寺山修司が死の8か月前に残した、遺書めいた詞とは? 型破りに生きた71人の男の顛末

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(山平重樹/幻冬舎)

 

ヤクザや革命家、棋士に作家に爆弾製造犯まで、型破りな生き方の男71人。彼らの生きざまと死にざまを熱い語り口と男泣きの文体で謳いあげた本書『アウトロー臨終図鑑』(山平重樹/幻冬舎)。いかにも幻冬舎アウトロー文庫の看板に相応しい一冊である。この71人の人選は、あくまで著者の「独断と偏見」と巻頭言で書かれている通り、思想においては極右も極左もいれば、なりわいに関してはカタギもヤクザもいる。著者が「浪曼者」と呼ぶ型破りで異端な男たちは、思想も立ち位置も生い立ちも違えど、ただ壮烈な死にざまにおいて、本書で一堂に会することとなったのである。

 

いかに死んだか、が眼目の本書、章立ても、浪曼者の死亡時の年齢ごとに分けられている。10代から20代で早逝した男の章には、山田かまちや尾崎豊など比較的若い世代にも知られている人物から、昭和47年、連合赤軍山岳ベース事件、及び同年の早大革マルリンチ殺人事件で死んだ進藤隆三郎、川口大三郎という、今は時代の風化の波に消えつつある名前もある。若くして死んだ彼らの人生を原稿用紙5枚程度にまとめた文章を読むと、駆け足で生き抜いた感が伝わってくる。とりわけ、世界フライ級チャンピオンの大場政夫の章がそうだ。墨田区の貧しい家に生まれ、世界チャンピオンになるという“ボクシングズ・ドリーム”をかなえた大場政夫。初の防衛戦で手にしたファイトマネーでコルベット・クーペを購入した大場政夫は、首都高5号線の大曲カーブを曲がり切れずに分離帯を越え、反対車線の大型トラックに激突死した。純白のコルベット・クーペに乗った血染めの白いスーツ姿で。映画的な、あまりに映画的な死である。早逝の美学などというものがあるとすれば、その要件をすべて揃えたような完璧な死にざまだ。

 

若くして散った者だけではない。68歳で割腹自殺した住吉会会長補佐・鈴木龍馬、64歳で拳銃自殺を遂げた「最後の博徒」こと波谷組組長・波谷守之らは、それまでの長きにわたる波乱の人生あってこそ、ケジメ的な自死の覚悟を感じさせる。とりわけ、生涯に114本の脚本を手掛け、83本が映画化された脚本家・笠原和夫が、75歳で没するにあたり、イラスト付きの自分の葬儀のシナリオを残したというエピソードは、死ぬ覚悟を極めた男の振る舞いだと唸らざるを得ない。かの深作欣二監督が全く手直ししなかった唯一の脚本『仁義なき戦い』を書いた天才脚本家にしかなし得なかった最期だろう。

 

本書の「浪曼者」の一人である寺山修司は、死の8か月前に遺書めいた詞を書いたという。

 


《昭和十年十二月十日に ぼくは不完全な死体として生まれ 何十年かかゝって 完全な死体となるのである》
 

 

完全な死体とは、自分が望んだ完全な生き方を全うした果ての最期のことだろうか。自分の死に方と向き合いたくなる一冊であった。

 

文=ガンガーラ田津美

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