教師はどうしてブラックなのか? 学校現場を過酷にする給特法とは

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「小学校で3割、中学校で6割」――これは過労死ラインを超えて働いている学校の教職員の割合だ。現代社会では、学校ひいてはそこで働く人間に求められる役割がどんどん多様化してきている。それに伴って彼等の業務も複雑化の一途をたどっている一方、定員数は従来のままだ。結果として、学校現場は超ブラックと言ってもいい状況に陥っている。

 

そんな現場を改善するための方法について、教育社会学者と教育哲学者が対談を行っているのがである。

 

教員はいろいろな意味で特殊な職業だ。他の仕事と違い、教員の職務が目的としているのは子どもたちの人格形成である。これにより、教員の仕事は他よりも極めて複雑で困難かつ高度な問題を扱うものになる。そのため教員には専門的な知識と技術のほか、哲学的理念や責任感といった高い精神性までもが求められるのが実情だ。このことから、教員には常に崇高な仕事であるというイメージが付きまとう。ひと昔前まで教員は「聖職者である」と言われていたのもこのためだ。子どもと関わる仕事であるため、仕方ない面はあるにせよそれが現場への精神的プレッシャーになっているのも事実である。

 

これは教員が周囲の期待に応えようとして無理をするといった意味ではない。周囲が肥大化されたイメージの実現を教員に求めてしまうという意味である。それにより、教員は常に自分の能力を超えた職務を求められ続けることになる。こういった教員への過度な期待といってもいい心理が、彼らの首を絞める一因になっているのだ。

 

さらに学校現場の実態のひとつに、教員の実質的な残業代がゼロであることが挙げられる。これは特に公立学校の場合に顕著だ。なぜそのようなことになっているのかというと、そこには法律の壁が存在している。一般企業の場合、残業代不払いは違法だが、公立校の教員の場合は合法なのだ。そもそも教員の給与は給特法と呼ばれる法律によって決められている。給特法は正式名称を「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」という。この法律によって、教員は月給の4%に相当する額をもらう代わりに、時間外勤務手当や休日勤務手当をもらうことができなくなるのだ。なぜこのような法律ができたかというと、先述したとおり教員の業務には特殊性があるためだ。

 

ちなみに、この法律が制定されたのは1971年であり、教員の仕事量は当時と比べて10倍以上になっていると言われている。1966年時点では、当時の教員の残業は週で2時間弱だった。この頃の環境であれば、給特法もある程度合理的な法律として機能していたことだろう。しかし、2016年度の教員の残業は週で20時間近くにも及んでいる。最多では50時間以上の場合もあるというから驚きだ。現代において、給特法は教師に対する定額働かせ放題プランにしかなっていないのが実情である。

 

なまじ教員自体が「子どものため」という名目の下に高い精神性を要求される仕事でもあるため、現場にも声を上げづらい空気が蔓延している。これを改善するためには、学校現場にも民間企業のような時間管理の概念を成立させることが必要だ。現在の学校現場は、残業代を気にしなくていいが故にコスト意識が欠如している面がある。その改善のため、タイムカードの導入などが待たれる。

 

給特法が作り出す時間管理を必要としない環境は、こういった高潔な精神と自己犠牲を求める心理と非常にマッチしている。教員は責任感を持ち、子どもたちへの教育に献身的でなければいけないと思っている人は意外と多いのではないだろうか。教職員の過剰な残業がなかなか改善されないのも「子どもたちのためならがんばれるだろう」という空気がどこかにあるからだ。だがやがて大人になっていく子どもたちへの教育が、その大人の自己犠牲で成り立っている現状は何とも皮肉めいているとしか言いようがない。子どもたちのためというならば、その子どもに直接接する大人たちの環境を整えることも重要だ。劣悪な環境の中で質の高い教育はそうそうできないのである。

 

文=柚兎

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