海外誌の釣り目ジェスチャーは日本人差別? 南米の“あだ名”文化を知れば納得するかもしれない

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世界的に流通する女性誌“Glamour”が最近世の中を騒がせているようですね。同誌の日本版誕生に際し、ブラジル版スタッフが両手で目を吊り上げたしぐさの写真をSNSに投稿したところ、「日本人への差別だ!」との大炎上劇に発展した様子()。激しい糾弾に晒された同誌ブラジル版は、数日後に当該の投稿を削除し、「差別する意図はなかった」との謝罪文を掲載したそうです。

 

 

■世界で浸透している釣り目ジェスチャー

 

ただGlamour誌に限らずとも、イタリアの雑誌で着物もどきを着用したモデルが釣り目ポーズで映っているのを見たことがありますし、私の以前の勤務先であった欧州系エアラインでも、同ポーズを大きくフィーチャーしたアジア就航路線の広告素材を使用していた時期がありました。当時はさほど問題視されなかったこの事例も、SNSの発達した現在であれば猛批判の的となったり、コーポレートイメージを大きく損なう結果に陥っていた可能性は否定できません。

 

しかし、“身体的特徴を揶揄している”として、この釣り目ポーズに嫌悪感を抱く人がいる一方、「特に気にならない」と発言している人も一定数いる模様。例えば私の友人の中には、「大音響の轟くブラジルのサンバ会場では、日本人の連れを探す際にこのジェスチャーがすこぶる便利だった」と話す強者もいましたし、他には「日本にだって大きな付け鼻と金髪ウィッグで白人に扮したテレビCMやドラマがあったので大差ない」等の意見も聞かれました。

 

 

■ブラジル版スタッフに悪気はなかったのか?

 

悪気がなければ許されるというものではありませんが、今回事を起こしたスタッフには、果たして明確な差別意識があったのでしょうか。というのも、私には南米のチリ共和国に留学経験があるのですが、現地到着直後のオリエンテーションで以下のようなアドバイスを受けたことがあったからです。

 

「この国では外見的特徴がそのままあだ名になる。太っていたら“デブ”、痩せていたら“痩せっぽち”、目が細いと“中国人”という具合だが、みんな悪意はないから気にしないように。」

 

最初こそよく理解できなかったものの、間もなく至る所で釣り目ポーズの波に晒され、少し田舎に行こうものならワンブロック毎に「!Hola, chinita!(こんにちは、中国のお嬢さん)」と口々に挨拶されるので、その意味を体感するところとなりました。

 

当初はアジア人差別かと落ち込んだりもしましたが、金髪の欧米系白人は漏れなく“gringo, gringa“(アメ公といった意味合いで、元は蔑称)、釣り目でダークヘアの白人女性にはなぜか“ベトナム人”、目が緑だと“ネコ”、その他にも“チビ”、“ハゲ”、“クロ〇ボ”といった侮蔑まがいのダイレクトなあだ名が氾濫しているのを見るにつけ、そんな原始的な文化なのかと徐々に気にならなくなったものです。そして極め付けには、当時通っていた現地校にはカロリーナとアンドレアという名前の同級生が各々2名在籍していたのですが、いずれも一方が人も羨むような美女。かくして彼女たちのニックネームは、「美人のカロリーナ」、「美人のアンドレア」、「美人でないアンドレア」、「美人でないカロリーナ」。思春期真っ盛りの後者2名にとってはさぞや屈辱的なネーミングだろうと思いきや、二人とも事実を受け入れているのか、淡々と対応していたのが衝撃的でした。

 

すべてがこんな具合でしたので、最後の方は私自身も馬面の友人男性を「ウマ」、ゴリラっぽい同級生(しかも女性)を「サル」と面と向かって呼ぶに至ったほど。今から思い返すと随分酷いあだ名をつけたものですが、チリ人は外見上の特徴をあだ名にされたところで激しないどころか、かえっておもしろがったり、親近感を持ってくれたのを覚えています。

 

ということで少々強引に結論付けるならば、同じ南米大陸にあるブラジルに似通った文化面があったとしても全く荒唐無稽な話ではないはず。つまり、チリのように個人の身体的特徴を描写するのが普遍的行為であったのだとすれば、恐らく今回のSNS投稿もそんなドメスティック感覚の延長でなされたことであり、外部からコテンパンに叩かれて初めて気が付いた…といったところが真相なのでは?

 

日本国内では、チリのように強烈なカルチャーがあることはほとんど知られていないでしょうから、こちら側も「世界の裏側にはそのような文化圏が存在するのだ」と理解すれば少しは留飲が下がることでしょう。そしてこれからの対応策として、今回のような行為を不快に感じる人々が存在するというメッセージを相手に激せずしっかり伝えることができれば、今後の国際交流の良い手本となるのではないでしょうか。

 

ただし残念なことに、中には低俗な悪意とともに釣り目ジェスチャーをけしかけてくる輩が無きにしも非ず。そのような面々に対しては、手で目を上下に押し広げて「Goggle-eyes(ギョロ目)」と言い返してみたり、天狗の真似をして相手の高い鼻をにこやかに指摘してみると、あちらも己が行為の理不尽さや、被差別者の痛みを多少は理解してくれるかも知れません。相手の挑発が気にならない性格であれば問題ないのですが、こちら側だけ鬱屈した思いを抱え込んで、ストレスになってしまっては良くありませんものね(笑)

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ライジンガー 真樹

All About「オーストリア」ガイド、ダイアモンド社 地球の歩き方「ウィーン特派員」。 ウィーン移住をきっかけに、オーストリアの歴史・文化・グルメなどの魅力を日本の人々にも伝えたいと願い、CA乗務の傍ら旅行...

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