「高校生が結んだ労働協約」に過敏に反応するオトナたち

話題

 

ある大手コンビニで、アルバイトとして働く高校生が、労働組合を通じて労働協約を結んだという話題がありました。「賃金支払いは1分単位」とすることが柱で、それに見合った過去2年分の未払い賃金の支払いや、売上計算が合わないときに自腹で補填した分の返還なども認めさせたとのことです。

 

学生を中心とした若者のアルバイトに不当労働を強いる、「ブラックバイト」といわれる企業に対抗する行動として称賛される意見がある一方、1分単位での賃金支払い要求を「やりすぎだ」「本当に真面目に働いているのか」「大人になってもそんなことがいえるのか?」などという批判が散見されるなど、この行動に対しては両極端の意見があります。

 

私のつながりがある人たちでも、経営者や管理者といった立場の人が多いせいか、主にSNS上での書き込みなどで、どちらかといえば批判的な意見を多く目にしました。

 

「初めにもっと話し合えなかったのか」

「働かせてもらっている感謝はないのか」

「権利主張するだけの義務は果たしているのか」

「そんな主張をする人は雇いたくない」

 

などという言葉でした。

 

私が多くの会社や経営者を見てきて、「人を雇う」「雇用を産み出す」ということがいかに大変なことかは、いつも思っていることです。法律違反はいけないことですが、そのギリギリの境目のところで、社員の協力を得ながら経営している会社もたくさんあります。そういう人たちから見て、今回のことが一方的な権利主張と思ってしまう気持ちはわからなくもありません。

 

ただ、私はこの一件については、アルバイトの高校生という非常に弱い立場にもかかわらず、勇気を振り絞って権利主張をした行動の方が、素晴らしいことではないかと思っています。こういうことへの感度が鈍い経営者は、私が見てきた中でもまだまだ存在するからです。

 

これはある会社でのお話ですが、休日である土曜日に研修を企画しようとしたことがあります。研修の企画は社長の一存で、講師も社長自身がやるつもりでした。始めは「全員参加だが仕事ではないから給与を払うつもりはない」ということでしたが、配下の部課長から「それでは法律違反に問われる」という批判を受け、その後は任意参加という建前で実施することとしました。

 

それでも社長は「自己のレベルアップを考えるならば自主的に参加すべきだ」などと、社員個人個人に直接参加を促すような話をし、「参加した者の方が評価は高くなって当たり前」などとも言っていたようです。

 

あまりに露骨な問題発言も多いので、私からも自重するようにお話をしましたが、それでも「会社がせっかく自己研鑽の場を作っているのに、参加意欲の低いことが理解できない」「自分のためになることなのに、それは仕事だとか給料を払えとか、権利主張ばかりすることに納得ができない」とおっしゃっていました。そこで見られたのは、ただ純粋に「社員にレベルアップしてほしい」という自分の思いが、社員たちには受け入れられないことに対して葛藤しているような様子でした。

 

この方もそうですが、経営者や上位の管理職のような立場になるほど、仕事とそれ以外のことをはっきり区別することは難しくなっていきます。私もそうですが、今やっていることが仕事なのか、遊びなのかということは、とにかくあいまいになってしまっています。

 

そして、その感覚のままで雇われている立場である社員たちに向き合ってしまうと、こんな行き違いが起こってしまうのではないかと思います。会社が求めるならば、仕事として給料も支払うべきですし、そうでないならば、任意参加ということで徹底しなければなりません。

 

一連の批判を聞いていると、自分自身が雇われた経験がないか、雇われていた頃のことを忘れてしまっているか、そのどちらかのような感じがします。“義務を果たさない権利主張”というのは確かにあります。ただ、それを批判するならば、やはり法律という義務は、厳しくても果たさなければならないのだと思います。

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小笠原隆夫

IT業界出身で現場のシステムエンジニアの経験も持つ人事コンサルタントです。 人事課題を抱え、社内ノウハウだけでは不足してその解決が難しい企業、100名以下から1000名超の企業まで幅広く、人事制度構築、...

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