中・高の保健室で避妊具が取り放題!? 国を挙げて自由を謳歌するフランス性事情とは!?

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『フランス人の性 なぜ「# MeToo」への反対が起きたのか』(プラド夏樹/光文社)

# MeTooの最新情報について書こうとしていた矢先、とんでもないニュースが飛び込んできた。8月21日、時事通信他のメディアによると、「# MeToo」運動を主導したひとりであるイタリアの女優アーシア・アルジェントさん(42)が5年前、当時17歳だった少年(米俳優ジミー・ベネットさん22歳)にホテルで性的暴行を行い、トラウマになったと訴えられ和解金38万ドル(約4200万円)を支払ったという。

 

あらら、である。# MeTooは昨年10月、ハリウッド映画の大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン被告(強姦罪などで起訴)からセクハラ被害を受けたとする、アルジェントさんを含む女優13人がツイッターで始めたセクハラ告発運動だ。すぐさま世界中の女性たちが共感し、男女の不平等問題などへの不満も投稿されるようになった。

 

これからご紹介する本書によれば、フランスの元女優ブリジット・バルドー氏は、# MeTooを主導した女優たちに対して当初より「自分たちで売り込みに行っておきながらセクハラを主張するなんて、売名行為だ」と不快感を表明していたという。

 

アルジェントさんは暴行の事実は否定しているようだが、もし事実なら、運動への冒涜行為となるだけでなく、バルドー氏の批判も否めないことになる。

 

 

■世界が驚愕したフランス人女性のアンチMeTooのその理由とは?

 

昨年来、付和雷同するかのように広まった# MeTooに対して、「ちょっと待った」をかけたフランス人女性はバルドー氏だけではない。今年1月、フランスの大女優、カトリーヌ・ドヌーブ氏ら100名のフランス人女性たちが、「反対宣言」を仏紙ル・モンドに発表し、世界の人たちを驚かせた。「なんで? どこが待ったなの?」と、感じた人は多かっただろう。

 

本書によればドヌーブ氏らの主張は、性犯罪自体は明確に否定したうえで、「だが、誰かを口説こうとするのは(たとえそれがしつこくても、あるいは不器用でも)犯罪ではない」と、男性のいわゆるナンパ行為を擁護したものだという。

 

ナンパ容認の理由は、「男性からの誘いがなければ、女性はイエスかノーかをはっきりさせる性的自由を行使できない」(本書)。また、「自分の(男性の誘いに乗るか否かの)選択に責任を持ってリアルな性を生きなければ、女性は自立できない」(本書)からだという。

 

もちろんこの発表は世界の女性の反感を買い、ドヌーブ氏は誤解を解く声明も発表した。なぜそこまでしてもわざわざ「ナンパ上等!」を声高に叫んだのか。その背景にあるフランス人の恋愛、セックス、結婚観、不倫やセックスレス問題、性教育の現状などを、時代を遡りながらひも解いてくれるのが本書なのである。

 

著者はフランス在住の日本人(1988年渡仏、現在フランス人と家庭を築いている)である。大学卒業までは日本で暮らしていたため、日本との性感覚のギャップに戸惑うこともしばしばだったそうだ。そうした目線から、友人知人、関係者や識者へのインタビューや、公的な統計データにも根拠を求め、フランスの歴史的背景も深く広範に考察したジャーナリスティックな視点で書かれた本書を読むと、現代の典型的・平均的なフランス人の性に対する発言や行動を理解するヒントが得られるのである

 

 

■8歳から始まる性教育。中・高の保健室では避妊具完備!

 

そんな本書が教えてくれる“フランス性の旅” はまさに驚きの連続だ。例えば性教育は8歳から始まる「性教育大国」。中・高の保健室ではコンドームが入っている箱があり、誰もがこっそりと自由に持っていける。女生徒にはアフターピルの提供もする。14歳から法的にはセックスができるし、中絶手術も国が費用その他の保護をしていて、わかりやすく言えば「親にさえ知られることなく極秘裏に進められる」という。

 

「不倫上等大国」でもある。なにせ本書によれば、現職の史上最年少大統領エマニュエル・マクロン氏が不倫実践者だという。日本で不倫をするなら、大金と職さえ失う覚悟が必要だ。しかし本書のフランスでの慰謝料事例を読むかぎり、日本の相場は人身事故クラスだが、フランスでは駐禁違反レベル。つまり法的にも不倫上等!なのだ。

 

結婚では、入籍にはこだわらない「事実婚大国」だ。事実婚であれば、セックス問題が発生してもフレキシブルに立ち回れる。日本ではセックスレスは不倫の原因にはなっても離婚理由になりにくい。しかしフランスでは、セックスレスは重大な離婚やパートナーシップ解消原因になるため、夫婦やカップルは子どもを脇に置いてでも、セックスレスを回避するあらゆる努力をする。

 

 

■宗教や貴族・王族、軍政国家にじゅうりんされてきた人々の歴史

 

こうした現状だけを紹介すると、フランスがまるで「セックス開放国家」のようにも思えてくる。しかし、その背景にはさまざまな歴史がある。例えばエイズ問題でフランスは脅威にさらされ、以来、性教育と避妊は国家の死活問題ともなった。

 

また、キリスト教、王政、軍事政権による支配の歴史の中では、人々から自由と性を与えたり奪ったり、もてあそぶかのように交互に繰り返してきた。その希求が現代になって花開き、もう性の自由を奪われたくないという思いが、# MeTooにも待ったをかけさせたのだ。

 

フランス人というとカフェで討論する知的なイメージがある。デカルトを生んだのもフランスだが、一方で、サディズムの語源となったサド侯爵やエマニュエル夫人を生んだのもフランス。著者によれば、性的なノリは圧倒的にラテン系民族なのだそうだ。自由な性を謳歌するフランス事情の詳細を知りたい方は、ぜひ、本書をご一読いただきたい。

 

文:町田光

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