同情自殺!?――中学生女子がハマる親密すぎる友情の罠

■「死ぬしかない」――親密すぎる関係が生む極端な発想
先日、都内に住む中学2年生の女子生徒2名が手をつないで電車に飛び込み、亡くなりました。その後の報道によると、亡くなった女子生徒らは趣味や部活が同じ最も仲の良いクラスメートであり、遺書から人間関係に悩んでいたことが明らかになっています。一部の報道では、今回の事件を「同情自殺」として報じています。
「同情自殺」とは、一方の悩みに深く同情しているうちにお互いに「死ぬしかない」という思いが高まり、自殺してしまうことです。親から精神的に自立し始める思春期の頃には、同性同年齢の非常に仲の良い「親友」を心のよりどころにし、その親密な関係を足がかりにして、社会の中で生きていける自分への自信をつかんでいきます。
■思春期のど真ん中――中2生が「親友」をよりどころにするわけ
なかでも、中学2年生のころは、この同性同年齢の親友との付き合いを最もかけがえのないものと感じやすい時期です。
この年頃の子どもたちは、親友との間で趣味や恋愛の話、秘密の話などを話しながら、お互いの心の垣根を取り払い、どんなことでも共有しようとします。こうした時間はとても楽しく、お互いの話を交換し合うごとに心の距離は近づいていき、まるで親友が自分の姿を映し返す「鏡」のような存在になったかのような親近感を覚えるのです。
このようにして、この年頃の子どもたちは親友のなかに自分の姿を映し出し、その親友に自分を認めてもらうことによって、自己を肯定して生きていけるようになります。
■仲が良すぎて周りが見えなくなることのリスク
しかし、こうした親密すぎる友情は、さまざまな危機と隣り合わせの関係にあります。その大きなものが、同調しすぎることによって、自分たちの状況を客観的に見られなくなってしまうことです。親友との関係が親密さを増していくと、その関係の中で語られる「真実」がたとえ世間の常識からかけ離れていたとしても、それに気づく第三の視点をもてなくなってしまうのです。
そのため、悩みを共有した2人の間で「死ぬしかない」という発想が深まっていったとき、その発想にブレーキをかける冷静な判断が働きにくくなってしまいます。しかも、思春期は、発想のバリエーションも行動のレパートリーも、まだ非常に少ない年代です。したがって、同調的な親友関係の中で一つの極端な発想がエスカレートしてしまうと、それを制御するアイディアを生み出せないまま、極端な発想を行動に移してしまう危険があるのです。
今回の事件にも、そうした思春期特有のこころの特徴が関係している可能性が考えられます。したがって、思春期の子どもたちにかかわる大人は、この年代の「仲良しすぎる友情」が抱えるリスクについても想定し、友情の中で極端な発想が生まれていないか、極端な会話が交わされていないか、日頃からよく様子を見ておく必要があると思われます。
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メンタルケア・コンサルタント
大美賀直子
メンタルケア・コンサルタント。精神保健福祉士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントの資格を持ち、カウンセラー、研修講師としても活動する。現代人を悩ませるストレスに関する基礎知識と対処法を解説。スト...
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