最悪、意識を失う可能性も…女性の命を脅かす“精液アレルギー”とは?

ヘルス・ビューティー

医師 山本佳奈

 

 

「精液が原因としか考えられません…」

 

20代の女性が、外来の診察室に入ってくるなり、口の周りを押さえながらこう切り出しました。診察してみると、頬の下あたりの口の周りの皮膚が赤くただれていました。ヒリヒリとした痛みもあるといいます。

 

彼女には、パートナーが一人。今まで性交渉の際に、今回のような皮膚の症状や痛みを感じたことはありませんでした。けれども、ちょうど症状を自覚した数日前に、2回ほど精液を口の周りにつける行為を、初体験したそうです。性交渉後、ティッシュで拭いたものの、しっかりと洗うことなく朝まで寝てしまい、翌日に顔を洗ったときに、肌が赤くかぶれていることに気がつきました。多少ヒリヒリするくらいであったので様子を見ていたところ、次第に、精液が触れていた部分全体に痛みや赤みが増してきた、とのことでした。

 

実は、このように精子以外の精液の成分である精漿に含まれるタンパク質に対してアレルギーを示してしまうことがあるのをご存知でしょうか。今回はそんな身近に潜む「精液アレルギー」についてご紹介します。

 

 

■アレルギーが2人の別れの原因になることも…

 

精液アレルギーは、射精後、数分以内に精液に対してアレルギー反応を示すものです。中には、射精直後から数時間遅れてアレルギー反応が発症するケースもあります。

 

マイケル・キャロル博士によると、発症するのは主に女性で特に20〜30歳の発症が最も多く、最大“12%”ものひとが発症のリスクにさらされているそうです。

 

では、具体的にはどんな症状が生じるのでしょうか。初期は、外陰部や膣にかゆみや浮腫が現れます。その後、蕁麻疹や目のかゆみ、鼻づまり、顔面や唇などに血管の浮腫を生じる全身反応が出ます。他にも、皮膚に限局的に精液が触れることで、その部分にだけ蕁麻疹や湿疹が生じるケースもあります。また最悪の場合、アナフィラキシーショックで意識を失うことも。これらは、ほとんどの場合、24時間以内にこれらの症状の改善が見られますが、ひどい場合には、数日から数週間続くこともあるのです。

 

では、いつ起こるのでしょうか。最初の性交渉の際に、アレルギー反応の半数が生じるといわれています。けれども、冒頭に紹介した女性のように、突然としてアレルギー反応を生じるケースもあります。これが厄介なところは以前のパートナーとはなんともなかったのに、一旦アレルギー反応が生じると、現在だけでなく、将来のパートナーにおいても同様に発症してしまうことです。これが2人の関係をギクシャクさせてしまうことも考えられます。

 

しかし、精液アレルギーは、なかなか相談しにくいのに加えて、他の症状と類似しているので、誤診しやすいのが現状です。

 

 

■性病だけじゃなくアレルギーからも守るコンドームの万能性

 

アレルギーを発症する女性は、もう性交渉ができないのでしょうか。そんなことはありません。コンドームを使用して精液との接触を避ければ、アレルギー反応を予防することができるので、避妊や性感染症の予防になるだけでなく、精液との接触によるアレルギーから女性を守ることもできるのです。

 

残念ながら、精液アレルギーを完全に予防できるのかといえば、そうではありません。コンドームが破れてしまった、外れてしまった、といった場合、アレルギーを発症してしまう可能性があります。また、妊娠を希望するカップルにとっては、コンドームの使用による予防は現実的ではありません。

 

そういった方に対しては、精液をほんの少しずつ膣内または皮下に入れ、次第に増やしていくことで過敏な反応を減らしていく治療法が行われています。また、重度のアレルギー反応を起こす可能性の高い女性に対しては、生殖補助技術を用いることで妊娠するケースも多数報告されています。

 

最後に、冒頭にご紹介した外来を受診した女性がどうなったか、お伝えしましょう。数日後、外来にやってきた彼女は、元の笑顔に戻っていました。口の周りのかぶれはすっかり消え、元の肌の状態にすっかり戻っていました。あれから、コンドームの使用を徹底し、性交渉の際は顔に精液が触れないように注意するようにしていると話していました。

 

なかなか相談しにくい、精液アレルギー。もし自分やパートナーにこのようなことがあればぜひ一度、診察してみてください。

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医師

山本佳奈

1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大...

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