警察官も銀座ホステスも基本は同じ!? 職場の身だしなみルールは必要か

ビジネス

 

大阪市営地下鉄の運転士さんが、ヒゲを理由に降格されたことで裁判を起こしたことが話題になりました。「必要な服務規程の範囲なのか」「憲法で保障されている個人の自由なのか」といったことが議論されています。

 

そもそも職場の身だしなみルールって、なぜ必要なんでしたっけ? 警察と銀座のクラブという両極な世界に勤務したことのある筆者が「職場での身だしなみルールの必要性」を考察してみました。

 

 

■警察ルールも銀座ルールも基本は同じだった

 

筆者はコミュニケーションデザインを研究しています。もう10年以上前の話ですが、某地方警察署で、防犯に関する広報紙を編集発行していたことがあります。当時、警察にも身だしなみに関する規定はありました。

 

例えば、ヒゲはNG(皮膚疾患などでヒゲをはやしている人、仕事が仕事だけに家に帰れず生えてしまった人など例外はあります)。制服のときには傘もNGで、着用するタイプの雨具が決められている、といった具合に細かいです。

 

当然ながら私服組も「ふさわしい服装」が求められます。印象は人の判断を歪ませる要因のひとつです。近隣の皆様からの目もあるので、筆者もスカート丈やヒールの高さまで細かく気を遣っていました。

 

カタイ職場なのでルールも当然と思っていましたが、ユルそうな職場に見えた銀座のクラブも身だしなみルールは厳格でした。

 

黒い服は月に3回まで、ミュールやつま先の見えるパンプスはNGなど具体的に明記されたものはもちろん、「そのくらい常識でしょ」という店側があたりまえだと認識しているルールがたくさん。後出しジャンケンのように注意されました。実際に筆者が指導されたケースの例をあげると、勝手に髪をショートにした、太った(!)といったものまでありました。

 

体型について注意するなんて違憲だ!という方もいらっしゃると思いますが、警察でも肥満はNGです。筆者が勤務していた数年間だけでも、肥満対策についての通達は何度も見たことがあります。銀座ホステスも、警察官も肥満は職務遂行の支障になるという認識している人たちがいるのでしょう。警察には様々な部署があり、肥満がまったく邪魔にならない仕事もありますし、太っていても魅力的な女性はいるのですが……。

 

どちらかというと筆者はルールを守れない側の人間です。しかしながら警察にも銀座にも共通する、職務遂行に支障をきたすものは排除しておきたいという考え方は理解できました。その底辺に流れている「らしさ」を守る心意気も、嫌いじゃないです。

 

 

■外見は「気持ち」に影響を与え、言動も変えてしまう?

 

疑似監獄で与えられた役割をどうこなすかを観察し、世に衝撃を与えることになったスタンフォード大学の「監獄実験」というものがあります。看守役と囚人役を決めてその役割を演じてもらうといった内容です。

 

実験が進むにつれ、元の性格に関わらず、看守役は、囚人役に屈辱を与える、暴力をふるうといった行動をとるようになってしまいました。囚人役の人には、卑屈な言動が見られるようになり、心身に支障をきたす人が続出。この実験は、あまりにも危険だと中止されたことで有名になってしまいました。

 

役割や立場が人を変えてしまうというのはよくあることです。これと同じように服装や髪型が与える影響というのも少なくありません。

 

 

■色気のなかった筆者がセクシー女装をしてみた結果

 

警察から銀座のクラブに転職した筆者は、思わぬ壁にぶつかりました。返事の声が大きい、動きが色っぽくない、滑舌が良すぎるなど、細かいダメ出しをされたのです。ほとんどが無意識でやっていた行動なので、どう直していいか本気で悩みました。

 

ところが露出度の高いドレスや艶やかな和服を着続けているうちに、その問題は緩和されました。女性らしい服装をしていると、不思議と所作や選ぶ言葉も女性らしくなります。単に気持ちの問題ではなく、他者からの認識や接し方が変わったのも大きな要因だったと思います。

 

その後、企業に勤めたときには会社員っぽい服装、社長になってからは社長っぽい服装、大学や専門学校で授業をするときは先生らしい服装を自分なりに考えるようにしています。

 

身だしなみルールを守ろうという殊勝な考えではなく、「見た目」のパワーを利用しないのはもったいないという感覚ですが。

 

 

■服装や見た目によって判断は変わるという事実

 

俳優のいかりや長介さんが大好きです。特に踊る大捜査線に出ていたときに、主演の織田裕二さんにかけた「正しいことをしたければ偉くなれ」というのが胸に刺さり、そこからファンになりました。思わず涙が出そうになった、あのセリフ。老年の刑事役をしている、いかりやさんが言うからグっときたわけですが……ドリフターズの頃の服装で言われたらどうだったでしょうか。たぶん額に巻いた豆絞りに目を奪われ、いい言葉も受け止められなかったと思われます。

 

人は外見ではなく中身。そうわかっていても、無意識のうちに外見で判断を歪めてしまうのが人間です。それを考えると、職場で身だしなみのルールを作りたくなる気持ちもわかります。

 

 

人は見た目より中身。でも見た目ごときで損をするのはもったいない! そう考えると職場の身だしなみルールも必要だと思います。しかしながら、何のために必要なんだっけ?と考えてみた今、ヒゲで降格というのは違和感があります。

 

「ルールはあっていいけどガイドラインな的な運用をすればいいのに」というのが率直な感想です。手段と目的を混同するというのは普段の生活でもよくあることなので、気をつけたいと思います。

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コミュニケーション研究家

藤田尚弓

All About 話し方・伝え方ガイド。企業と顧客のコミュニケーション媒体を制作する株式会社アップウェブを経営。言語・視覚の両面から「伝わる」ホームページやパンフレットなどの制作を通し、日々コミュニケーション...

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