【日産 フェアレディZ試乗】間もなく誕生10周年!古典的スポーツカーの魅力は健在

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■フェアレディZ NISMOは355馬力を発生!

 

 

2008年12月に日本での販売がスタートした現行型フェアレディZ。「ダットサン フェアレディ」から数えれば8代目、“Z”のサブネームが与えられてからは6代目となり、日本車としては最も長い歴史を有するスポーツカーとして知られています。

 

もちろん、ひと口に現行型といっても、2012年の大規模マイナーチェンジのほか、メカニズムの改良やグレード/モデル設定の変更を、数度受けています。最新の一部改良は、昨2017年7月に実施。ボディカラーに新色が採用されたほか、リアゲートを車内から開けられるオープナースイッチの追加、新デザインのアルミホイールの採用、MT車のクラッチ改良など、内外装から機能部分までブラッシュアップが図られました。

 

そうそう、2018年3月には、1977年に北米向けとして用意された「280Zスペシャルデコレーションパッケージ(ZZZap)」をモチーフにした特別仕様車「ヘリテージエディション」もラインナップに加わりました。

 

 

そんな最新モデルのメカニズムですが、エンジンは3.7リッターのV型6気筒DOHC“VQ37VHR”型で、標準モデルの最高出力は336馬力、トランスミッションは6速MTと7速ATが組み合わされます。さらに高性能版たる「フェアレディZ NISMO(ニスモ)」には、日産自動車のモータースポーツ活動を支えるだけなく、コンプリートカーブランドとしても高い評価を得ているNISMOがチューニングを施した、355馬力のスペシャルエンジンが搭載されています。

 

このフェアレディZ NISMOには、エンジンの専用チューニングコンピューターや等長デュアルエキゾーストシステムに加え、専用サスペンション(スプリング、ショックアブソーバー、スタビライザー)やヤマハ製パフォーマンスダンパーが採用されるほか、徹底したボディ補強も施されています。また先の改良で、転がり抵抗を20%低減した新タイヤ(ダンロップ「SP SPORT MAXX GT600」)も採用されました。

 

 

■クラッチ改良で“半クラ”の操作性が向上

 

 

最初にキーを受け取ったのは、フェアレディZ NISMO。その内外装は基本的に、従来モデルから不変です。つまり、前後ダウンフォースの最適化や高速走行時の操縦性向上を狙ったバンパーとサイドシルプロテクターを始めとする、専用形状のエクステリアパーツを装備しています。

 

これらによって、見た目の躍動感が増しているのはもちろん、NISMOモデルの証である赤いラインがあしらわれることで、グッと活発さを感じるルックスとなっています。とはいえ、美しい曲線で描かれる長いフロントノーズ、ルーフからリアエンドへのなだらかな処理を挙げるまでもなく、ひと目見ただけでフェアレディZと分かるスタイルは、やはり長い歴史あってのものでしょう。

 

 

シェイプの深いレカロ社製のバケットシートに収まり、グリップ部分に人工スエードの“アルカンターラ”が巻かれたステアリングホイールを握れば、これから純粋なスポーツカーをドライブするのだと体が自覚し、自ずと緊張感が高まります。

 

 

クラッチペダルを踏み込み、スタートボタンを押すと「ズドン!」という低めのサウンドとともに、NISMO仕立てのVQ37VHRエンジンが目覚めます。アイドリングが落ち着いたところで路上へと歩みを進めますが、すぐさま従来モデルとの違いに気づきました。MTモデルは新しいクラッチを採用していますが、踏力がやや軽くなっていることに加え、タイトだったミートポイントがやや広くなり、半クラッチにおける操作性が向上しているのです。

 

従来モデルでは左足に力を込め、手応えのあるシフトレバーを操作して…という、いわば古典的スポーツカーらしい印象でしたが、最新モデルのクラッチは350馬力クラス相応の反力こそ感じるものの、渋滞でも苦痛に感じるほどの重さではありません。とはいえスポーツカーの場合、操作系のフィーリングには統一感も重要ですから、重めに設定されたステアリングやシフトレバーとのバランスをより追求した設定、といったところでしょうか。

 

また、フェアレディZ NISMOのVQ37VHRエンジンですが、従来は1速、2速の極低速・低回転域ではやや反応が鈍く、ストップ&ゴーの繰り返しやジリジリと進む渋滞時は、少々扱いづらさを感じることがありました。それも古典的な大排気量スポーツカーの味として受け入れられるレベルではありましたが、新型ではその辺りが改善されたように感じます。とはいえこれは、クラッチの操作性が向上し、より適切なタイミングや踏み加減でクラッチを断続できるようになったことが大きいのかもしれません。

 

 

そんな最新型の感触を楽しみつつ、市街地から高速道路へと上がります。乗り心地はズッシリ重厚で、足回りも明確な硬さを感じるタイプ。でも、速度が上がるにつれてフラットさが増していきます。新採用のタイヤはパターンノイズも抑えられていて、コクピット内ではVQ37VHRの金属的なエンジンサウンドと重厚な排気音を、より鮮明に堪能できるようになりました。

 

それによる動力性能はというと、今もなお一線級。まるで手のひらで地球をひねるかのように重厚な感触のステアリングフィール、大排気量の自然吸気マルチシリンダーエンジンならではのパワフルで伸びのある加速など、従来からフェアレディZ NISMOが持ち得ていた美点はしっかり継承されています。

 

一方で、エンジン出力やブレーキを制御して横滑りを防ぐ“VDC”や、制動力を電子制御で最適に配分する“EBD”など、ドライビングをサポートする電子デバイスは必要最小限。そのため、フェアレディZ NISMOの本領を味わえるのはサーキットだけだと思いますし、限界領域を垣間見るには相当な“腕”が必要となるのはいうまでもありません。

 

 

もし、ドライビングをサポートする電子制御系の装備をもって価値を図るのであれば、フェアレディZ NISMOは時代遅れのクルマに思えます。しかし、ドライバーとクルマの間に介在する“第3の何か”による影響が少ない分、クルマ本来の味や感触をより純粋、かつ濃厚に感じられるのも事実。

 

全開走行でタイムを追うのではなく、高速道路でのクルージングやちょっとしたワインディングでも、その乗り味に思わずニヤリ…いや思わず雄叫びを上げてしまいそうになるのは、フェアレディZ NISMOのピュアな成り立ちがあってのことでしょう。

 

 

■標準モデルに息づく滋味深いスポーツカーらしさ

 

 

数日間、ともに過ごしたフェアレディZ NISMOと別れ、続いてガレージに迎えたのは上位グレードの「バージョンST」。昨2017年7月の一部改良で、ヘッドライトやリアコンビランプの輪郭をブラックハウジング化して強調。さらに、リアバンパー下部をブラック塗装としたことで、より精悍さが増しています。加えて上位モデルでは、ホイールのデザイン変更に加え、ブラック塗装+切削光輝加工が施されたこともあり、高級グランツーリスモを思わせる華やかさが加わりました。

 

 

新色となるカーマインレッドの深いツヤと鮮やかな色合いはなかなか上品で、柔らかな曲面で構成されるZのボディでは抑揚が程良く強調され、相性も良好のようです。

 

ガッチリと固められたボディに、パワーみなぎるエンジンを積むNISMOと比べると、キャラクターは穏やかで、バージョンSTでは物足りなさを感じるのでは? と思われるかもしれませんが、さにあらず。確かに走りの刺激ではNISMOに一歩も二歩も譲りますが、標準モデルからはなんとも滋味深いスポーツカーらしさが感じられるのです。

 

フェアレディZ NISMOに限らず、今日の国産スポーツカーを見渡してみれば、日産「GT-R」やホンダ「NSX」といった超ド級モデルに、トヨタ「86」やマツダ「ロードスター」といった軽量モデルといった具合に、明確なクラス分けが存在し、各々のキャラクターもしっかり明確になっています。

 

翻って、今回のバージョンSTに代表される標準モデルのZはというと、走りもスタイルも、控え目かつ大人びた印象。走り出してしまえば、今日では希少な大排気量V6エンジンのサウンドは官能的ですし、ワインディングをほどほどのペースで流す時のハンドリングやフットワークの自然さは、今となってはなかなか得がたい感触だと思います。また、空力パーツが備わらないプレーンなボディは、派手さで人目を惹くことこそありませんが、まさに素地の良さに見ほれる、そんな奥ゆかしい美しさがあると思うのです。

 

 

さて、最新鋭の運転支援システムや、多機能なインフォテインメントシステムなどは備わらず、しかも、デビューから10年が経過しようとしているフェアレディZは、誰にでもおすすめできるクルマなのでしょうか? その答えはノーかもしれません。しかし、ドライビングは人とクルマの対話だ、楽しみだという人にとっては、古典的だからこそクルマとの意思の疎通を図りやすく、また今という時代、これに代わるクルマなど存在しないのも事実でしょう。

 

次期フェアレディZに関するウワサもポツポツ聞かれ始めた昨今。走りにもたたずまいにも古き良きスポーツカーの味わいを残す現行モデルを手に入れられる時間は、そう長くはないのかもしれません。興味がある人は、今だからこそ遠慮なくアタックしてみてはいかがでしょう?

 

 

<SPECIFICATIONS>
☆NISMO(MT)
ボディサイズ:L4330×W1870×H1315mm
車両重量:1540kg
駆動方式:FR
エンジン:3696cc V型6気筒 DOHC
最高出力:355馬力/7400回転
最大トルク:38.1kgf-m/5200回転
トランスミッション:6速MT
価格:629万3160円

 

<SPECIFICATIONS>
☆バージョンST(AT)
ボディサイズ:L4260×W1845×H1315mm
車両重量:1550kg
駆動方式:FR
エンジン:3696cc V型6気筒 DOHC
最高出力:336馬力/7000回転
最大トルク:37.2kgf-m/5200回転
トランスミッション:7速AT
価格:521万2080円

 

文、写真:村田尚之

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