしたメルセデスの2 台がスタート直後に絡んで消えた(フェルスタッペンが初優勝したレースだ)。


ひと悶着あったチームメイト同士が長続きしないことは、歴史が証明している。果たして、リカルドとフェルスタッペンはどうなることやら……。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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