シーズン途中での“消滅”も…「破産したF1チーム」の苦悩と闇

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小林可夢偉が在籍していたケータハムは2014年のシーズン途中に売却された

7月29日に決勝レースが行われたF1第12戦ハンガリーGPを前に、イギリスに本拠を置くフォース・インディア(チーム国籍はインド)が破産申請をしたことが明らかになった。財政難が深刻な状況になり、債権者に対する支払いが滞っているためだ。今後は管財人がチームに変わって財産を管理することになる。


ハンガリーGPを破産申請のタイミングに選んだのは、このグランプリを最後に8月末の第13戦ベルギーGPまで、F1は4週間の夏休みに入るからだ。6月から7月にかけてのように3週連続開催があったりすると、レースに参戦するための費用がかさむが、夏休み期間中は出費を抑えることができる。その間にチームの買い手を探そうというわけだ。

 

 

■ランキング4位でも破産する

 

7月29日ハンガリーGPのタイミングで、フォース・インディアが破産申請したことが明らかに


フォース・インディアはインド出身の実業家、ビジェイ・マリアが2007年末にスパイカーを買収して誕生。スパイカーの前はミッドランドで、いずれも短命に終わっている。もとをたどれば佐藤琢磨も在籍したことのあるジョーダン・グランプリ(1991年~2005年)にたどり着く。フォース・インディアはジョーダン時代のファクトリーを現在まで受け継いでおり、シルバーストン・サーキットの目と鼻の先にある。


参戦初年度の2008年こそコンストラクターズランキング最下位(10位)に終わったが、徐々に力をつけ、過去2シーズン、すなわち2016年と2017年はランキング4位である。メルセデス、フェラーリ、レッドブルが断トツのトップ3として君臨していることを考えると、フォース・インディアはBクラスのトップという見方もできる。パフォーマンスを予算で割ったコストパフォーマンスで評価すれば、間違いなくトップクラスだ。


ランキング4位のチームでも、チームを運営していくだけのスポンサーを確保するのは難しいようだ。破産申請をするきっかけを与えたのが所属するドライバーのひとり、セルジオ・ペレスだとする報道もある。ペレスのバックには、地元メキシコのスポンサー企業がいくつもついている。スポンサーはチームにスポンサーマネーを支払うが、そのマネーの一部をペレスがサラリーとして受け取る仕組みになっている。F1ではよくあることだが、その支払いも滞っているようだ。


メルセデスやフェラーリ、ルノーなどのワークスチームを相手に奮闘するフォース・インディアの活躍は目を見張るものがあり(名門マクラーレンやウイリアムズを蹴落としていることになる)、規模の小さなチームがコース上で活躍する姿を見るのは清々しい思いがする。ぜひとも存続の糸口を見つけてほしいものだが、F1とは厳しい世界で、過去にはシーズン途中で撤退を余儀なくされたケースがある。

 

 

■クラウドファンディングで資金調達したが…

 

2014年はマルシャもシーズン途中で破産申請。アメリカGP以降の終盤3戦を欠場した


一応は最終戦まで出場したものの、2014年のケーターハムはシーズン途中でおかしくなった。この年、小林可夢偉が在籍していたチームである。シーズン開幕当初から財政的な危うさを漂わせていたが、7月のイギリスGPを前に突然のチーム売却が発表された。新オーナーになっても経営状況は安定せず、10月下旬には管財人の管理下に置かれることに。資金不足から、11月のアメリカGPとブラジルGPは欠場を余儀なくされた。


そのままチーム消滅かと思われたが、なんとクラウドファンディングで資金を調達して最終戦アブダビGPに復帰。虫の息にも等しい状態で、満足なパフォーマンスを披露できるはずもなかった。その後、買い手は現れず、チームは消滅した。


ケーターハムが消滅したのと同じ2014年、マルシャもシーズン途中で破産申請を行い、アメリカGP以降の終盤3戦を欠場。シーズン終了後には全従業員が解雇され、設備や資材が競売にかけられたが、土壇場で救済の手を差し伸べる者が現れ、一旦は復活。2015年はマノー・マルシャとして再スタートを切ると、経営陣を一新した2016年はマノーとして参戦。だが2017年1月に破産し、今度こそ本当にチームは消滅した。

 

 

■石油関連企業に梯子を外された鈴木亜久里

 

鈴木亜久里が2006年に立ち上げたスーパーアグリはわずか2年半で消滅した…


本当にシーズン途中でいなくなったのは、2008年のスーパーアグリである。スポンサー料の未払いから経営状態の悪化が決定的になり、5月の第5戦トルコGPを前に撤退を発表した。活動期間はわずか2年半だった。


元F1ドライバーの鈴木亜久里が2006年に立ち上げたスーパーアグリは、ホンダのエンジンを積み、佐藤琢磨と井出有治の日本人ドライバーを起用して華々しくデビューした。かに見えたが、実際のところ台所は火の車だった。ホンダのエンジンは力強い味方だったが、シャシーは4年落ちのアロウズをベースにしていたし、満足にテストもできなかった。


2007年はホンダの1年落ちのシャシーを手に入れたこともあってパフォーマンスは向上し、第7戦カナダGPでは前年度チャンピオンのフェルナンド・アロンソ(この年のランキングは3位)を鮮やかに追い抜いた末に6位入賞を果たした。第4戦スペインGPでの8位入賞に続き、2007年シーズンの、いやスーパーアグリにとってのハイライトだった。


しかし、大口スポンサーになるはずだった石油関連企業からのスポンサーマネーは一切支払われることなく、スーパーアグリを窮地に陥れた(開幕戦の地、メルボルンのパドックに現れた関係者の怪しさ満々な様子は、いまもって忘れられない)。プライベートチームがF1で生き残るのは難しい。それはいつの時代も変わらないし、F1の一面でもある。
 

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モータリングライター&エディター

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン...

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