トクホ全製品の成分調査やり直しで発覚、企業の事情と消費者の心得

ヘルス・ビューティー

平井 千里

 

9月末、驚くべき指示が出されました。「トクホ全商品、成分調査やり直し」

 

「トクホ」は、消費者庁が認可している健康食品であり、一般的な食品よりも若干、高価です。消費者にとっては、消費者庁による認可を受けていることへの「安心料」のはずが、どうしてこのような事態になってしまったのでしょうか?

 


■トクホの誕生と審査基準

 

トクホの誕生は1991年。当時は「健康食品ブーム」。効果がないにもかかわらず「○○に効果がある」と謳った商品が高額で販売されていました。これはよくないと立ち上がったのが厚労省。

 

「薬でもないのに、薬効があるのでは? と誤解を与える表記は廃止。審査の結果、薬ではないが効果があると認められる食品にだけ“特定保健用食品(トクホ)”の表示許可を与える」

 

当初は2年ごとに審査・更新を行っていましたが、企業側の負担が大きいことを理由に4年更新に、1997年には申請時の審査に通れば永久的に表示許可が与えられることになりました。

 

トクホは2009年の消費者庁設立に伴い、厚労省から消費者庁へ管轄が移管されます。消費者庁では2014年に高度な新基準を通知改正し、段階的に大幅な品質改善を求め、適合しない商品は自主的に販売休止を求めていました。その指示に従っていないとして、2016年9月23日に関与成分が表示どおりに含まれていないなどとし、トクホの許可を取り消された商品が出てしまいます。トクホ始まって以来の出来事です。由々しき事態と感じた消費者庁は追って9月28日、他のすべての商品について成分調査をやり直すよう指示を出しました。

 

一連の流れについて、岡村和美消費者庁長官は「現制度では企業の良識に期待せざるをえない」とコメントしています。マジメな日本人の気質から考えれば、まさか会社ぐるみで消費者を欺いているとは考えもしません。しかし、残念ながらこのような事が起きてしまった。同じ「食」を扱う仕事をする者としては残念で、悔しくてなりません。

 


■商品のアップデートで「関与成分」を含まなくなることも…

 

企業側は日夜、商品販売のために企業努力を行っています。トクホの取得も、その一環です。審査書類もタダでは作れません。一般的な宣伝費に加えてトクホ取得費用がかかります。そのためすべての商品にトクホを取得することはできません。トクホを取得した商品はその企業の主力商品であり看板です。

 

その看板が消費者に飽きられないよう、消費者のニーズに合うようにパッケージだけでなく、味や製法を変更するのは企業として当然のことです。しかし、アップデートによってトクホに申請した「関与成分」が表示どおりに含まれなくなる、という事も起こりえます。

 

本来であれば、関与成分が表示どおりに含まれないのであれば、企業側が自主的に申請取り消しの手続きをとるべきなのですが、トクホの商品は一般的な商品よりも高額で取引ができます。せっかく取得した永久ライセンスのトクホです。企業側が手放すのは惜しいと考えるのも不思議ではありません(いけないことですが)。

 

 

■消費者はトクホとどう付き合っていけばよいのか?

 

消費者として考えると「食品」に薬効はないという認識をきちんと持つことが大切です。薬膳のような体質改善を狙った食事方法はありますが、単一の食品だけを摂れば効果が出るというものではありません。薬膳料理を食べたことのある人はご存知だと思います。さまざまな食材を組み合わせて食事が作られています。薬膳は一つ一つの食材にも意味がありますが、さまざまな食材を組み合わせることにも効果の源が隠されていると思います。

 

「これさえ食べれば健康になれる」と言われれば、わらにもすがりたいと考える人はいるでしょう。気持ちは痛いほど分かりますが、「これさえ食べれば」という食品があれば、食事のプロである我々栄養士の耳に届いているはずです。もしそんな情報が届いているなら、皆さんにもお伝えしたいのはヤマヤマです。しかし、残念ながら国が管轄しているはずのトクホですらきちんと機能しているとは言えない状態。

 

それでは、食品選びについて、何を信じてよいのか? と言われると、私も答えに窮してしまいます。天然の食材を自宅で調理すれば? との意見もあると思いますが、忙しい現代人の誰もができることではありません。ただ、ヒントとして。私自身がトクホを購入しているか? と聞かれれば、購入しません(笑)。でも、愛用している人を止めようとも思いません。プラセボ効果と言いますが、「健康にいい」と言われると本当に健康になる人もいるからです。健康食品はこういう人の意見を広告に使っているのかもしれませんが、プラセボ効果なのか本当にその商品が効いたのか、確かめる方法はありません。消費者として、より健康のためになる食材を選べるよう、情報の正確性をきちんと吟味できる判断力を身につけるようにしたいものです。

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平井 千里

女子栄養大学大学院(博士課程)修了。名古屋女子大学 助手、一宮女子短期大学 専任講師を経て大学院へ進学。「メタボリックシンドロームと遺伝子多型」について研究。博士課程終了後、介護療養型病院を経て、現職で...

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