他人の失敗に感情移入!? 10人に1人が経験する「共感性羞恥」の正体とは?

ヘルス・ビューティー

 

■他人の失敗は自分の失敗

 

先日、テレビ番組「マツコ&有吉の怒り新党」で、「共感性羞恥」という心理現象が取り上げられ、その後ネットなどで話題になりました。この「共感性羞恥」とは、他人の失敗を、自分の失敗のように感じる心理のことで、英語では「empathic embarrassment」として知られています。

 

たとえばテレビで、ドラマの主人公が恥をかくシーンを見たとき、芸人さんが思いきりスベッたとき、とても他人事とは思えないほどに感情移入してしまった経験、これまでにありませんか? それが、「共感性羞恥」というもの。最近の研究で、これが脳の反応を伴う心理現象だということも分かってきています。

 

 

■もしズボンのファスナーが開いていたら…?

 

ドイツのクラッチ博士らは、519人の男女(女性480人、男性139人)を対象としたある実験を行いました。まず被験者に、他者が失敗したり、恥ずかしい思いをしたりしている様々な画像を見せました。

例えば、

・プレゼン中に言葉が飛んでいってしまうシーン

・泥に足を滑らせ転んでしまうシーン

・大きなげっぷを人前でしてしまうシーン

・ズボンのファスナーを開いたまま歩いているシーン

など。そこには、見ている側だけが気づいていて当の本人は気づいていない失態もあれば、見ている人、当事者ともに気づいている失態もありました。

 

被験者に、その失態が自分に起こった場合と他者に起こった場合の2パターンを想像してもらい、それぞれどのような感情が芽生えたかを評価してもらいました。すると、人それぞれで受け取り方に違いが見られ、その中に、他者の失態を「いたたまれない」「見ていられない」とひどく心を痛めた人たちがいることが分かったのです。

 

興味深いのは、もし自分たちがそのような状況に置かれた場合、もっともイヤなのは、公然での明らかな失態(例:人前で転ぶなど)と答えたのに対し、他者の場合は、本人だけその失態に気づいていないこと(例:ファスナーが開いたまま人前で話すなど)に、より強い感情が沸き起こったそうです。この傾向、何だか分かる気がします。自分の場合は知らなければそれまでだと割り切れる、でも他者だと気づいていない事実にハラハラしてしまうため、いたたまれない気持ちになるのでしょう。

 

 

■他者の失態を脳はどう捉えるのか?

 

実験の第2ステップでは、被験者の脳の動きを調べました。すると、他者の失敗や失態を見ると、脳の中の「痛み」を司る領域が活発になることが分かりました。とくに第1ステップで、「自分は非常に共感しやすいタイプだ」と答えていた人ほど、この領域の動きが活発になったそうです。

 

他者の失敗や失態に共感するあまり、脳がそれを痛みとして感知する、これが「共感性羞恥」の正体です。

 

 

■共感性羞恥はたった10%なのか?  

                             

番組では、有吉さんが当てはまらない派、一方のマツコさんがまさにこのタイプとのことで、両者の見解が分かれる展開となっていました。マツコさんは、テレビや映画を見ているとき、次に「この人、恥ずかしい思いをするかも」と思うと、その部分を飛ばして見てしまうのだとか。「もう見ていられない」のだそうです。

 

かといって、テレビの「どっきり」などを見て、笑っていられる人が人間味に欠けているのかといったらそうではないと思います。単に、客観的にテレビを見ているために、人がいじられる場面を「演出」や「番組構成上のもの」として素直に楽しめるのでしょう。現実に起こった他者の失態を笑っているわけではないのですから(もし現実社会で他者の失態を笑って見ていたら、それこそ問題です!)。

 

番組のアンケートでは、10人に1人が「共感性羞恥」の経験ありという結果が出ていましたが、「たった10%?」と感じる方も多かったようで、番組放送後には、「分かる~」「私もある~」と大きな反響があったそうです。人間はもともと社会性に富んだ動物、程度の違いこそあれ、実際にはもっと頻繁に見られる現象なのかもしれません。あなたは有吉さんタイプですか? それとも、マツコさんタイプですか?

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オランダ心理学会 認定心理士

佐藤めぐみ

子育て心理学が専門のAll About子育てガイド。オランダ在住。 育児相談室「ポジカフェ」主宰&育児コンサルタントとして、ママ向けのストレス管理、叱り方のノウハウをお伝えするため日々活動中。 著書: 「子...

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