「空港にいるオレ」をSNSで投稿するおじさんの心理

人間関係

 

「行ってきます」「しばらく東京を離れます」「これからどこへ行くでしょう」など、空港での写真をSNSにポストしてしまうエアポートおじさんがウザいと話題になっています。

 

空港の写真をアップしてしまうのは、40代男性が多いそうです。SNSをやっているおじさんは、なぜ空港の写真をアップしたがるのでしょうか。そしてなぜ、こんなにも若い女性からウザがられてしまうのでしょうか。その心理について、コミュニケーションの観点から考察してみました。

 

 

■そもそもなぜ「自分の行動」を投稿してしまうのか

 

エアポートおじさんだけでなく、私たちはわざわざ時間やエネルギーを作って自分の行動を投稿しています。なぜ、そんなことをするのか。コミュニケーションの“自己開示”という切り口から考えてみます。

 

【つい行動を投稿してしまう5つの理由】

1. 感情表出が心地よさをもたらすから

こんなことがあって嬉しい、辛い……人に見てもらうことでより嬉しくなる、辛いことを発信することで楽になるといった効果がある

 

2. 自分の考えがハッキリするから

曖昧なことも、言葉にして発信したり、質問されたりするうちに明確になる。備忘録的に使っている場合も、自分の好みやパターンを自覚できる

 

3. 他者の反応がわかるから

自分の考えはあくまで主観だが、発信していいね!やコメントをもらうことで社会的な評価がわかる

 

4. 人間関係の維持促進が期待できるから

実際に会わなくともSNSでやりとりすることは人間関係を維持する効果が期待できる。自分について知ってもらうことで、関係性を促進する効果も

 

5. 印象をコントロールできるから

投稿によって「こう見られたい」といった、他者からみた印象をコントロールできるから

 

自己開示といった切り口から見ただけでもこれだけのメリットがあります。これらに加えて「かまって欲求」や「承認欲求」なども満たされるわけですから、自分の行動を投稿する人は今後もいなくならないと思われます。

 

 

■「飛行機乗るよ!おじさん」が無邪気に投稿する理由

 

対人コミュニケーションとSNSなどコンピュータを介したコミュニケーションでは相違点が数多くあり、メリット・デメリットも異なると言われています。そのひとつに、SNSでは実際に会って話す場合と比べて、対人不安が低減するということがあります。本名、顔出しでやっているフェイスブックなどのSNSであっても、コンピュータを介したコミュニケーションです。その場合、どんな自分を見せたいかをコントロールすることができ、相手に受容されやすくなります。

 

文字によるコミュニケーションでは公的自覚状態が低くなる、身体的魅力についての懸念が減るといった研究もあります。平たく言うと、いい歳になり、立場的にも外見的にもおじさんであっても、SNSならどう受け取られるかという不安を抱くことなく発信できるといったところでしょうか。空港の掲示板などを意味なく発信してしまう背景には、こういったSNSコミュニケーションの魔力があるのです。ぜひ今より少しだけ生温かい目で、エアポートおじさんを見てあげてください。

 

 

■嫌悪感を抱く人もいれば、気にならない人もいる

 

恥ずかしながら、筆者も空港投稿をしてしまう側──つまり「ウザい」という気持ちがよくわからない側です。そこでこの機会を利用し、なぜ嫌悪感を抱くのかヒアリングをしてみました。印象的な回答をいくつかご紹介します。

 

  • 旅先の写真や料理などは見ていて楽しかったり、情報になったりするが、空港投稿は意味が不明
  • ラウンジやビジネスクラスを、そんなに自慢したいかという感じ
  • 仕事できるアピールなのかと思うと、うすら寒くなる。本当に出張が多い人はわざわざ空港投稿などしない

 

なるほど、こういう感じ方をする人たちもいるわけですね。筆者の空港ポストで不快になったお友達の皆様、この場を借りて謝らせてください。ごめんなさい。投稿する側とすれば「いつも飛行機に乗っています、すごいでしょ」というよりは、ちょっとした非日常だからこそのポストなのですが、それをアピールだと感じる人がいるというのも、客観的に考えると納得です。

 

いわゆるエアポートおじさんの中には「俺様は有能!」とアピールしがちな、自己宣伝欲求が強い人もいるでしょう。「出張多いんだぜ!」といった、一種の選民意識を持っている人もいることでしょう。たしかに嫌な感じですよね。

 

しかしその一方で、空港投稿に過剰反応する人たちの心理にも興味があります。

 

筆者は空港ポストをやっていたくらいなので、そんな投稿を見ても何も感じませんし、ラウンジやビジネスクラスの投稿に至っては、エアラインを選ぶときの参考にもなるのでありがたく感じています。(ときどき青系のビジネスはいいなとモヤモヤします)

 

空港への投稿に嫌悪感情を抱かない人も多いと思うのですが皆さんはいかがでしょうか。

 

 

■モヤモヤの正体は「自己宣伝への嫌悪感と妬み感情」

 

エアポートおじさんに過剰に反応してしまう背景にはどんな心理があるのでしょうか。まず仮説として浮かんだのは「空港にいる俺! デキる男でしょ」といった、自分を有能に見せたい欲求が透けて見えて、そこに嫌気がさすというもの。いますね、そういう男性。でも、こう感じた人は、自分も周囲から良く見られたい気持ちが強いタイプかも知れません。気持ちがわかるだけに、自己嫌悪に似た感情を抱いてしまうというのはよくあることです。

 

次に考えた仮説は、妬み感情。自分でも気がつかない感情が「ウザい」という反応に繋がるのかも知れないと考えました。自分では気がつかない妬み感情に気づくためには、妬みがおきやすい状況を知っておくといいでしょう。

 

【妬み感情がおきやすい3つの状況】

  1. 自分にとって重要な領域で他者が優れているとき
  2. 優れている人が自分と似ているとき
  3. 比較して自分の自己評価が低下してしまうとき

 

エアポートおじさんにイライラしてしまう人は、出張や旅行が自分にとって大切なことであるとか、空港の投稿を見て「自分は……」と感じていないかチェックしてみては?

 

 

■おじさんも、若い女子も「SNSだからね!」という意識を

 

コンピュータを介したコミュニケーションは、対面コミュニケーションに比べ社会的な文脈を読み解くための手がかりが足りないという特徴があります。だからこそ、自分が見せたい印象を作ることもできたり、いい人間関係を構築できたりもするわけですが、その反面、対面コミュニケーションに比べ要らぬ誤解が多いことも否めません。

 

単なる空港の投稿に嫌気がさすというのも、SNSコミュニケーションの特徴である「文脈を読み解く手掛かりが足りないだけ」と考えてみませんか? そう考えれば、つまらない投稿をしてしまう人も、それにイラっとしてしまう人も、もっと心穏やかにSNSを楽しめそうです。

 

筆者は自慢も嫉妬も人間らしい感情でなかなかオツだと思う派ですが、それでもモヤモヤを感じることがあります。次回、違和感を抱いたときには「SNSでは読み解く手掛かりが少ないからだ」と唱えてみようと思います。皆さんも是非!

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コミュニケーション研究家

藤田尚弓

All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...

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