メール自動転送から訪問型まで! “いざ”に備えて知っておきたい「高齢者向け見守りサービス」の現状

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つい先日、祖母の家で“ブザーのようなもの”を見つけました。「防犯ブザー?」と母に聞くと、「緊急通報ボタン」という答えが返ってきました。年をとると、思わぬ転倒や体調の急変などがいつ起きてもおかしくありません。緊急事態が発生したとき、ボタンを押せば、急を知らせることができる「緊急通報サービス」を多くの自治体が導入しているのだそう。祖母が持っていたのも、市の福祉サービスの一環で貸与されたものでした。

 

 

■「高齢者向け見守りサービス」の市場規模は142億円

 

こうした高齢者向け見守りサービスを、ニュースなどで見かけるケースが増えています。つい先日は、外食大手のワタミが、家庭用電力小売事業への参入にともない、高齢者見守りサービス付きの電力プランをスタートすることを発表しました。

 

 

【離れた家族にも安心!電力使用を知らせるメールサービスを提供】

 

ワタミグループは宅食事業を展開しており、1 日に約 22 万人のお客様に日替わりのお弁当をお届けしています。「ワタミの宅食」をご利用頂いている方を対象※1に、電力購入のセットメニューとして、電力供給先のご家庭で電気が使用されたことをメールでお知らせするサービス「おはようメール」を導入します。「おはようメール」は、1 日 1 回、正午までに電気の使用状況を、登録したメールアドレスに自動送信するサービスです。離れて住むご家族に対し、メールで電力使用をお知らせすることもでき、一人暮らしの高齢者や高齢者世帯の見守りにもご活用いただけます

 

※1 「ワタミの宅食」が提供している入会費・年会費無料の会員制サービスである「友の会」会員様を対象。

(プレスリリースより)

 

市場調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニングの調査によると、2014年の高齢者見守り・緊急通報サービスの市場規模は142億円。大手参入事業者は実績を維持拡大しており、新規参入や新サービス投入で実績を上げた事例も増えているとか。

 

さらに、団塊世代が75歳以上の「後期高齢者」となる2025年頃には、緊急通報、見守りなどの支援サービスを必要とする人口が増加し、同サービスの市場規模は227億円に拡大すると予測されています。

 

 

■「高齢者見守りサービス」が始まったのは1980年代

 

調べてみると、高齢者見守りサービスの歴史は意外と古く、1980年代には緊急通報サービスの原型となる “ 非常ベル”が登場します。当時、一人暮らしの老人が急病やケガで命を落とし、死後数週間から数ヶ月発見されないという悲劇が頻発したのがきっかけでした(「データバンク 緊急通報サービス」国民生活センター1998年発行)。

 

しかし、非常ベルの場合、周囲に鳴り響く音や隣人を煩わせることへの気兼ねから利用をためらう老人が多く、普及しなかったのが実情。その後、電話機に通報機能を付加し、近隣や親戚に自動通報される仕組みが採用。ところが、緊急時に電話口までたどりつけなかったり、通報先が留守でつながらないといった問題が生じ、ペンダント型の無線機とアンテナ付受信機、特殊電話機などを用いて、24時間体制の受信センターに通報する方式にシフトしていきます。

 

自治体による緊急通報サービスは、1988年から本格化し、2003年の時点で9割以上の自治体が行っていると言われています(国民生活センター「高齢者の安否見守りサービス(要約)」(2003年6月6日)。ただ、「65歳以上で一人暮らし」など利用条件が設けられているところが多いのが実情です。一方、民間の緊急通報サービスも多数登場。健康相談やGPSを利用した駆けつけ対応など、付加サービスも充実しています。

 

さらに、1996年に電気ポットを利用した「安否見守りサービス」が試験的にスタート。高齢者介護のために情報システムを積極的に活用していた医師が、家電メーカーなどに地域ボランティアによる高齢者見守りの相談を持ちかけ、その話し合いの中で生まれたアイディアだという。

 

 

■「緊急通報」と「安否見守り」の違い

 

「緊急通報」では、高齢者に “ 異常”が起きたときに、何らかの方法で、しかるべき期間や人物に事態を通報します。あくまでも、高齢者自身が異常を察知し、急を知らせるのが大前提。一方、「安否見守り」は、高齢者の手をわずらわせず、その様子を離れて暮らす家族などに、自動的に知らせるというサービスです。

 

例えば、電気ポットや携帯電話、ガス、水道などの使用状況が、子どもの携帯電話やパソコンに定期的にメールで届きます。「普段どおりかどうか」を確認することで、異変の予兆を早めに察知できるという考え方です。

 

 

■定期的な電話や訪問による見守りサービスも登場

 

機器ではなく、「人」による見守りサービスも登場しています。訓練を受けた専門家(コミュニケーター)が定期的に電話をかけ、体調や近況を把握。先駆けとして知られる「つながりプラス」では、初回は専属コミュニケーターが自宅を訪れ、時間をかけてじっくりヒアリング。顔見知りになった上で、電話をかけるというユニークなスタイルを実施しています。

 

また、郵便局でも「みまもりサービス」を実施しています。月に1回、スタッフが自宅を訪問し、30分間おしゃべりをし、様子を確認。希望があれば、確認結果をあらかじめ指定した先に報告するというサービスです。

 

離れて暮らす親をさりげなく見守るサービスを知ることは、いずれやってくる自分自身の “ いざというとき”の備えにもつながります。また、実際にサービスを利用するかどうかはさておき、「お互いが安心して暮らすために必要なこと」を家族でざっくばらんに話し合う、格好のきっかけにもなりそうです。

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老年学研究者

島影真奈美

「定年後の備えラボ」主宰/編集&ライター 年金から保険、住まい、健康など“定年後”にまつわる不安や悩みを幅広く蒐集。快適なシニア生活と世代間コミュニケーションにまつわる研究・考察を行う。『定...

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