仕事中・テレビ中につい出ちゃう「ひとり言」は、脳にどんな影響を与えるの?

みなさんはうっかり、ひとり言を言ってしまっていることはありませんか? 家でテレビを観ていて、タレントさんにツッコミを入れていたのを家族に聞かれたり、職場でついつい発してしまったひとり言を同僚に聞かれたりして、恥ずかしい思いをしたことはけっこうあるのではないでしょうか。
私は、ひとり言を「自分に役に立つひとり言」と「病気が疑われるひとり言」の2つに分けて考えています。
ひとり言は、自分の気持ちを再確認するために発し、気持ちを鼓舞したり、気落ちを落ち着かせたりする効果があります。
例えば運動をしているときに、「もっとできる!」と自己暗示をかけたり、「うおおおお!」と大声を出したりすると、身体能力が上がることがわかっています。
このようなひとり言は、気持ちを鼓舞するために用いられるので、運動中だけではなく、仕事において何か困難にぶつかったときにも効果があります。「簡単に諦めない!」「俺ならできる!」と、ひとり言で自己暗示をかけると、苦しい状況を打開できる可能性が高くなることでしょう。
一方で、「また、間違っちゃったよ……」「なんで俺が怒られるんだ……」というように、ネガティブな気持ちがつい、ひとり言として出てしまうこともあるでしょう。
これは、自分の受けたショックを和らげるために、あえて口に出して気持ちを落ち着かせる行動なので心配ありません。自分のほかに“もう一人の自分”を作り、その自分と対話することにより、精神的に落ち着かせる効果が期待できます。
しかし、このようなひとり言が多くなったということは、そもそも心に大きなストレスがかかっていることが多いので、ゆっくり休んだり、何か違った作業をしたりして、自分の気持ちをリセットさせましょう。
ただ、病気が疑われるひとり言には要注意です。
ブツブツうるさいだけなら、その人の心が安定するための必要な行動なのかもしれませんが、その内容が、「誰かが私を操作している」とか、「自分は命を狙われている」といった、その場の状況とはあまりにもかけ離れている妄想のようなひとり言は、精神疾患が潜んでいる可能性も考えられます。
ひとり言は、忙しくてストレスフルな現代社会において、心の安定を保つために有用なものと考えます。ただ周りのことを考えると、ひとり言は一人のときに発したほうがよさそうですね。
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脳神経外科医
菅原 道仁
All About「家庭の医学」ガイド。現役脳神経外科医。脳血管障害を中心に、救急医療からリハビリテーション、予防医療までの現場経験を元に、くも膜下出血・脳梗塞・認知症などに代表される脳・神経の病気について、...
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