運転免許証の新規取得数は伸びているが…若者のクルマ離れは止められない

車・交通

 

若者のクルマ離れ。この言葉を、日本から遠く離れた北欧フィンランドで聞くとは思わなかった。今年9月、現在モビリティシーンをにぎわせているMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の真実を探るために、知人の大学教授とともに発祥の地と言われるフィンランドへのスタディツアーを敢行した時のことである。

 

そこではフィンランドの現状も紹介された。人口は約550万人で日本の20分の1に過ぎないけれど、国土面積や陸地に占める森林の比率は我が国に近く、離島が多いことなど、自分の住む国との共通項が多いことに驚かされた。

 

首都ヘルシンキは、フィンランドの全人口の1割以上にあたる約63万人が住み、周辺都市を含めたヘルシンキ都市圏では140万人を超える。東京に負けない一極集中だ。高齢化率も、ヘルシンキではおよそ16%に留まるものの、国土全体では20%に達する。

 

しかし現代の日本は2018年10月現在で28%近くと、さらに上を行く。なのに運転免許証の新規取得数、自動車の保有台数はともにわずかではあるが伸びている。人口さえ減少に転じているこの国では、若者のクルマ離れというフレーズは間違いだったのだろうか。

 

でも2人以上の一般世帯で世代別の自動車所有率を見ると、30歳未満は60〜69歳より低いというデータが出ている。たしかに自動車を所有するには、車両価格ではなく税金などの諸費用、所有時に掛かる燃料代や駐車場代など、さまざまな支出がある。定職についていても収入が少ないことを考えれば、所有をあきらめる人が出てきても仕方がない。

 

ところで自動車保有率を都道府県別で見ると、意外な結果が浮かび上がってくる。1位は人口がもっとも多い東京都ではなく、トヨタ自動車の本拠地でもある愛知県で、2位は埼玉県。東京都は第3位になるのだ。ひとりあたりの保有台数では当然ながら東京都は最下位で、最上位は群馬県になる。

 

東京都に住むひとりとしては、駐車場代は高いし、公共交通機関が発達していてクルマがなくても不自由なく生活できるので、1位でないことは納得だが、気になるのはその東京への一極集中が進んでいると、さまざまなメディアで報じられていること。人が集まるのにクルマは持ちにくい。これだけでもクルマ離れが進みそうだ。

 

ちなみに最初に例として出したフィンランドは、国の総人口はいまなお少しずつ増加しているそうだが、ヘルシンキの人口は約63万人で、総人口の1割を超えており、周辺都市を含めた都市圏人口は約144万人と、25%以上に達する。日本における東京及び首都圏に匹敵する数字である。

 

でもフィンランドはヘルシンキへの一極集中を食い止めようという動きは起こしていないようだ。それどころかヘルシンキでは市内4か所で再開発が行われており、15年後を目処に合わせて15万人規模の住居と雇用の確保を目指している。

 

先進国では2010年時点で都市に住む人口の割合は70〜80%に達しており、2050年にはこれが90%に上昇するのではないかという予想もある。さらにクルマを所有しにくくなる状況になることが予想できる。

 

最初に書いたMaaSとは、情報通信技術を活用して、公共交通をはじめとするマイカー以外のすべての交通手段による移動をひとつのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ新たな移動の概念。利用者はスマートフォンのアプリを用いて交通手段やルートを検索、利用し、運賃等の決済を行う例が多い。

 

MaaSアプリの代表格として世界中で高い評価を受けているのがヘルシンキで展開しているWhimで、公共交通のみならずサイクルシェアリングやレンタカーを含めた経路探索が事前決済とともに可能で、1か月500ユーロというサブスクリプションプランもある。

 

MaaSアプリについてフィンランドの担当者は、マイカー対抗だとはっきり口にしていた。20世紀を代表する工業製品のひとつでありモビリティの代表格になった自動車だが、最近は大気汚染や交通渋滞など負の側面もクローズアップされている。若年層がこうした指摘に敏感に反応するのは当然。若者のクルマ離れは今の世の中の流れを反映する動きと言えるかもしれない。

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モビリティジャーナリスト

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担...

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