都市部を中心に感染が拡大! 若い女性の間に急増する「梅毒」の実態

ヘルス・ビューティー

清水なほみ

 

梅毒は梅毒トレポネーマという細菌に感染することによりおこる全身性疾患です。感染すると2〜3週間後からリンパ節炎や皮膚症状が出ます。ペニシリンなどの抗生物質が有効ですが、治療しないと症状は段階的に進行して、最終的には中枢神経まで侵されます。しかし、症状が出ない「無症候性梅毒」の状態で、永年にわたり気がつかないまま過ごすケースもあり、症状がないからといって安心はできません。

 

梅毒トレポネーマに感染すると、約1週間から13週間の潜伏期間を経て発症します。現在では、比較的早期から治療を開始する例が多く抗生物質が有効であることなどから、第3期、第4期に進行することはほとんどありません。

 

第1期:感染後、3週間から3か月の状態。トレポネーマが侵入した部位(陰部、口唇部、口腔内)に、しこりができます。しこりはすぐ消えますが、まれに潰瘍となることがあります。また、股の付け根の部分(鼠径部)のリンパ節が腫れることがあります。

 

第2期:感染後、3か月から3年の状態。全身のリンパ節が腫れる他に、発熱、倦怠感、関節痛などの症状がでる場合があります。「バラしん」と呼ばれる特徴的な全身性発しんが現れることがあり、赤い目立つ発しんが手足の裏から全身に広がり、顔面にも現れます。治療しなくても約1か月程度で消失しますが、抗生物質で治療しない限りトレポネーマは体内に残っています。

 

第3期:感染後3年から10年の状態。皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生しますが、現在ではこのような症例をみることは稀です。

 

第4期:感染後10年以降の状態。多くの臓器に腫瘍が発生したり、脳、脊髄、神経を侵され麻痺性痴呆、脊髄瘻を起こし、死亡に至ることがありますが現在では稀です。

 

一昔前は、性感染症といえば梅毒というほどメジャーな感染症でしたが、抗生物質がよく効くためいったんなりを潜めていました。ところが、最近都市部の若い女性を中心に梅毒感染者が増えているのです。5年前と比較すると、全体の感染者数は約6倍、女性だけで見ると約15倍にも増えています。国立感染症研究所によりますと、今年は今月3日までで患者の数が883人にのぼり、1999年以降で過去最多となった去年の同じ時期で比べ倍増したということです。都道府県別では東京が389人と最も多く、次いで大阪が112人などとなっています。

 

一度減ってきていた病気が、なぜまた増えてきているのでしょうか?性感染症が広がる原因はただ一つです。感染に気付かないまま、無防備なセックスをするからです。20代~40代の若い人に増えているということは、過去に感染した梅毒が今になって現れたということではなく、新たな感染が広がっていっているということになります。性行為によって感染するものですから、性的活動が活発な世代に感染は広がります。また、若い世代を中心にコンドームの使用率は低下してきています。症状がいったん消える時期があるため、梅毒だとは気づかずに人にうつしてしまい、感染を拡大させていっている可能性があります。

 

梅毒を予防するためには、下記のポイントを押さえておく必要があります。

 

・症状がなくても定期的に性感染症の検査を受ける

・初めから最後まで正しくコンドームを使用する

・複数の相手との性行為を控える

・妊娠したら必ず妊婦健診を受ける(妊婦健診の中に梅毒検査が含まれます)

・気になる症状があれば直ちに医療機関を受診する

 

「自分だけは大丈夫」などとは思わずに、性行為の機会がある人は性感染症検査も定期検査として受けることをお勧めします。

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清水なほみ

女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。女性医療の先駆者の下、最先端の性差医療を学び、「全ての女性...

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