ドラッグ、野球賭博、違法カジノ…アスリートの“アタマ”は普通じゃないのか?

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ドラッグ、野球賭博、違法カジノ――2016年前半を賑わせたアスリートたちの不祥事です。立て続けにこのようなことが起きたものですから「アスリートたちはこういったものにハマりやすいのか」という疑問が自然にわくことでしょう。結論から言いますと、脳神経外科医の私の見解は「No」です。アスリートだから違法なものにハマりやすいわけではなく、私たち一般人もハマることもあります。それでは、ハマりやすい人とハマりにくい人には、脳にどんな違いがあるのか解説しましょう。

 

 

■“チャレンジ精神が旺盛”な人ほどスリルを求める

 

私たちの性格や気質について、生まれながらに持っているもの(先天的)なのか、それとも成長するにつれて獲得したもの(後天的)なのかを独自の研究方法で確立したのがアメリカの精神科医であるロバート・クロニンジャー氏です。

 

ロバート氏は、1996年にネズミの行動パターンの研究から「気質と性格の7次元モデル」を提唱し、遺伝的な影響を強く受ける4つの因子と環境的な影響を受ける3つの因子に私たちの個人性を分類しました。この理論では、自分でも無意識に周りの環境に反応してしまうことを「気質」、意識的に自分の行動をコントロールしようとすることを「性格」と呼びます。

 

この理論は賛否両論あるのですが、最近、興味深い事実がわかってきました。気質は「新奇性探究」「損害回避」「報酬依存」「固執」の4つに分類されるのですが、新奇性探究にはドーパミンとの関連性が報告されてきました。

 

新奇性探求とは、簡単に言うと“チャレンジ精神が旺盛”のようなことで、新しいモノや冒険を求める気質です。この基質が強すぎると、ジェットコースターでスリルを好むということを通り越して、まるでムササビのようにウイングスーツを着て断崖絶壁を滑降することを求めやすくなります。

 

 

■アスリートは一般の人に比べてドーパミンが出る機会が多い

 

そして、合法的な楽しみであればいいのですが、ついには非合法なもの、法律で禁止されているドラッグや違法ギャンブルにまで手を伸ばしたくなる欲求に襲われることも。不倫や叶わぬ恋に陥りやすい人も新奇性探求が強いのかもしれません。

 

この新奇性探求に密接に関連しているのがドーパミンで、この物質が脳内に大量に放出されると“気持ちのいい体験”として私たちは認識します。この脳内システムは「報酬系」とよばれ、本来は私たちが生存に必要なことを学習したときに対してのご褒美として存在しています。

 

なぞなぞやクイズが解けたとき「できた!」という感覚、あれがドーパミンが放出された感覚です。また、ひいきのスポーツチームが得点を決めたとき「よっしゃー!」、パチンコや競馬が当たったときの「やったー!」、恋愛における「ドキドキ」もドーパミンの仕業です。

 

アスリートは一般の人に比べて勝負の世界と密接な関係があり、ドーパミンが出る機会が多いといえます。気質としてドーパミンを欲しやすい新奇性探求傾向が強い人がアスリートになるのか、アスリートを目指したから新奇性探求が強くなったのかはわかりませんが、新奇性探求の強い弱いは遺伝的差異があるようです。

 

 

■「実力」と「人格」がアスリート人生の両輪

 

新奇性探求は、勝負の世界に生きる人達にとっては重要な気質のひとつですが、行き過ぎると違法ドラッグやギャンブルにハマってしまう危険性があります。

 

しかし多くのプロアスリートは、競技成績だけではなく人格的にも優れ、人々に尊敬されることが多いのは周知の事実です。つまりアスリートとしての成功は、ドーパミンなどで説明される遺伝的気質だけではなく、周りの家族や指導者、そして社会が正しく導くことによって、“人として成長させる”ことが重要なのでしょう。

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脳神経外科医

菅原 道仁

All About「家庭の医学」ガイド。現役脳神経外科医。脳血管障害を中心に、救急医療からリハビリテーション、予防医療までの現場経験を元に、くも膜下出血・脳梗塞・認知症などに代表される脳・神経の病気について、...

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