遺骨をゆうパックで宅配!? 進化する納骨ビジネスの是非とそれぞれの事情

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葬儀後、しばらく自宅に安置された遺骨は、四十九日や一周忌法要等、親戚が集まりやすいタイミングを見計らって、墓所に納骨するケースが一般的。ところが家族や親戚の立ち合いなしに、日本郵便の「ゆうパック」で霊園や寺院に遺骨を送り納骨してもらう「送骨納骨」が近年にわかに広がりをみせています。

 

送骨とは、読んで字のごとく「遺骨を送る」ことを意味しますが、お墓業界で「送骨」といえば、「遺骨を送って永代供養(管理)墓に納骨し、さらにそれらの遺骨を寺院が管理・供養していく」一連の流れを「送骨納骨」といい、これらを略して「送骨」と表記していることもあります。

 

遺骨を「ゆうパック」で送るなんてけしからんと言う声もありますが、実は「送骨」自体は目新しいサービスではありません。骨壺は女性が一人で持つにはかなり重量がありますから、他の荷物を持ちつつ長距離移動するという行為は、想像以上に大変な作業です。公共の交通機関を使って遺骨を運ぶことが困難な人にとってはとても便利な手段であり、知る人ぞ知るサービスとして利用されていました。

 

 

■パッケージ化が進む納骨ビジネス

 

この遺骨を送るという作業と、永代供養墓への納骨がパッケージ化され、ビジネスとして脚光を浴びるようになったのは、2~4年ほど前からになります。送骨納骨の手順は各寺院によって多少違いはあるものの、概ね次のように行われます。

 

申し込みをして料金を支払う(振り込む)と、段ボールや緩衝材などの梱包材と、ゆうパックの送り状などが送られてきます。利用者側は、骨壺を梱包して納骨に必要な書類(火葬済印付きの埋火葬許可証など)を同封して送るだけ。送骨納骨にかかる費用は1柱(1遺骨)に対して3万円から5万円とリーズナブル。戒名(法名)がつくと、プラス2~3万円という設定をしていることが多いようです。

 

寺院に送られてきた遺骨は、本堂や納骨壇などに安置され、法要が営まれます。しばらくそのまま安置される場合と、すぐに骨壺から遺骨が取り出され、永代供養塔などに他の遺骨とともに合葬される場合があります。

 

 

■送骨納骨を利用する人たちの事情

 

では「送骨納骨」はどのような人達に受け入れられているのでしょう。多くは「きちんと供養したい気持ちは持っているのだが、お墓を建てる余裕がない」と経済的な不安を抱える人たち。ある男性は「故人とは遠縁という理由だけで遺骨を預かることになった。しかし正直言って遺骨に対して特別な思い入れはない。どうにかしたいとネットで調べて『送骨』を知った。薄情と言われるかもしれないが、自分にとってみれば最善の弔い方法だと思う」と送骨を選んだ理由を語っています。

 

 

■手軽に「弔う」ことに対する是非

 

日本のお墓といえば「○○家の墓」と刻まれた石塔が象徴するような「家墓」をイメージする人が多いと思いますが、火葬の普及や明治民法下での墓地法制に基づいて普及したもので、「家墓」は決して日本古来からの伝統的な墓の形態というわけではありません。核家族化・単身世帯の増加、子のいない夫婦の増加、未婚・非婚化、離婚率の上昇など、家の永続性を保つことが難しい実情を背景に、合理化の流れや宗教観の変化も絡み合い、お墓や供養の形が急速に変化しています。「送骨納骨」はそうした社会問題を背景に、生まれるべくして誕生したサービスといえるのかもしれません。

 

一方で、こうした格安・手軽なサービスは、「死が軽んじられる」と警笛を鳴らす人も多く、現状では安易に進められるサービスでもないでしょう。人類は有史以来、「弔う」という作業を、形を変えながらも全世界で行い続けています。送骨が遺骨の破棄を意味するものではないということを、依頼する側も受ける側も認識しておくことが大切だと思います。

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葬儀・お墓コンサルタント

吉川 美津子

社会福祉士(葬送ソーシャルワーカー)、葬儀・お墓・終活コンサルタント。90年代半ばに葬儀業界に足を踏み入れ、大手葬儀社「公益社」勤務、つづいて仏壇・墓石販売店「はせがわ」勤務。駿台トラベル&ホテル専門学...

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