大塚家具はニトリを抜き去り、業界のリーディングカンパニーになれるのか?

ビジネス

安部徹也

 

 

■“第二の大塚家具”誕生! 父娘の争いが再燃か?

 

4月22日、大塚家具の創業者で前会長の大塚勝久氏が新たな家具販売店をオープンさせました。

 

その名も『匠大塚』。

 

東京日本橋にオープンした一号店では、世界の熟練した家具職人が手作りで製作した高級家具が所狭しと並び、価格帯はその多くが100万円以上とかつての大塚家具のショールームを彷彿とさせます。

 

この一号店では、ホテルなどの内装業者をターゲットとして事業を展開していきますが、今夏には一般消費者向けの大規模店を大塚家具の創業の地である埼玉県春日部市にオープンする予定も明らかになりました。

 

娘と経営権を巡って骨肉の争いを繰り広げ、プロキシファイトで敗れた結果、大塚家具を追い出された父・勝久氏ですが、新たな『匠大塚』では、かつてのように高級家具を丁寧な接客で販売し、自らが理想とする家具販売店を目指して、古巣の大塚家具と争っていくことになります。

 

 

■大塚家具は騒動後、どうなったか?

 

一方、経営権を巡る騒動後、株主の支持を得て、反対派を一掃した久美子社長は、明確なビジョンを掲げ“新生大塚家具”をスタートさせます。これまでの徹底した接客で高級家具を販売するビジネスモデルから、気軽に入りやすい中価格帯の家具を販売するスタイルに転換を図ったのです。

 

そして、経営権争いが終息した昨年の4月には矢継ぎ早に“お詫びセール”と銘打って、大幅な値引きセールを実施。親子間の経営権争いを多くのメディアがこぞって報道した影響で、このセールの注目度も高まり、久美子社長が先着100名にガーベラの花を直接手渡した新宿店では初日だけで1万257人が来店するなどかつてない賑わいを見せ、期待を大きく上回る結果となりました。

 

“怪我の功名”で、これまで大塚家具を知らなかった顧客も、連日報道される父娘の経営権争いを契機に大塚家具の存在を知ることとなり、図らずも知名度がアップして、売り上げ増につながっていったのです。

 

月次の売り上げを見ても、経営権争いが激化した2015年3月は前年同月比62.2%と月商が前年に比べて38%も落ち込むという危機的な状況に陥りましたが、娘の勝利で新生大塚家具が新たな船出を迎えると、5月には感謝セールが大盛況に終わったことから前年同月比170%という驚異的な売り上げを記録。

 

終わってみれば、2015年12月期は売上高が前期比4.5%増の580億円、経常利益は前期が2億4千万円の赤字に対して6億3千万円の黒字に転換するなど、2015年の前半は経営のゴタゴタが続きましたが、4月以降久美子社長の下で順調な回復を遂げた1年だったといえるでしょう。

 

ただ、新生大塚家具の将来は順風満帆かというと、そうでもないようです。

 

2016年に入って、マスメディアの注目度も低くなると、売り上げも低空飛行を続けます。

 

1月は前年同月比89.3%、2月は96.3%、3月は前年62.2%と2015年は大きく落ち込んでいたにもかかわらず、その売り上げを超えることはできずに前年比88.2%に終わってしまいます。つまり、2年前に比べれば45%もの売上減に見舞われたことになるのです。

 

4月は前年同期比102.1%と、前年の18%ほど落ち込んだ売り上げ水準は超えることができましたが、このままでいけば、昨年の5月以降は驚異的な売り上げを記録した月も多いだけに、2016年は大幅な減収減益も現実味を帯びてくるといえそうです。

 

 

 

■果たして、大塚家具は業界のリーディングカンパニーになれるのか?

 

新生大塚家具は、勝久元会長の高級家具路線から決別し、『長く使える耐久消費財としての家具をリーズナブルな価格で、最適なソリューション提案とともに提供し、個人のみならず企業も含めた幅広い消費者ニーズに満足度高く対応することで、家具・インテリア業界におけるリーディングカンパニーを目指す』という新たな経営方針を掲げています。

 

つまり、よりマーケット規模の大きい中価格帯の家具に軸足を移して、新たな顧客をどんどん獲得して、マーケットシェアトップを狙うというビジョンを描いているのです。

 

家具・インテリア業界のリーディングカンパニーといえば、圧倒的なシェアを誇るニトリです。

 

新生大塚家具は、果たして家具・インテリア業界の“ガリバー”ともいえるニトリを本当に抜き去って、リーディングカンパニーになれるのでしょうか?

 

最後に、両社の財務諸表を比較しながら、その可能性を探っていくことにしましょう。

 

まずは売上高で見ていくと、直近の決算では大塚家具の580億円に対してニトリは4581億円と8倍近い差が開いています。これはひとえに店舗数の差といえるでしょう。大塚家具は全国に16店舗しかありませんが、ニトリは383店舗を展開しています。一店舗当たりの売上を単純計算すれば、大塚家具の36億円に対してニトリの12億円と大塚家具に軍配が上がりますが、店舗数には15倍近い開きがあり、これが売上の差となって表れてきているのです。

 

 

また、大塚家具は直近5年間の売上高はほとんど成長していません。一方でニトリは毎年5%から11%の間で堅調な成長を達成しています。この売上高の成長の背景にもやはり新たな出店のない大塚家具に対して、毎年30店舗前後を新規出店しているニトリという構図が大きく関係してきているのではないでしょうか。

 

 

続いて、本業の儲けを示す営業利益面から両社を比較してみましょう。

 

直近の決算では、大塚家具の営業利益が4億円に留まっているのに対して、ニトリは730億円という非常に高い営業利益をたたき出しています。

 

 

注目すべきはその利益率で、直近5年間の大塚家具の売上高営業利益率が最高でも2.2%なのに対して、ニトリは17%前後と驚異的な利益率を実現しています。

 

 

この背景には両社のビジネスモデルの違いがあります。

 

大塚家具はメーカーから家具を仕入れて販売するという流通業としては一般的な仕組みでビジネスを展開しています。このような場合、メーカーと消費者の仲介という意味で付加価値は低く、高い利益率を実現することは難しくなります。一方でニトリは自社で企画・デザインから生産、販売まで、すべてのプロセスを自社のみで完結させるSPA(製造小売業)というビジネスモデルを採用しています。

 

このSPAは、アパレルでいえばユニクロを展開するファーストリテイリングも取り入れていて、成功すれば非常に利益率が高くなるビジネスモデルといえます。ニトリはこのようなSPAというビジネスモデルで高い利益率を実現し、大塚家具の年間売上をも大きく上回る営業利益を出し続けているのです。

 

このように財務諸表を比較してみると、大塚家具が家具・インテリア業界でニトリを抜き去り、リーディングカンパニーとなることは、果てしなく難しいと結論付けることができるかもしれません。店舗数で15倍、売上で8倍の差が開いており、営業利益が自社の売上を大きく超える企業を抜き去ることは常識的に考えても、不可能といっても過言ではないでしょう。

 

ライバル企業が年々拡大を続ける中で追い抜くためには、それを上回るペースで成長を続けなければいけません。仮に大塚家具がニトリを抜き去るためには、短期間で400店舗程度の出店とSPAといった商品の安定供給を図るためのビジネスモデルを確立させなければならないといえるでしょう。

 

ただ、可能性としては決してゼロではありません。

 

たとえば、アップルがじり貧の状態から並み居るライバル企業を抜き去り世界一の企業に上り詰めたように、製品やビジネスモデルのイノベーションに成功すれば、奇跡を起こすこともできるというわけです。常識的に戦略のセオリーを駆使して正面から戦っても勝ち目がないことは、久美子社長も十分に理解しているはずです。そのうえで、どのような革新的な戦略を考えているのか?

 

新生大塚家具の次の一手に注目したいと思います。

この記事が気に入ったらいいね!しよう

citrusの人気記事をお届けします

SNSで記事をシェア

安部徹也

オールアバウト『マーケティング戦略を学ぶ』ガイドです。

安部徹也のプロフィール&記事一覧
ページトップ