残酷すぎる… 自殺した“農業アイドル”を苦しめていた非常識なマネジメント

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2018年3月21日、愛媛県を中心に“農業アイドル”として活動していたグループ「愛の葉(えのは)Girls」の大本萌景(おおもと ほのか)さんが亡くなった。すでに各誌が報道している通り「辞めるのであれば1億円払え」という旨の発言を受けたなど、所属事務所によるパワハラや過酷なスケジューリングを苦にした末の自殺だったそうだ。

 

享年16歳……これから人生を謳歌するはずの大本さんはなぜ死ななければならなかったのだろうか。僕は芸能の世界で仕事をしているが、ニュースでこの事件を知るまで、大本さんや愛の葉Girlsの活動については一切知らなかった。

 

 

■趣味でもボランティアでもない。仕事量に見合った報酬を

 

調べによると、愛の葉Girlsは、若い世代に農業の魅力を知ってもらうため活動する“歌って踊って耕す農業発信ガールズユニット”とのこと。活動の拠点である愛媛県では一定の認知度があるそうだが、グループのTwitter公式アカウントのフォロワーは576人(本稿執筆時点の10月11日現在)。同じくご当地アイドルの「KOBerrieS♪」はフォロワー3132人、「とちおとめ25」はフォロワー3815人なので、決して全国的なPRに成功している部類ではないのだろう。

 

これまでに全国流通した3作のシングルCDについても調べてみたが、いずれもオリコン200位圏外。CDを売ってなんぼのアイドル業界で、初動で200枚も流通しなかったというのはキツい。

 

2000年代以降、アイドルの人口は爆発的に増加している。県や市単位でローカルに活動するご当地アイドル、自主企画のライブハウスイベントで活動する地下アイドルなど、さまざまなジャンルが生まれ、本人がなりたいとさえ思えば誰でもアイドルとして名乗りをあげられる風潮だ。

 

そのこと自体は否定しないが、アイドルも仕事だ。事務所に所属し、時間や労力を費やせば、それに見合った収入を得る必要がある。特に愛の葉Girlsのように農業との連携を目指すような将来性を見据えたプロジェクトに沿った活動をしている場合、所属するタレントには収入が保障されていなければならないはずだ。

 

ところが報道によると愛の葉Girlsは毎月20日以上、10時間以上の労働を課せられていたにもかかわらず、一人平均3万5000円ほどの報酬しか与えられていなかったらしい。彼女たちは趣味でやっているわけではない。事務所が管理し、しっかり仕事量があるにも関わらず数万円の収入にしかならないというのは考えられない。事務所が利益を過剰にプールしていたか、もしくは利益をあげられる体制を作れていなかったかどちらかだ。

 

 

■泣き寝入りしてしまうタレントが大半

 

僕が好きな言葉に「(芸能で成功する秘訣として)マイナーなことをメジャーなところでやるのがいい」(内田裕也、沢田研二)というものがある。昨今のアイドルブームをリードしているAKB48にしても、これまでは大衆演劇でしかおこなわれていなかったような握手会や小規模劇場での連続公演というマイナーなシステムを取り入れて成功をつかんでいる。

 

愛の葉Girlsの場合は農業のPRがコンセプトというが、『ザ!鉄腕!DASH!!』のようにうまくいくはずはない。超人気アイドルのTOKIOが農業をするから話題になるのであって、まだ売れていないアイドルが農業をPRしても、相乗効果は生まれにくいだろう。

 

死者が出るほど過酷な活動をしてきたにも関わらず、愛の葉Girlsがこれまで“ご当地アイドル”“変わり種”以上の評価を得られていないのはメンバーのせいではなくプロデュース陣のせいだ。そもそもこのプロジェクトがひどく杜撰で、見通しの甘いものだったと判断せざるを得ない。

 

小規模な芸能事務所には非常識なマネジメントを堂々とおこなっているところが多い。僕も芸能事務所の代表を務めている身として、周辺で話を聞く限りでも、パワハラや暴力による支配、退所後のいやがらせなどびっくりする事例がたくさんあった。それでもタレントは世間にヘルプを言いにくい立場なので、泣き寝入りしてしまう場合が大半だ。今回の大本萌景さんの死が無駄にならないことを願うばかりである。

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シンガーソングライター/音楽評論家

中将タカノリ

シンガーソングライター、音楽評論家。2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の薦めで芸能活動をスタート。深い文学性と、歌謡曲、アメリカンポップスをフィーチャーした音楽性で独自の世界観を構築している...

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