話題の“ブラック新卒研修”。頭からガツンといくと新卒社員は伸びるのか?

ビジネス

本田和盛

 

 

ブラック新入社員研修がネットで話題になっています。講師が厳しい叱責を浴びせるので、涙ぐむ受講者も出ているそうです。人権侵害だというコメントや、そこまでやる必要があるのかという意見も寄せられているようです。何のためにそんな厳しい研修をするのでしょうか。まず注意しないといけないことは、ブラック新入社員研修は、人材育成を誤解している、ほんの一部の研修会社がやっているだけで、世の中の主流ではないという点です。

 

まず大企業がこのような研修をやったら、大問題になります。現実の新入社員研修は、非常に丁寧に設計されています。私も昨年、某大手企業の新入社員研修を担当しましたが、事前にプログラムを何度もすり合わせ、受講者に説明するためのトーク1つ1つまでも講師陣で検討しました。

 

言い回しや説明が分かりにくくないかというレベルではありません。プロの講師であれば、そのレベルはとっくにクリアーしています。表現や引用する事例が倫理上、コンプライアンス上問題はないか、社会経験の少ない新入社員にとって刺激が強すぎないかなど、受講者の立場から徹底的に検証するのです。

 

当然ですが「ビジネスマン」という表現は、ノーグッドです。女性活躍推進が国家的なテーマになっている現代で、男性を意味する「マン」という表現は使えません。使うなら「ビジネスマン・ビジネスウーマン」とするか「ビジネスパーソン」としなければなりません。「男性は男らしく、女性は女らしく振る舞いましょう」も、今後は使えません。LGBTの方に対する人権侵害になる可能性があるからです。

 

一時、野外でゲームをしたり、フィールドワークを通じてチームビルティングを学ぶという新入社員研修もはやりましたが、今は基本に回帰しています。マナーや社会人としての倫理感を身につけることと、職場に入っていった時に、プレッシャーを受けてメンタル不調になったり、カルチャーショックで早期離職しないように、耐性(レジリエンス)をつけることに主眼が置かれています。

 

そもそも、新入社員に1日や2日の厳しい研修を受けさせただけで、根性がついたり、マインドが変えられるわけはありません。マインドが変わる前に退職されてしまうのがオチです。もちろん新入社員であっても早期に戦力化したいという企業の事情もよく分かります。しかし新入社員研修を受けさせただけでは、戦力にはなりません。どうしても即戦力が欲しいのであれば、新卒採用ではなく中途採用を選択すべきなのです。

 

達成不可能なノルマを課し、違法な残業をさせているブラック企業は確かに存在します。このような企業がブラック新入社員研修を受けさせている可能性はあります。社会経験が不足している新入社員であれば、それを普通のものと誤解してしまう心配は確かに残ります。

 

少子化で若年労働者は減る一方です。中小企業を含め、多くの企業は採用した新入社員を丁寧に育てようとしています。新入社員研修が終わって配属となった後も、指導員役の先輩をつけて面倒を見させます。入社半年後、1年後にフォロー研修を用意している会社もあります。

 

半面、短期的な利益を優先し、新入社員を使い捨てにしようとする会社もあります。企業は存続することが社会的使命を果たす大前提となります。存続よりも経営者の個人的な利益を追求する会社は、社会の公器とは呼べません。

 

新入社員がおかしな会社に入らないように、また入社後、伸び伸びと個性と能力を発揮できるように、周囲の社会人が温かく見守ってあげなければなりませんね。

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本田和盛

200社を超える企業で、人事・労務・採用に関するコンサルティングを行う。あした葉経営労務研究所代表。特定社会保険労務士、MBA(経営学修士)、キャリアコンサルタント。

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