【大人メソッド】ホメづらいものをホメる

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【大人メソッド】ホメづらいものをホメる

「ホメる」というのは、とても美しくて尊い行為です。ホメられて嫌な気持ちになる人はいません。しかも、ホメる側もいい気持ちになれます。ただし、相手に取り入ろうという不純な動機で発せられる“お世辞"には、そういった効能はありません。発する側は心にストレスを溜めてしまうし、言われたほうも(裸の王様状態が染みついている人はさておき)ちょっと微妙な気持ちになります。

 

お世辞ではなく、相手も自分も幸せになる「大人のホメ言葉」をどんどん繰り出せば、毎日がちょっとずつ楽しくなり、ひいては世の中が少しずつよくなっていくはず。言わずもがなですが、人間関係が円滑になるし、もしかしたらモテモテになるかも。

 

ホメ言葉がもたらしてくれる幸せをより貪欲に享受するために、どんなときでもどんなものでもホメることができる技術を身に付けましょう。ここでは、ホメづらいものをホメるための3つのコツをご紹介します。

 

 

■その1「箸にも棒にもかからないものをホメる」

ぜんぜん似合っていない服や口に合わない料理、あるいは、面白くないダジャレなど、ホメようがないものをホメなければならない場面は、しばしばあります。そんなときは、対象をほめることをさっさと諦めましょう。いいと思っていない服を無理にホメようとしても、「鮮やかな色だから夜道でも安全だね」といった調子でむしろ墓穴を掘るだけです。

 

箸にも棒にもかからないものをホメるときは、対象ではなく、相手の人格に焦点を当ててホメるのがセオリー。たとえば、

 

「○○さんらしさが引き立つ服だね」
「○○さんのやさしさが感じられる料理だね」
「○○さんにしか言えないダジャレですね」

 

といった調子です。こちらの目的は相手に喜んでもらうことであり、その対象を客観的に評価したいわけではありません。それこそ箸にも棒にもかからない無駄な正直さなんて捨てて、どんどんホメ言葉を繰り出しましょう。

 

 

■その2「こっちにとってはどうでもいいものをホメる」

この分野の代表としてあげられるのは、他人の子どもでしょうか。結婚相手や新しい恋人、買ったばかりのクルマや家、自費出版の自伝などもここに含まれます。こっちにとってはどうでもよくても、本人はホメてもらいたくてウズウズしていますから、何も言及しないわけにはいきません。こういうことはお互い様だし、確実に相手の嬉しそうな顔が見られますから、ホメる対象としてはむしろありがたいと言えるでしょう。

 

この場合も、的確な評価なんて目指す必要はありません。「カワイイ」「カッコイイ」「立派」といった普通でベタな形容詞を繰り出し、その上で「とくに鼻のあたりが○○ちゃんにそっくりだね」と細部に話を持っていったり、「素敵な彼(クルマ、家)でうらやましい」と羨望を口にしたり、「さすが○○さん」「やっぱり○○さん」と恐れ入ったりするのがセオリー。

 

どうでもいいと思いながらいちおうホメただけなのに、相手がまんまと嬉しそうな顔をしてくれて、つられてこっちも嬉しい気持ちになったとき、あなたはホメるということの何たるかを知り、大人の階段をまたひとつ登ることができるでしょう。

 

 

■その3「立場や考え方が相容れない相手をホメる」

無難な対象をホメるのは、心がこもっているかどうかはさておき、それほど難しくはありません。本当に難しくて、それだけに大人として気合いを入れて挑みたいのが、立場や考え方が相容れない相手をホメるという行為です。

 

気に入らない相手や考え方に出会ったときに、どうにかしてやり込めようとか罵ろうとか勝ち負けを決めようとするのではなく、

 

「主張や考えには賛成できないが、あなたのがんばりはたいしたものだと思う」
「あなたと私は利害関係が一致しないが、あなたのやっていることも世の中にとっては大切だと思うので心から応援する」

 

と言える可能性を探ってみるのが、大人の貫録であり良識に他なりません。

 

なんだか世の中全体がギスギスしていて、やたら攻撃的になることが「ちゃんと考えている証」「意識の高い生き方」みたいな困った風潮が蔓延しています。それだけに「立場や考え方の違いはさておき、とにかくホメる」という、節操がないけれど毅然としたスタンスの素晴らしさや大切さを再認識しましょう。

 

たとえば、やわらかいコシの伊勢うどんが好きだからといって、コシのあるうどんに敵意をぶつけていても何も始まらないし、楽しい気持ちにもなれません。伊勢うどんは伊勢うどんで思いっ切り愛した上で、讃岐うどんや稲庭うどんなどに対しても「あれはあれでおいしい」「学ぶところが多い」「全国的に人気があってたいしたもんだ」といったホメ言葉を贈れば、うどんとうどんが太くからみ合ったような連帯感を味わえるし、伊勢うどんへの愛をさらに深めることにもつながります。

 

さあ、新たな幸せや大人としての進化を目指して、ホメづらいものをホメるという行為に精を出しましょう。もしあなたが「うどんはコシが命」と思い込んでいるなら、まずは伊勢うどんを食べて称賛の言葉を口にすることで、「その3」に関しては実践できます。

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コラムニスト

石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は...

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