マイナンバーカードで図書館利用? 便利さの裏に潜む情報流出のリスク

ライフスタイル

浦島茂世

 

今年から希望者に交付が始まっているマイナンバーカード。行政手続きにおいて、本人確認がスムーズに運ぶ便利で公的な証明書として活用されているとされています。けれども普及率はいまいち……。

 

そこで、総務省はマイナンバーカードを多くの人に使ってもらうため、より便利なカードにしようと考えています。その計画の一つが、全国各地にある図書館の貸出カードとしても使えるようにすること。NHKの報道によると、来年の夏には一部の図書館で、マイナンバーカードで本を貸し出す実証実験が始められるようです。

 

この計画が進んでいくと、全国各地の図書館の本をたった1枚のカードで自由に借りることができるようになります。休日は自宅近くの図書館で、平日は職場近くの図書館で本を借りる、便利な日常になりますね。

 

 

■実は、地域横断的な図書カードはこれ以外にも存在する

 

ただ、よく考えてみましょう。それって本当に革新的なことなのでしょうか?

 

図書館好きの竹内庸子さんが運営している東京近郊の図書館情報サイト「東京図書館制覇!」の「あなたがカードを作れる図書館をチェック!」で調べてみると、その土地に住んでいなくても、通学や通勤をしていれば図書館を利用できる区は非常に多いのです。さらにうれしいことに、千代田区や中央区、文京区など9つの区では、通勤や通学をしていなくても図書館カードを作成可能なことも判明。マイナンバーカードがなくても、けっこう便利になっているのです。この動きは全国各地に広がっています。

 

それなのに、落としたら様々なリスクがあるマイナンバーカードを、単に数冊の本の貸し借りのため、頻繁に外に持ち出してよいものでしょうか?

 

 

■図書館の秘密は守られるのか…?

 

マイナンバーカードが導入される前「国に監視されるのではないか」ということが話題となりましたが、今回の件でより具体的に心配になるのが、個人情報と貸出情報の紐付け。そしてその情報の流出です。

 

日本図書館協会は、1954年に「図書館の自由に関する宣言」を打ち出しました。これは、戦前に思想善導機関として図書館が機能してしまったことの反省から生まれたもの。宣言のなかには「図書館は利用者の秘密を守る」という項目もあります。図書館は、人がどのような本を読むかは、「決して外部に漏らしてはならない秘密」とし、利用者の貸出履歴も返却後は破棄するようにつとめています。けれども、今後構築されるシステムの方向性によっては、マイナンバーカードで本を借りることで貸出履歴を「だれか」が手にする可能性があることは否定できません。

 

たとえば自分や家族が、重篤な病気の治療法について図書館で本を借りていることが、知らないだれかにわかってしまったらどうなるでしょう? その「だれか」は、サプリメントの会社かもしれませんし、高額な自己啓発セミナーの団体かもしれないし、本を借りた本人が就職志望する会社かもしれません。「だれか」は貸出履歴を自由な形で存分に活用していくでしょう。

 

だれがなにを読んでいるか、すなわちそれは「どのような思想や思考をもち、なににお金を落としやすいか」というデータです。情報が一つにまとまるということは、便利になることとともに、危険なことも起こりうる。マイナンバーカードに図書館カードの機能を持たせるということは、利用者のわずかの便利のために、不安な未来がもたらされるという懸念が巻き起こっているのです。

 

予算の出処は全く異なるので総務省に文句を言っても仕方ないですが、全国の図書館には非正規職員の増加問題や、書籍購入費の減少などの問題が山積みです。総務省は図書館を盛り上げたいのなら、もっと別の形で図書館を応援したほうがよいですし、マイナンバーカードを普及させたいのなら、別のなにかを考えたほうがよいのではないでしょうか? 

 

というか、そもそもマイナンバーカードって必要なんですかね?

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浦島茂世

AllAbout 美術館ガイド 美術を中心に、さまざまなイベントなどを紹介するフリーライターです。

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